田中 綾一

法学部
法学科
教授

基本情報

田中 綾一

専門分野 国際金融論
研究テーマ 第二次世界大戦後の国際通貨体制
最終学歴 立命館大学大学院国際関係研究科 博士後期課程 修了
学位 博士(国際関係学)
研究キーワード 国際金融 国際通貨制度 外国為替

なぜ、ドルが世界の基軸通貨なのか?

研究の道に進もうと思ったのは、大学3年生の時。恩師の指導がおもしろかったというのもありますが、「なぜ、ドルが世界の基軸通貨になっているのだろう?」という疑問があったからです。わからないことを知りたいという純粋な思いがあったのだと思います。

基軸通貨とは、外国為替市場で取引される主要な通貨のこと。現代社会では、取引の多くにアメリカのドルが関わっています。金融機関は顧客の求めに応じて、為替業務を行います。例えば、オーストラリアに旅行する人は、日本円を豪ドルに替えます。金融機関の手元には日本円が残って、豪ドルが足りない状態になるわけです。ですから、金融機関は豪ドルを補填しようと、外国為替市場で取引をします。その時に、円を一旦アメリカドルに変えてから、豪ドルを仕入れる方法が一般的。なぜなら、外国為替市場の8割の取引にアメリカドルが関わっているので、取引がしやすいという状況があるからです。

外国為替市場で圧倒的な流通量を誇るアメリカのドル。2000年代に欧州のユーロが登場しても、その存在感は崩れる様子を見せません。ですが、西側諸国の中でアメリカが圧倒的な国力を保持した第二次世界大戦後、しばらくの間は外国為替市場の取引はイギリスのポンドが主流でした。しかし、70年代に入るとすっかりドルが主要通貨として扱われるようになるのです。さまざまな理由があると思いますが、一つはイギリスの国力がアメリカに比べて衰退してきたことでしょう。ただし、20世紀前半からすでにこのことは見えていたことですから、決定的なファクターとは言えませんでした。もう一つ大きな理由は、エネルギーが石炭から石油の時代に転換してきたこと。つまり、産油国の動向が為替市場に大きな影響を与えることになるのです。アラブの産油国の多くがイギリスの旧植民地でしたから、もともとはポンドでの取引が主流でした。しかし、戦後ポンドの価値が下がる状況では産油国がポンドでの取引に躊躇するようになり、ドルでの取引が増加します。このことが、現代までつづく外国為替市場でのドルの優位性を築いていったのです。

主要業績

    (著書)
  • 『国際金融危機と民主主義』共著 2010年3月 関東学院大学出版会
  • 『リベラルアーツのすすめ─法学部で学ぶ─』共著 2013年3月 関東学院大学出版会
  • 『現代国際金融-構図と解明(第3版)』共著 2016年3月 法律文化社
  • (学術論文)
  • 「欧州危機分析の一視角−IMF体制構築過程からの教訓−」単著 2012年1月 関東学院大学法学研究所『ジュリスコンサルタス』21号
  • 「欧州危機と通貨統合の行方-1950年代の経験からの分析-」単著 2012年5月 拓殖大学海外事情研究所『海外事情』第60巻5号
  • 「『5つの条件』からみるイギリスとユーロ」単著 2013年3月 立命館大学国際関係学会『立命館国際研究』第25巻3号
  • 「日本の経常収支動向と国際収支分析の問題点−縮小する経常黒字と2014年上半期の国際収支構造−」単著 2015年1月 関東学院法学

outputはinputを超えられない。

ゼミでは、学生たちに経済学に関わるテーマの新書などを読んでもらって、それをまとめて発表してもらっています。著書の書いていることを正確にまとめることは難しいことです。文章でもそうですし、人から聞いた話でもそうですが、耳にした情報を正しく理解するということは、とても大切なことです。それが正確にできないと、まとめるという作業はできません。社会人として仕事をするときにも、上司からの指示を正確に解釈できなければ困ってしまうこともたくさんあると思います。ですから、人の話を素直に聞くということは大切な素養だと思います。どれだけoutputのテクニックを磨いても、inputした情報量を超えることはできないはずです。人の話を聞いたり、文章を読んだりして、まず理解するということが重要です。まずはそれをベースにして、自分の考えを築いていってほしいと願っています。

ありきたりかもしれませんが、学生たちには社会に出た時に自分の言葉で説明できる大人になってほしいと考えています。ですから、教員と学生というそれぞれの立場はありますが、学生たちには一人前の社会人として接することを心がけています。授業などで、学生たちと接していると年に数回、オッと驚かされる質問に出くわすことがあります。そういう時には、まだまだ私もわからないことがあるんだと気付かされることもありますね。

担当科目

  • 経済政策
  • 国際経済論
  • 経済学入門
  • ゼミナール
  • 学びの基礎
  • 国際金融制度論基礎講義
  • 国際金融制度論特殊研究

研究の成果は社会に発表するるともに教育に落としこんでいく。

研究を社会に発表していく方法のベースは、まずは論文を仕上げることだと思っています。それを、所属する学会が発行する学術誌や大学で発行する紀要などに掲載していきます。ベーシックな方法ですが、研究者としてまず論文という成果に仕上げていきます。研究の成果を、研究者から評価されるということを、まずは大切にしたいと考えています。

そうした成果を作り上げていく中で、学生たちに伝えるべき内容を発見していきます。もちろん、研究の内容それ自体から学生たちに伝えるべき新しい要素を探していくこともあります。ただ、自分で論文を書くという行為を通じて、学生が書く論文やレポートの書き方といった部分の指導に役立てている部分もあると思います。研究と教育という流れの中で、学生たちを育てて社会に送り出していく。それが、大学の教員として私が果たすべき役割だと考えています。