佐藤 茂樹

国際文化学部
比較文化学科
教授

基本情報

佐藤 茂樹

専門分野 ドイツ文化史
研究テーマ ドイツ児童書の社会史
最終学歴 慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程 満期退学
学位 文学修士
研究キーワード ドイツ 児童書 近代ドイツ文学 伝承文芸

今を生きる私たちに必要な18世紀ドイツの生き方や価値観。

日本以外の国について調べることで、視野を広げたいという思いがありました。そこで、私が若い頃にも情報が比較的入手しやすかったドイツという国を選んで、調べていくようになったんです。

今は、18世紀のドイツの児童書について研究しています。18世紀のドイツは、ヨーロッパの中では後進国。300余の小国に分かれていましたが、そんな中でもようやく市民的な自意識が芽生え始めてきた時期です。この頃、ドイツでは児童書の需要が増えていきます。これは、ドイツの社会や家族のあり方の変化が影響しています。それまでは同じ仕事に携わる人たちが共同で生活し、血縁関係にない人も一緒に暮らしていました。日本の江戸時代の大店で、奉公人が主人と同じ屋根の下で暮らしていたのと近いですね。しかし、男性が外に仕事へ行き、サラリーをもらうようになると、現代の核家族のような両親と子どもという血縁関係によって構成される家族へと変化していきました。それまでは、労働の担い手でもあった子どもが、教育の対象になったのです。まだ、公教育が整備されていない時代に、子弟の教育のために活用されたのが児童書でした。例えば、ロビンソン・クルーソーの改作で「ロビンソン・ジュニア」という作品があります。この中では、父親が子どもたちにロビンソン・クルーソーの物語を語り、それに対して子どもたちが質問することで、将来必要とされる知識や人間関係のあり方を伝えようとしています。こうした18世紀のドイツで生きた人々の文化や文学の中に、私は我々現代の日本人の生き方や価値観に、参考にするべきところがあると思うのです。ですから、そこにあるものを読み解いて、今の日本の人々に伝えていこうとしています。

主要業績

    (著書)
  • (単著)『ドイツ児童書の社会史』明石書店 2013年
  • (共編著)『比較文化事典』明石書店 2015年
  • (論文)
  • (単著)「Über die Physiker Friedrich Dürrenmatts(2)」『関東学院大学文学部紀要第119号』2010年
  • (単著)「Über die Physiker Friedrich Dürrenmatts(3)」『関東学院大学文学部紀要第120・121合併号』2010年
  • (単著)「Über die Physiker Friedrich Dürrenmatts(1)」『関東学院大学文学部紀要第131号』2014年
  • (その他)
  • (単著)学術エッセイ「都市伝説と異文化コミュニケーション」『ヘルダー研究第18号』2013年
  • (単著)学術エッセイ「カニの本の挿絵から考えたこと」『18世紀学会学会ニュース第72号』2013年

古い作品も、発表された当時は新作だった。

時代を経た文学作品は、古くさい手あかのついたものだと若い学生は思うかもしれません。でも、その作品が誕生したときは、前衛的で新しいものだったのです。また、作品が生まれる社会的な必然性もあるのです。学生は、つまらないと思ってしまった本は、なかなか手に取ろうとしません。しかし、読んでもいないのに手に取ることすらしないのは、もったいないことです。私は学生たちに、作品が生まれた時代背景や社会的要因も説明しながら、その作品が当時いかに時代の要求を先取りした輝くものだったかを伝えていければと思っています。

最近の学生の中には、自分の興味関心以外の部分には目を向けない人もいます。でも、そういう学生にこそ、自分の外の世界に目を向けてほしい。そういう学生に対して、私は「教えたい」と燃えてくるんです。その学生が、見たことや聞いたことのない世界で、新しい発見をしてほしいのです。 ここで学んだ学生には、自分のいる場所を好きになれる学生、社会人になってほしいと思います。地域や会社でも、好きな場所だからこそ、ああしたい、こうしたいという、前向きな考え方ができるようになるんだと思います。そういう時に、知らなかったことを知るという学生時代の学びが、その人が何かを変えるときの原動力になるのではないでしょうか。

担当科目

  • ワールドスタディ
  • 合同ゼミナール
  • ドイツ語
  • 異文化理解入門
  • 卒業論文
  • 基礎ゼミナール
  • ドイツ語表現
  • ゼミナール
  • 地域言語特論(ドイツ語)
  • ドイツ研究入門
  • ドイツの文化と社会
  • ドイツの言語文化

公共の利益を考えられる人を社会に送り出したい。

学外の講演会などで、お話する機会をたびたびいただきます。以前には、立教大学で「都市伝説と異文化コミュニケーション-発信者と受信者の間に介在するもの」というテーマで、講演しました。この時には、文学の研究者だけではなく、一般の方も参加して、日独の文化を比較するようなお話をして、楽しんでいただけたようです。 また、ドイツの児童書を研究して発表した著作の中には、幼稚園の先生向けに書いた部分もあります。過去の児童書の中から、今の時代に参考にできることはたくさんありますからね。

ただし、学生を指導して社会に送り出すことが、私ができる最大の社会への貢献だと思っています。学生たちが、目先の利益をちょっと我慢しても、将来のもっと大きい公共の利益のために、自分を抑えられるという人になってもらいたい。その時に、自分のことだけを考えるのではなく、外の世界や文化に触れたという経験が、その人の役に立ってくれることを願っています。

取材・原稿作成 関東学院大学広報室