山口和士 特任教授(全国進路指導推進協議会会長)

 群馬県立高校で長年勤務した後、「全国進路指導推進協議会」の会長を務める山口和士特任教授。校長職を最後に高校教員としての仕事を退官した現在も、高校生や保護者向けの進路講話のため全国各地を飛び回る日々を過ごしています。生徒一人ひとりに今も向き合い「子どもたち、1人たりとも見捨てはしない」を心情にした山口特任教授の進路指導への信念は、人づてに伝わり、今や全国の多くの高校の進路指導担当者からも信頼される存在です。

 山口特任教授は「自分は何も分からぬ生徒だった」と振り返ります。小学校での教育現場のある体験から、声を失い、苦しい月日を重ねたのです。高校生に成長しても人を信じられず、無気力に過ごしていたある日、ふと目をやった教科書の中に日本初のノーベル賞受賞者・湯川秀樹先生の文章が目に入って来たといいます。「自分も劣等生だった」と述べるその文章に感銘を受け、京都大学にいた湯川先生に思いを込めた手紙を送ると、思いがけないことに「君は間違っていない、私に会いにおいで」と直筆の返事が返ってきたのだそうです。手紙を抱きしめて必死で会いに来た少年に対して、当時最も多忙だったはずの湯川先生は数時間、彼が言葉を発することができるまで丁寧に指導し、心の変化を待ってくれたのです。

 「なぜ声が出るようになったのかはわかりません。ただ、勇気を出して行動してみることの大切さを知ったのです。あの時、湯川先生に会いに行かなければ、いまだに沈黙の中に苦しんでいたかもしれません」勇気さえあれば、誰もが人生を変えることができるのです。

 故郷山形に帰ると直ちに、大学進学を決意。小学校時代の教科書からやり直しました。高校で多くの教師が「お前に、大学進学は無理だ」と言う中、2人の教師が、「基礎基本ができていれば、この世のどんな大学にも届く」と応援してくれました。その言葉を信じて努力を重ね、東京の大学へと進学。紆余曲折を経て、群馬県で教壇に立つまでになったのです。

 「少数でしたが、見捨てないでいてくれた教員がいたからこそ、今の私があるのです。だから、私もどんな生徒も見捨てたくなかった」と語る山口特任教授は、大学に籍を置く今も高校生たちと面談を重ねています。2017年も進路講演の後、12月末まで1,246名と面談。

 山口特任教授は、2017年10月末に詩集を発刊。書名は「詩集『学校』-十五歳の決意-(悠光堂 刊)」。最後に校長として勤務した3年間を中心に、日々校門に立ち、全員を面談し続けた日常で、生徒たちのために紡いだ300余篇から、33篇を抜粋したものです。

 「生徒たちだけではなく、保護者や先生方にも読んでもらいたい。『この子はこの程度の力しかない』と見切るのではなく、若者の力を信じてほしい」と強く訴えています。

 生徒の目線に立ちながら、愛情を注いだ教師の言葉に「学ぶことの意味」が滲んできます。

 

※ 所属、学年などは、全て取材当時のものです。

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