文学草稿をオープンソースにするという試み 大鐘 敦子

人類の遺産とも呼べる人文学。そのオリジナル原稿保存のために、各国でデジタルアーカイブ化への取り組みが始まっています。リアリズムの父・フローベールの自筆原稿のデジタルアーカイブ化をめざすフランス・ルーアン大学の「サイト・フローベール」は、そのいちばん先を走る試みのひとつです。

2006年以降、フローベールやサロメに関して、フランスの国際会議や文芸批評誌で発表したことがご縁となり、こうしたルーアン大学フローベール研究所(CEREDI)やリヨン高等師範学校(ENS)/フランス国立科学研究所等が率いる国際プロジェクトに私も参加する機会を得ました。世界のフローベール研究者たちとともに、彼の遺作となった『ブヴァールとペキュシェ』他の草稿解読に取り組みました。丸5年、時間も膨大にかかりましたが、それでも参加をためらわなかったのは、解説・分析に留まることなく、デジタル化したアーカイブを、ウェブサイトを通じて世界に公開しようという彼らの姿勢に共感したから。これまで、ごく限られた研究者だけが閲覧を許されてきた世界最高峰の文学的資料が、誰もが自由に閲覧できるオープンソースとなったことは、次世代の若者たちにとって、計り知れないプラスとなるはずです。

昨年の秋には、「サイト・フローベール」の責任者にして19世紀フランス文学研究の世界的権威のひとり、イヴァン・ルクレール教授を日本に招聘(科研費による)し、関東学院大学で講演会を開催しました。こうした国際学術交流が、日本文学のオリジナル原稿保存を考えるきっかけにもなれば、私にとってこれ以上の喜びはありません。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

大鐘 敦子

関東学院大学
法学部 法学科 教授

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