税のあり方を、問い直す 望月 正光

 

聖職者としての将来を嘱望されながら数学者の道を選び、近代経済学の礎を築いたアルフレッド・マーシャル(1842-1924)は、世紀を越えて尊敬を集める経済学のヒーローです。私も彼に感化された一人。「経済学の使命は、冷静な頭脳と温かい心をもって貧困の解消に力を差し出すことである」という彼の言葉は、私が財政学、公共経済学の研究をめざした原点であり、今日に至るまで揺るがない行動指針でもあります。

平等な社会をつくるために、国や地方自治体などの「政府」が果たすべき使命は「公共サービスの提供」「所得の再分配」「経済安定化」の3点。その実現のために不可欠なのが「税金」です。だからこそ税制に公正は欠かせません。負担するときにムダを発生させないことも重要です。

日本の税制はそれを体現できているかと問えば、ほとんどの人は首をかしげるかもしれません。しかし、世界有数の安全な暮らしを実現したこの国で、税制は比較的うまく機能してきた。私はそう考えています。

ところが今、税の公正さはゆがみ始めています。グローバル経済の進展によって、企業は多国籍化し、納税する国を選ぶようになりました。一方、人は単国籍。経済の実情に、税制が追いついていないひづみが顕在化しています。

私は今、そんな時代における租税体系を問い直すために、世界中の事例を紐解きながら研究を進めています。これからの日本に必要なのは、所得税を基幹とする税制を根本的に見直すこと。国民全員が税の使われ方に目を光らせ、声を上げていくことも大事です。この安全で安心な社会を次世代に引き継ぐために。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

望月 正光

関東学院大学
経済学部 経済学科 教授

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