経験の知から学ぶと、柔軟な思考力が生まれる 秋山 薊ニ

私の専門はソーシャルワーク論。この世に生を受けた人は誰も等しくその人権は尊重されるべきという想いからこの研究に進みました。いま取り組んでいるのは「リジリエンス」の研究です。

「リジリエンス」とは困難に直面しながらもそれを克服し生き延びる、しなやかさのこと。虐待、貧困、差別、災害、心身の障害・・・・。社会には多様な困難・難事が随所にありますが、誰もがそれに躓くわけではありません。困難・難事を克服し、健全な社会生活を送る人もいます。彼らが困難を乗り越えた要素は何か。その要素を解き明かすことで、困難を克服できなかった人への有効な支援が明瞭になる。人・地域の潜在能力を引き出す方法の探究が、「リジリエンス」と向き合う私の目的です。

私の調査の範囲から、困難を克服した人は、相談相手や支援者が多いという印象を持っています。もしかすると、人の「リジリエンス」を育むのは、隣人を気遣い、困っている人に手を貸す当たり前の互助なのかもしれません。日本は社会福祉を重視しバリアフリー化の進んだ国。例えば駅の点字ブロックは、いち早く導入されたものです。しかし、私はそれが福祉の先進性の象徴ではなく、目の不自由な人に手を差しのべるという、人が本来持つべき「いたわり」が、いち早く失われた社会の証明のように感じます。

震災からの復興の過程にあるこの国では、津波対策として今以上の高いコンクリートの防潮堤を海岸に巡らす計画が進んでいます。これは「リジリエンス」とは正反対の方向です。復興すべきは、経験の知をいかした、適応力、即応性、協力、連携、調和、非画一性による生活復興だと思います。「リジリエンス」は防護力ではなく、経験の知から学ぶ柔軟な対処力、生活力だと考えています。

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

秋山 薊ニ

関東学院大学
文学部 現代社会学科 教授

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