人のつながりを可視化する 立山 徳子

あなたにとって「家族」とはどんな単位ですか?「同じ屋根の下に暮らす夫婦と子ども」でしょうか。そこにおじいちゃんやおばあちゃんが加わる方もいるでしょう。私が大学時代、交換留学制度を利用して訪れたフィリピンのスラムでは、地域全体がまるでひとつの家族のように、子どもたちを育てていました。自分の中の「家族」像を更新せざるを得ないその体験こそ、私が社会学―とりわけパーソナルネットワーク(一人ひとりが持つつながり)の研究へと進んだ原点です。

彼の地における地域の絆が貧困に起因している以上、それを美化することはできません。しかし、豊かなはずの日本で、子育てがこれほどに困難になった一因は、本来社会的な行為であるはずの子育てを、家族だけの問題として処理してきた日本の都市型ライフスタイルにある気がします。私が実施したパーソナルネットワーク調査からも、村落で暮らす女性が地域や親族から手厚い子育て支援を受けているのに対し、郊外の住宅地で暮らす女性には、極論すればママ友しか頼れる相手がいない現状が浮かび上がっています。「地域」のしがらみから解き放たれた「都市」ほど「家族」同士を遮る壁は厚く、誰もがお互いの距離をとりあぐねいているのかもしれません。

どんな地域で、どんな人が、どんなつながりの中にいるのか。なぜそれらのパターンが生まれるのか。パーソナルネットワークの研究からは、育児不安や孤立など「個人的な問題」とされがちなことも、実は「社会のつながり方の問題」として考えることができるのです。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

立山 徳子

関東学院大学
人間環境学部
人間環境デザイン学科 教授

LINEで送る

 


 







Copyright © Kanto Gakuin All rights reserved.