すべては自然から学ぶ 高井 治

自然の少ない東京の下町育ちのせいか、自然はずっと私の憧れ。少年時代は、近所の上野公園で植物観察に夢中になったものです。なかでも私の心を捉えて放さなかったのは、不忍池のハスです。葉の上でコロコロと転がる水玉の不思議さに魅了され、いつの日かその謎を解き明かしたい、こんなものを自分の手でつくりたいと夢見ていました。

じつはハスの葉の超はっ水力はフッ素加工を大きく上回る優れたもの。その秘密は、ハスの葉の表面の微細な凸凹構造にあります。自然が創り出したこの絶妙な構造をお手本に、私はあらゆる素材のコーティングを可能にする超はっ水薄膜の開発に取り組んできました。当初は失敗続き。つくったサンプルの数は1万を下りません。それでも飽くことなく研究を続け、ようやく実用化にこぎ着けるところまで来るのに約10年の歳月を費やしました。少年時代の夢は、なんとかかなえることができたのです。

この技術を応用した耐水ペーパーはすでに商品化され、屋外用ポスターなどに使われ始めていますが、自然に学ぶ研究はきょうも続いています。なぜなら関東学院大学材料・表面工学研究所のテーマは、「学」に留まることなく「産」における実用化までを視野に入れた研究開発にあるからです。いま、めざしているのは、高度な耐久性と安全性が求められる自動車産業で、この技術を活かすこと。具体的にはワイパーの要らない自動車のフロントガラスの開発です。新しい夢をカタチにするために、研究生とともに、超はっ水薄膜の郷土と耐久性をさらに高める研究を続けています。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

高井 治

関東学院大学
大学院 工学研究科 教授
材料・表面工学研究所副所長

LINEで送る

 


 







Copyright © Kanto Gakuin All rights reserved.