豊かな未来のヒントは過去にある 黒田 泰介

新しい建築をつくることだけが建築ではありません。私の専門は「レスタウロ(修復・再生)」。日本では、馴染みの薄い概念かもしれませんが、古代ローマ起源の都市が、今も現役の街として生き続けるイタリアでは、ごく当たり前の考え方。古い街並みや建築を保存するだけではなく、あたかも外科医のごとくそこに介入し、新しい価値を生み出すこともレスタウロの精神なのです。

大学院生時代に訪れたイタリアでその魅力にすっかりとりつかれた私は、フィレンツェ大学に留学して都市形成史研究を進めるとともに、イタリアを代表する建築家マッシモ・カルマッシ氏の設計事務所でレスタウロの実務を担当してきました。そこで改めて気づかされたのは、広場、道路、路地、そして建築空間が一体としてデザインされた、イタリアの歴史的都市の完成度の高さ。そこにはタワーが乱立する現代日本の都市計画には見いだせない豊かさと、真に人間らしい生活のためのヒントが溢れています。

 いまだにスクラップアンドビルドが主流の日本において、横浜は赤レンガ倉庫をはじめ、歴史的な街並みと古い建物を活かした都市計画を実践する先進的な都市。本学に着任後は、そのまちづくりにも貢献したいと考え、学生とともに旧大蔵省財務局(横浜・関内)の実測調査や、山下町の築80年を超えるビルの再生計画にも取り組んでいます。

過去に敬意を払い、新しい時代を生きる暮らし方は、家族や地域との絆を大切にした、これからのライフスタイルの提案にも繋がっていくはずです。そんな豊かな暮らしのために建築に何ができるか。研究を深めていきたいと考えています。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

黒田 泰介

関東学院大学
建築・環境学部
建築・環境学科 教授

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