関東学院大学から、今、まさに飛び立とうとしている皆さんを祝福するかのように、素晴らしい天候に恵まれました。本日、ここにおられる関東学院大学の卒業生2,151名、大学院博士前期課程修了生39名、博士後期課程修了生7名、そして専門職大学院修了生2名、合計2,199名の皆さん。皆さんは、本学が定めた所定の単位を修めて、卒業、或いは修了に必要な試験に合格し、それぞれの専門分野における、学士、修士、博士、或いは専門職博士の学位を名乗る資格があると、ここに認められました。関東学院大学での学びを通して大きく成長され、この日を迎えられた皆さんに心よりお祝いの言葉を贈りたいと思います。

 卒業、修了、ならびに学位取得、本当におめでとう。

 ご臨席くださいましたご父母の皆様、ご関係の皆様。この度はご子息様、ご令嬢様の卒業、修了、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これまで、お子様方を見守り、あるときは励まし、またあるときは背中を押して、物心両面にわたって支えて来られましたことに、心から敬意を表しますとともに、私ども関東学院大学の教育理念にご賛同くださり、多大なるご協力、ご支援を賜りましたこと、あらためて感謝いたします。関東学院大学を代表いたしまして、ここに御礼申し上げます。長い間、本当にありがとうございました。

 さて、卒業生の皆さん。卒業の日が近づき、皆さんも一度は、学生生活を振り返られたことと思います。例えば長かった、或いは短かったという時間感覚は、大学生活のなかで皆さんが力を注いだこと、大学生活で得られたと感じるもの、そして皆さんがそれをどう受け止めていたかによっても、感じ方もまた、異なるのかもしれません。

 皆さんにお聞きします。関東学院での学生生活は充実していましたか?「充実していた」と即答できる人に理由を尋ねると、多くは「クラブやサークル活動」、「ボランティアや趣味の活動」、或いは「友人関係」といった答えが返ってきます。「ゼミや研究室」、「恩師や学問との出会い」といった学びを挙げる学生もいます。そのどれもが、皆さんの学生時代において、かけがえのない大切なものだと確信していますし、決して楽しい思い出ばかりでなく、苦労したこと、辛いことも含めて、間違いなく「大学」で過ごした証と言えるものです。

 では、これといった具体的で誰もが分かりやすい理由がなければ、皆さんの学生生活は充実していなかったのかと言えば、決してそうではありません。むしろ「これが充実していた」と言葉で言い表すことが難しい人は意外に多いのではないでしょうか。「ひたすらレポート課題が大変だった」、「アルバイトとの両立で精一杯だった」、「4年間、真面目に大学に通った」、「目標としていた資格が取れた」皆、素晴らしい学生生活です。人それぞれ感じ方は違っても、真剣に何かを考え、悩み、立ち止まりながらも、前に進んで、そして今、皆さんはここにいる。その実感を是非、この場で味わってほしいと思います。

 私たちもまた、皆さんと出会った4年前に、皆さんとお約束したことを守ることができたのか、思いを巡らせています。おこがましい言い方かもしれませんが、皆さんを育てる、成長させると約束しました。教育機関として教育・研究環境を充実させ、学生を支援することは勿論ですが、教員として、職員として、私達の日頃の行動を通して皆さんからの信頼を得ることができたのか。同じ学問を志し、同じ夢を追いかけ、この4年間、同じ時間と同じ空間を共有してきた皆さんと、大学人として、人生の先輩として、或いは、常に寄り添う隣人として、心を開いてお互いを認め合い、暖かい関係を築くことができたのだろうか。そして何より、我々の持つ知識や学問に対する情熱を、皆さんに伝えることができたのか。まずは、自分自身に問いかけたいと思います。

 そのうえで、大学での学びについて、少しだけ、皆さんに厳しいことを申し上げます。「もう少し学んでおけば良かったな」今、心からその言葉が出てくる皆さんは、おそらく大学における自身の「学び」を客観的に見つめることができていると思います。むしろ真剣に学ぼうとする気持ちが強かったからこそ、或いは学びの大切さに気づいているからこそ、「不足」という印象を持たれているのかもしれませんし「もっともっと学びたい」という希望を意味する表現かもしれません。

 一方、皆さんのなかに「自分は社会に出てから本領を発揮するタイプだから」とか「社会に出てからが勝負、これから挽回すればよい」そう思っている人がいるならば、今一度、考え直してください。それはあなたの特徴で、もしかしたら長所になるかもしれないが、今はそれを口に出してはいけない。「これまでのことは一旦リセットし、心機一転がんばろう」気持ちはよく分かります。でも、楽観されては困るのです。厳しい言い方かもしれませんが、もしそうであるなら、大学で学ぶ意味とは、いったい何なのでしょうか。何度でもチャンスが巡ってくるのが人生です。しかし、その機会に甘えて、今を疎かにしては、次の挽回のチャンスは巡ってこないかもしれません。

 「学ぶことを少し疎かにしたかもしれない」もし、あなたが今、そう感じているならば、そのことを悔やむ必要はありません。恥じる必要もありません。しかし、それを忘れず、いつも意識して、社会に出てからも続く「学び」を是非大切にしてほしい。そう思います。

 「大学で学んだことなど、社会では通用しない」世間でよく「成功した」と言われている人が、テレビのインタビューなどで「今の大学教育など不要。それが現実だ」と言わんばかりに、したり顔で話す姿を見ると、100歩譲って好意的に解釈すれば「教科書の上で学ぶ理屈だけではダメ。実践が重要」そうおっしゃりたいとは思いますが、私には、そのように言い放ってしまう言葉こそが、無責任な暴論に聞こえてくるのです。 大学での学びは不要でも、軽んじられるものでもありません。さらに言えば、人生のどのステージにおいても「大学での学び」の大切さに気付く瞬間が訪れます。大学は、単なる知識や技術を得るだけでなく、その根本となる思想や哲学、真理や理論を学ぶ所ですし、実践、応用に向けた方法論や、実践そのものも学びの対象です。それにもまして、何より「学ぶこと」の意義と楽しさ。敢えて「楽しさ」と申し上げましたが「学び続けること」の大切さ、そして、人として「教養を身に付けること」の大切さを知ることにこそ、大学の学びの本質があるのです。

 知識人と称する人が、「大学で学んだことなど通用しない」と臆面もなく仰る姿に、教養や知性を感じることはできません。「大学で学んだことは通用しない」のではなく、「大学で学んだ本質こそ、私たちが社会で生かすべきこと」なのです。そもそも「何のために役に立つのか」。そんな問いが立てられ、説明を受けて、「有用だと思えたなら学ぶ」という姿勢自体、答えが初めからわかっていて、学びの有用、無用を「今の自分の物差し」だけで計れると誤解していることに他なりません。ですから、「通用しない」と言われても「実務の問題をおっしゃっているのであれば、直ぐに身に付けることができます」と反論したいと思います。

 ただし、大学に対して「学ぶことの大切さを教えていない」「教養を身に付けさせていない」と指摘されたときには、私たちも、皆さんも、襟を正して、真摯に反省しなければなりません。

 本学の校訓「人になれ 奉仕せよ」という言葉には「いつの日か、今はまだ見えないけれど、誰かのために、社会のために、まだ見付けきっていない何かを実践できるように、少しでも、それに足り得る人になれるよう、謙虚に、常に学び続けなさい」そういう意味が含まれていると私は思っています。

 変化の激しい現代において、未来を生きる者となり得るのは学び続ける人だけです。学ぶことをやめてしまった人、学ぶ意思を捨ててしまった人には、もはや過去の世界に生きる術しか残されていないからです。

 「未来を生きる者」という表現をしましたが、もちろん「自身の成功を求める生き方」だけが未来の生き方でないことは言うまでもありません。少し抽象的ですが「周りの人にささやかな贈り物をすることを大切にする生き方」そんな生き方にこそ、知性と教養が必要だと思うのです。そして真の「教養」とは、どこかで完結するものではなく、これからも学び続けることによってのみ、身に付ける、身に付け続けることができるものです。どうかそれを忘れないでください。ですから、先ほどの「通用しない」という言葉のなかには「社会は甘くない。だから、これからもがんばりなさい」という激励の意を込めて、エールを贈られたのだと思うようにしたいと思います。

 さて、今日ここにおられる皆さんは、4月から社会に出て、新しいスタートを切ることになります。その皆さんにお願いがあります。これから社会に出れば、さまざまな困難に直面するでしょう。思い通りにならないことも多い。自分が何をして良いのか、何が出来るのか、どう評価されているのか、分からなくなることだってあります。そんなとき「この世界は自分には向いていない」そう諦めてしまうことは簡単です。「自分が想像していたような世界ではなかった」見切りを付けるのも簡単です。逆に、まだその世界を十分に理解できていないはずなのに「これなら自分は十分にやっていける」と勘違いしてしまう人もいるかもしれません。でも本当は、まだ、何も見えてないのです。

 だから、最初から「こんなものか」と、決め付けるのではなく「自分は努力しなくても大丈夫だ」と、慢心するのでもなく、どうかしばらくは、予断を持たずに、少しばかり身を小さくかがめて、どんなことでも学び取ろうという、謙虚だけど貪欲な気持ちで物事に挑戦してください。ちょうど水の中で、スポンジをぎゅっと硬く絞って、いつでも水を吸い込めるように待ち構えている状況を想像してください。皆さんが手にしているスポンジには、知的好奇心という小さな穴を沢山開けておいたつもりです。手のひらをそっと開けば、自ずから知識や技術を吸収することができるはずです。そうした気持ちでいれば、自分が次に何をすべきか、何ができるのか、見えてくる瞬間が必ずきます。

 それでも、自分の道に迷いが生じたときには、どうぞ遠慮することなく、大学の門をくぐり、いつでも、私の、私たちの、部屋のドアを、叩いてください。いつだって、何度でも、幾つになっても、それができるからこそ、皆さんは私たちの教え子であり、関東学院大学の卒業生なのです。

 卒業される皆さんに、もう一つだけ、お伝えしたいことがあります。「言葉の大切さ」についてです。愛情を伝える甘い言葉、心が温まる優しい言葉、疲れた心を癒してくれる言葉、そういった「愛のことば」の大切さについてお話したいと思います。目の前の相手に「心温まる言葉」をかければ、言葉をかけた側も、かけられた側も、お互いに優しい気持ちになって、自然とより良い関係が生まれます。逆に、聞いていて辛い言葉、批判や叱責、罵倒の言葉からは、穏やかな気持ちは、なかなか生まれるものではありません。まして、それを直接ではなく、人づてに耳にしてしまったなら尚更です。もし皆さんが、どこかで、そのような言葉を発しそうになったときに、相手の気持ちを慮った言葉が使えるどうかで、あなたの人間力が試されると言っても過言ではありません。

 一方、本当にあなたのことを心から思い、誠実に発せられた言葉であったなら、その言葉が例え、強く、鋭いものであったとしても、あなた自身にとっては、これもまた「愛の言葉」だと言えるのではないでしょうか。自分にとって都合のいいことだけを受け入れるのではなく、心が痛む批判の言葉であっても、その言葉を真正面から投げかけてくれた相手に対して、それを拒絶するのではなく「ありがたい」と思うことで、そしてまた、その言葉の真意を汲み取ろうとする気持ちが、これもまた良好な人間関係や社会を生み出すことに繋がると思います。

 ただ一つ言えることは、そのような、自分を冷静に振り返り、他人を思いやる言葉や、道徳的な誠実さというものは、皆さんの心が平穏でバランスの取れた状況、穏やかな気持ちのもとでしか、発したり、聞き取ったりすることの出来ない「静かな言葉」だということです。だからこそ、その言葉には真実味があり、思いやりがあり、大きな深い愛を感じることができるのです。「言葉」はとても大切です。

 「黙っていても分かってくれる」決してそうではありません。

 「どうしても言葉にできなかった」饒舌である必要はありません。

 ただ、言葉にしないと伝えられないときもあります。たった一言が、あなたと、あなたの周囲を幸せにすることができるのです。「直接」であっても、「間接」であっても、相手を思う気持ち「愛」を伝える、「愛」を込めることの大切さ、何度も言うと少し照れくさいですけど「愛の言葉」を、どうか大切にしてください。それはきっと、関東学院大学で学んだ「人になれ 奉仕せよ」という言葉の、そのまたずっと先にある大切なものにも通じている。私には、そう思えるのです。

 まだまだお話したいことは沢山あります。お伝えしたいことは幾つも残っているのですが、とうとう時間になったようです。皆さんが自らの力で、人生を切り拓いていく瞬間が来ました。これから飛び立つ皆さんは、知識や技術を生かし、教養を身に付け、未来に向けて思う存分、活躍していただくことは勿論ですが、それにもまして、実直に、誠実に、相手を想い、自分を想い、お互いの心をおもんばかって生きることがどんなに大切で、素敵なことか。そして、それが、皆さん自身の心に平穏をもたらし、人生をどれほど豊かにするか、どうか忘れないでください。 それは、関東学院大学という選ばれし場所で、学んだ皆さんだからこそ、実現できることだと思っています。どんな時であっても、皆さん自身が、心豊かで、喜びとぬくもりを感じられる人生を送ってほしい。そう、心から願っています。

 そして、十年後、二十年後、三十年後、四十年後、関東学院大学に在籍していてよかった。そう思っていただけるよう、私たちもまた、皆さんの傍に、寄り添い続ける存在でありたい。そう思っています。

 私からの皆さんへの最後の言葉です。卒業、修了、本当におめでとう。必ずまた、お会いしましょう。

関東学院大学 学長    
規矩大義(きく・ひろよし)

 

投稿日時:2017-03-24 18:00:00

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