生理学へのラブレター 佐藤 容子

大学へ入学したときは医師を目指していたはずでした。しかし、たまたま訪ねた研究室で最先端の生理学と出会った瞬間、私はこの研究の虜になり、これこそが天職だと直感しました。それは、野球少年が野球選手になりたいと切実に願う気持ちと似たようなものではないかと思います。以来きょうまで、私がただ一途に取り組んできたのは生理学、とりわけ脳の活動を可視化する研究です。

一般的に脳の活動解析は、電極を用いて細胞の電位や電流を測る物理的な方法で行われます。このため、細胞が小さくてもろい発生初期の脳は解析が難しく、脳がいつ頃から活動をはじめるのか、胎児がいつ頃から考えるはじめるのかは、ずっと分っていませんでした。しかし、私が長年にわたって取り組んできた「光学計測・イメージング法」なら、脳の活動を光で視ることが可能です。たとえばニワトリはわずかふ卵4日目、ラットは受精後12日ほどで脳が活動をはじめ、その後数日で目や耳からの入力が処理され始めていることがわかってきました。これを人間に置き換えると、受精後1ヶ月半ほど。驚いたことに、胎児の脳は、母体が妊娠を自覚するずっと前から機能し始めていると考えられるのです。

脳には、発生にまつわる謎はもとより、病気の発症メカニズム解明のための基礎情報がつまっています。その解明は、あらゆる分野の医学の発展と人々の健康な暮らしに貢献するはずです。私はこれからも、この研究を深く、深く、掘り下げ、脳の不思議を解明していきたいと思っています。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

佐藤 容子

関東学院大学
人間環境学部 健康栄養学科
教授

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