キリスト教と文化研究所概要

「キリスト教と文化研究所」では、キリスト教を基盤とし、人文科学や社会科学、また自然科学と共に協力しながら、現代社会の諸課題について総合的な研究を行っています。キリスト教は、長い歴史を経て世界中に発展し、現在では諸宗教の中で最も多い宗教人口を持つに至りました。そのキリスト教を建学の精神にもつ本学の一つの重要な使命は、人間とその営為である文化、またさまざまな学術研究をキリスト教的立場から改めて深く省察し真に役立てていくところにあるといえます。振返れば1949年に「関東学院大学キリスト教研究所」を設置し、1957年には「日本プロテスタント史研究所」を設立し、1959年には本学に「神学部」が設置されそうした業を担ってきました。しかしこれらの研究所や学部はさまざまな経緯の中で今はありません。そこで2001年、こうした精神を引き継いで生まれたのがこの研究所でした。創設当初は4研究テーマに10名の所員でしたが、現在は13名の所員、7名の研究員、35名の客員研究員が8つのテーマに分かれて活動しています。キリスト教信仰思想を解明することは、今後の国際関係に於ける日本の在り方を考える上でも重要な課題です。さらに研究を進めていくことにより、社会に貢献し、本学の校訓「人になれ 奉仕せよ」を具現化する研究所として益々発展することを目標に、活動を続けています。

 

研究所所長メッセージ


キリスト教と文化研究所 所長
教授 村椿 真理

キリスト教は長い歴史を持ち、現在世界中でもっとも多く信仰されている宗教です。ローマ時代のパレスチナでユダヤ教の中から生まれた信仰ですが、さまざまな弾圧や、分離などの歴史を経て発展しました。日本に伝来したのは、1549年ザビエルによってでしたが、本学は、キリスト教の中でも、アメリカ・バプテスト教会の宣教師により、明治期に創設されて今日に至る、由緒ある教育機関です。

本研究所ではさまざまな研究課題を掲げて、キリスト教と諸学問との関わりを問い、史料の解明、他大学との共同研究、或は海外での調査活動などを通し、研究成果をあげることを目標としています。

現在「ヘブライズム研究プロジェクト」などを中心に8つのテーマで研究が行われています。このプロジェクトはキリスト教信仰の中国への伝播を先ず解明し、今は東アジア、特に日本への影響を空海との関連から探っています。その他「バプテスト研究プロジェクト」は、本学を育んだバプテスト信仰思想を解明することで、自校史をより深く捉え、今後の進むべき道を考える研究を行なっています。

キリスト教を正しく理解することは、実は現代世界を学ぶことにつながります。私たちが進めている研究が、現代の社会が抱える問題を少しでも解決に導くものとなるように願いつつ取り組んでいます。

 

研究プロジェクトグループ

バプテスト共同研究グループ

 初期英国バプテストの歴史と神学研究が専門分野ですが、バプテスト史全般を研究しています。現在の主要研究テーマは「バプテスト献児式の神学研究」、短期研究テーマは「18世紀英国バプテストと奴隷制度問題」です。バプテスト研究は歴史、思想、教会形成神学、また本学を育んだキリスト教の教派史研究と多岐に亘りますので、そうした研究者の諸研究をとりまとめ、社会に発信していく部分に特に力を入れて活動している他、新しいバプテスト研究者の育成にも力を注いでいます。

ヘブライズム研究プロジェクト

 東西の思想史における二大潮流のひとつであるヘブライズムに注目し、信徒たちの東漸を辿ることによって、東アジアヘのヘブライズム伝播の経緯を明らかにしようと試みる研究グループです。アジアの辺境で生起したヘブライズムがローマ帝国を経由し西に進みラテン世界でのキリスト教を形成した一方で、東にも進み、アジア域にも多大な影響を与えたグループがあったという史実の解明として、内外の研究者によるプロジェクトチームを結成し、5世紀に東ローマ帝国を出発し、7世紀に中国に到達した古代キリスト教の一派ネストリウス派・景教に焦点をあて、ヘブライズムの東漸が東西の文化交流において、どの様な影響を与えたかを調査しています。

キリスト教と日本の精神風土研究グループ

 「キリスト教と日本の精神風土」研究グループは「キリスト教と文化研究所」発足当時からの組織で、広くキリスト教と日本の人文系学問が関わる研究を推進しています。学際的な研究者の集まりで、キリスト教が近現代の日本の精神風土とどのような関わりがあるかということを主な研究内容としています。具体的に最近の研究発表では、日本の現代キリスト教文学、欧米のキリスト教社会思想と近現代日本、日本の欧米文学研究とキリスト教、近現代における欧米宣教師の日本の文化との相互作用、内村鑑三他日本近代のキリスト者の思想研究などのテーマを扱いました。

奉仕・ボランティア教育研究グループ

 奉仕ボランティア教育研究グループはここ数年サービス・ラーニングについての研究を続けてきました。  サービス・ラーニングは、近年叫ばれているアクティブ・ラーニングの1つで「学習者が自ら問題意識を持ち調査すること」、「自らが問題提起をして行動を起こすこと」に主眼を置く学習方法です。一見、ボランティアと似ているように思えますが、その主体は学習者で、通常の授業内容と活動を結びつけること、活動後のふりかえりとフィードバックを持つことが大きな違いです。米国ではサービス・ラーニングを人格教育と結びつけることも多く、特にキリスト教に基づいたミッションスクールではその傾向が見られます。これまで国内外の活動を研究してきましたが、今年度からは本学で実際に実施しており、学生が地域と結びつきながら学びを深めるより良いプログラムづくり、評価、危機管理などを中心に研究しています。

坂田祐研究グループ

  本研究グループは、関東学院初代院長である坂田祐先生が生涯書かれた日記を解読し、以下のテーマに関する研究を行っています。関東学院ならびにキリスト教に関わる歴史書といっても過言ではない日記を読み解くことは、学院の今後を考える上でも意義があります。
  研究テーマ
1)坂田祐日記の研究
2)坂田祐の生涯の研究
  活動内容
1)坂田祐日記の解読
(2016年度は1942年の坂田祐日記の解読を行っています)
2)坂田祐日記の解読文の製本
(坂田創氏のご協力によって解読した本文が散逸しないように製本し、保存しています。資料は、坂田創氏がキリスト教と文化研究所に対して寄付くださいました)

いのちを考える研究グループ

 私たちは、「いのち」に関する様々なテーマを取り上げ、幅広い観点から検討を行うことで現代社会における「いのちの問題」についての知見を広めています。グループメンバーは、心理学、法学、教育学、文学、生物学などの専門家です。これまで、私たちは「小学校における学校崩壊への対応策の成果と課題」、「医療現場における患者とその家族に対する心理学的支援の必要性および具体策の検討」、「ストーカー被害など学生が遭遇する可能性のある危機に対する人的支援の重要性」などのテーマで議論を重ねてきました。

依存症と環境神学研究グループ

 現代日本社会における最大の課題は,「依存症社会」の末期症状を呈していることであり,また,それに伴う障害や問題が多数発生しており,社会全体が極めて危機的な状況に陥っていることです。「依存症」( Dependency )とは,元々,精神医学やカウンセリング分野の概念であり用語です。「アルコール依存症」は,比較的よく知られており,麻酔性・依存性のある薬物(化学物質)であるアルコールの入っているお酒を習慣的に大量に取り込み続けて陥る身体と精神の両方の病気です。アルコールという化学物質をとり続けたために,お酒を止めることができなくなり,脳が麻痺してしまうために,家庭内で妻や子供などの家族や近親者等に物理的暴力や暴言(言葉による暴力)を行使し,家庭を「機能不全家族」にしてしまうことが少なくありません。「依存症人間」 とは,「依存症を持病として抱えている人間のことであり,自覚症状の無い,自分が依存症なのに、依存症であることを認識していないか,または,認めようとしない人間」と,定義しています。多くの依存症人間から形成され,「依存的人間関係」を人間関係の基調とする社会を「依存症社会」と呼ぶことにし、現代日本社会は,まさに,この依存症社会そのものになってしまっています。
本研究グループの主たる目的は,この「依存症」及び「依存症社会」の構造と特質をキリスト教及び環境神学の観点から分析し,解決のための方法と手段を探ることです。ことに,依存症からの回復のために実践しているキリスト教に基づく12ステップ方式による自助グーループの活動(Chrischan Living Group)を外部展開し,その有効性を検証し、普及をめざすとともにその学問的裏付けを強化しています。
主な研究課題としては、下記のサブテーマを計画し研究を進めて来ました。
① 依存症に関する総合的調査研究―人文社会科学的研究及びキリスト教との関係の調査研究
② 依存症社会に関する総合的調査研究―人文社会科学的研究・社会システム論的アプローチ及びキリスト教ことに環境神学との関係の調査研究
③ 依存症と依存症社会に関するキリスト教との関係の基礎的調査研究
④ 依存症からの回復のための「12ステップ方式自助グループ」(Chrischan Living Group.CLGと省略)の実践と実践的研究
⑤ 不登校・引きこもり等の最近の大学生等に起こっている学生依存症問題に関する研究 

新約研究グループ

 2015年度新たに立ち上がった新約聖書を研究するグループです。新約聖書からは初期キリスト教(ないしユダヤ教イエス派)の状況や発展が見て取れるので、初期キリスト教に関する研究グループという側面も持ちます。また、新約聖書より少し後代の「教会教父」を専門に研究しているメンバーもいるので、広義には古代キリスト教に関する何らかの事柄を究明する研究グループであると言うことができます。新約学と言っても、アプローチの仕方は多様ですし、メンバー各人の興味・関心も一様でないので、定期的に研究発表会を開き、各人の関心に基づいて、新約聖書に関わる何らかの事柄を究明しています。これまでの2回は、「マタイ福音書における『ファミリー・イメージ』について――神を表す‘πατήρ’の用法とその意味についての一考察――」、「『アントニオスの生涯』に見るアタナシオスの救済論」のテーマで研究発表会が持たれました。。

 

研究員プロフィール

氏名 所属
職位
専門分野 研究テーマ キリスト教と文化研究所
における担当
所長ムラツバキ マコト村椿 真理 法学部法学科
教授
キリスト教神学 初期英国バプテスト派神学研究 バプテスト研究
アンドウ キヨシ安藤 潔 国際文化学部英語文化学科
教授
英文学 フランス革命時代の英国とロマン派詩人達
ナポレオン戦争時代の英国とロマン派詩人達
英国湖水地方の旅行文化史
キリスト教と日本の精神風土研究
ササキ ヨウセイ佐々木 洋成 社会学部現代社会学科
准教授
教育社会学 教育と社会的不平等 ヘブライズム研究
ホソヤ サリ細谷 早里 経済学部経済学科
教授
教育学 多文化教育
異文化間教育
教員養成
奉仕・ボランティア教育研究
ナカムラ ユキ中村 友紀 経済学部経営学科
教授
英語 初代初期イギリス民衆文化史と演劇 依存症と環境神学研究
ナイトウ ミキコ内藤 幹子 経済学部経営学科
講師
キリスト教神学 ドイツ・バプテストの歴史と神学
エルンスト・トレルチにおける「キリスト教共同体」論
バプテスト研究
オノウエ サクラ尾之上 さくら 理工学部理工学科
講師
細胞生物学 培養細胞に対する食品添加物の複合影響
動物細胞による有用生理活性物質の産生
食品中の抗アレルギー性成分の探索
いのちを考える研究
サトウ コウヤ佐藤 幸也 理工学部
教授
教育学 学校教育
生涯学習
農業教育
 
ワタナベ ヒロシ渡部 洋 建築・環境学部建築・環境学科
准教授
建築構造、鉄筋コンクリート構造 コンクリートを用いた建築物の耐震性向上 「坂田祐」研究
ナカムラ ユウ中村 優 栄養学部管理栄養学科
講師
食品化学 食品の加工特性解明に対する生化学的・分子生物学的アプローチ 依存症と環境神学研究
イシワタ ヒロシ石渡 浩司 教育学部こども発達学科
准教授
新約聖書学 「キリスト教」のユダヤ教からの分離
キリスト教キリスト論(神論)とユダヤ教メシア論(神論)の関係
新約研究
トメハタ スミエ留畑 寿美江 看護学部看護学科
准教授
老年看護学 高齢者への看護技術に関する研究
加齢と温熱応答に関する研究
 
ヤマダ ルリコ山田 留里子 人間共生学部コミュニケーション学科
教授
現代中国語文法
中国語教育
日中対照言語学
中国語におけるICT活用教育方法研究、中日翻訳理論  
 

出版物

  • 広報物

      ニュースレター1~39号

  • 活動報告集

      関東学院大学キリスト教と文化研究所第1~14号
      「バプテストの歴史的貢献 バプテスト研究プロジェクト編」関東学院大学出版会、2007年3月
      「バプテストの宣教と社会的貢献 バプテスト研究プロジェクト編」関東学院大学出版会、2009年10月
      「見えてくる バプテストの歴史 バプテスト研究プロジェクト編」関東学院大学出版会、2011年5月
      「バプテストの教育と社会貢献 バプテスト研究プロジェクト編」関東学院大学出版会、2014年3月
      「坂田祐日記Ⅰ 1923年~1926年」関東学院大学キリスト教と文化研究所、2012年4月

 
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