微生物の無限の可能性を求めて 川原 一芳

大学で専門課程に進む際、私には、理学部と農学部、ふたつの選択肢がありました。農学部を選んだのは、微生物に興味があったからで、正直、農学を志したからではありません。しかし、農学部における研究は「人の役に立つ」ことが必須条件。若い頃は理学的な基礎研究にも憧れていたので反発を感じたこともありますが、いつの間にかその教えが、私が研究と向き合う基本姿勢になりました。本学の学生たちに研究指導をしていると、かつて自分が恩師から受けた教えを、同じように説いている自分に気がつきます。

私が長年取り組んでいるのは、自然界に当たり前に存在するスフィンゴモナス科の細菌がつくりだすスフィンゴ糖脂質の研究。当初はこの物質の保湿機能に着目し、化粧品への応用を考えていたのですが、研究を続けるうちに、スフィンゴ糖脂質には、さらに大きな可能性―体内のがん細胞を駆除する働きを持つナチュラルキラーT細胞の免疫機能を活性化させる働きがあることが分ってきたのです。現在は、副作用の少ないがん治療への応用をめざし、研究を続けています。

地球上には無数の微生物が存在していますが、そのなかで性質や細胞構造が解明されているのは、わずか1%にしか過ぎません。おなじみの乳酸菌でさえ、免疫活性の物質レベルでの証明はまったく行われていないのです。私は、その秘密も解き明かすつもりです。この無限の可能性を秘めた微生物学のフィールドでは、私の探究心は尽きることがありません。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

川原 一芳

関東学院大学
理工学部理工学科
生命学系 学系長 教授

LINEで送る

 


 







Copyright © Kanto Gakuin All rights reserved.