経済から未来を探る 清 晌一郎

ここ一年ほど、株価は上昇し、雇用にも改善が見られるなど、日本が失われた20年を取り戻しつつあるかのような報道が見受けられます。それに水を差すつもりはありませんが、このグローバル社会のなかで日本が成長を続けていける長期的なビジョンがそこにあるわけではありません。

私が研究対象とする自動車産業は、日本経済をけん引する巨大な産業ですが、いまや部品産業のみならず、中小企業にもグローバル化を迫り、地域経済の空洞化には歯止めがかかりません。グローバル経済とは、言い換えれば自国に投資をしない経済のこと。地域から安定した職が失われ、生活に希望を見出せない状況に陥ってからでは、取り返しがつきません。

打開策を探るために、私は自動車産業研究の第一線に立つ全国14大学の経済学者とともに研究会を組織し、海外生産の直面する諸問題は何か、部品製造を担う地域経済の活性化のためにできることは何かについて、企業との連携も図りながら調査を進めています。研究成果は、日本が進むべき未来を見極める材料のひとつとして、学会内にとどまらず、積極的に発信していきます。

改めて言えば、国内経済停滞の様相は深刻です。中小企業数の激減、商店街や地域経済の衰退、ブラック企業の横行にみられる労働条件の悪化、社会福祉や国民の民主主義的諸権利の衰退など。これらの現実から目をそらし、近隣諸国との摩擦の拡大、集団安全保障といういつか来た道に逃げ込むのは最悪の選択。この先の日本がどうあるべきか、そこで自分はどうありたいかについて、誰もが真剣に考える時が来ています。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

清 晌一郎

関東学院大学
経済学部 経済学科 教授

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