水沼 淑子

人間共生学部
共生デザイン学科
教授

基本情報

水沼 淑子

専門分野 近代日本住宅史
研究テーマ 近代湘南における別荘に関する総合的研究
歴史的建造物の保存活用に関する研究
最終学歴 日本女子大学大学院家政学研究科 修了
学位 工学博士
研究キーワード 別荘 住宅 建築史 住宅史
歴史的建造物の保存・活用
モーガン 住まいと文化

地元・神奈川の住宅をテーマに研究を進める。

大学を出た後、3年ほど建築設計の仕事をしていました。仕事をする中で、施主の奥様に「スペイン風の家がいい」とオーダーされたことがあります。けれど、私たちは四角いシンプルなモダニズムの住宅がいいと教わってきましたから、なんとか彼女を説得しなければと思ったんです。日本の住宅とスペイン風の住宅の違いなどを説明するうちに、相手を説得するツールとして歴史というものの大切さに気づいたんです。それから、大学院に進学して建築史の学びを進めていくことにしました。

建築史の中でも、特に住宅の歴史について研究を進めてきました。その中で研究テーマとして大きいものは別荘について。1戸の建築として捉えるのではなく、文化として別荘を見ていくのです。神奈川県は、近代に入って多くの別荘地が作られました。例えば、茅ヶ崎。茅ヶ崎には明治の歌舞伎俳優・市川團十郎の別荘がありました。その繋がりで、映画監督の小津安二郎がここで脚本を練ったりしていくわけです。他にも、大磯であれば政治家の別荘が多かったですし、葉山には皇族の別荘がありました。それぞれの地域に特色があって、町のあり方にも影響を与えています。

別荘をはじめとして住宅の歴史を扱ううちに、保存運動にも関わるようになりました。近代の歴史ある遺産が失われていく中で、さまざまなご相談を寄せられるようになりました。目標はできるだけ早い時期に湘南の住宅や別荘、邸宅などについてを1冊の本にまとめること。その中では、歴史的な建物をいかに守るかということを提案していきたい。市民の力、行政の力、大学の力、それぞれを出し合って上手く次世代に継承していくシステムを構築できればと考えています。

主要業績

    (著書)
  • 単著『ジェイ・H・モーガン-アメリカと日本を生きた建築家』関東学院大学出版会 2009年6月
  • 共著『神奈川県の近代化遺産- 神奈川県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』神奈川県教育委員会教育局生涯学習部文化遺産課編 2012年3月(同調査委員会委員長として総論他担当)
  • 共著『図説近代神奈川の建築と都市』神奈川県建築士会 2013年3月
  • (研究報告)
  • 単著「茅ヶ崎藤間家住宅と西村建築株式会社」2013年度日本建築学会関東支部優秀研究報告集 2014年3月
  • (論文)
  • 単著「横須賀市における住宅営団の住宅事業に関する研究」人間環境学会紀要第24号 2015年10月予定(投稿済・掲載決定)

実際のモノを見ながら、学んでいく。

ゼミナールでは、できるだけ実際の建築物を見るために学生とともに出かけています。月に1度くらいでしょうか。歴史的建築物の保存や活用をテーマにしていますから、教室の中だけでは成立しません。東京・小金井の江戸東京たてもの園へ出かけて行ったり、2年一度は学生とともに京都に出かけて行くことも。学生たちは、事前学習をしてもらった上で実際の見学に行きます。横浜に戻ってきてからも、何を見て何を発見できたのか発表してもらいます。今の学生たちには、純粋な日本建築はなかなか理解できないようで、課題と格闘していますね。自分たちの生活から、かなり遠いところにあるみたいで。横浜の実業家として著名な原三渓の邸宅など、実際に人が住んでいた場所を見ることで、床の間と次の間の関係など空間の質を理解してもらえればいいなと思っています。

学生たちには、現場で力を発揮できる社会人になってほしいと思っています。パソコンや頭の中だけでなく、現場で見て感じたことを大切にしてほしいですね。雑誌や書籍を使って調査をしてもらうこともありますが、それだけではダメだと思います。実際のものが既になかったとしても、それについて詳しい人から話を聞くことで、より具体的なイメージができるはずです。学生時代に、現場を見て、話を聞くことで、社会に出たときにより力を発揮できる人になると信じて学生たちと接しています。

学生はどんな学生であってもいいと思っています。むしろ、今まで何にも興味を持てなかったような学生が「それおもしろいッスね!」って言ってくれるようになるのが、教える側としては楽しいんです。ですから、学生は選びません。ここで何かを得て、育ってくれればいいんですから。

担当科目

  • 建築・都市計画研究
  • 日本近代住宅史特論
  • 教養ゼミナール
  • ゼミナール
  • 卒業研究
  • 歴史的居住環境の保全
  • 空間・インテリアデザイン演習基礎
  • 居住環境の歴史
  • 人間環境デザイン論
  • 居住と環境
  • 空間・インテリアデザイン演習
  • 研究演習実験
  • 文献研究

地域の歴史的建造物を次の世代につないでいく。

地域での活動として、キャンパスから歩いていける距離にある伊藤博文の別邸でのイベントを続けてきています。この邸宅は、かなりの部分が朽ちてしまっていたんですが、改修作業に私も関わらせてもらって2009年から一般に公開されています。2010年からここで毎年ライトアップイベントをゼミの学生たちと一緒に実施しています。地域の歴史的な遺産をできるだけ多くの人に知ってもらいたいというのがこのイベントがスタートしたきっかけでした。学生たちは、伊藤邸を管理されている横浜市緑の協会の方や、金沢区役所の方と打ち合わせを重ねて準備をしています。おかげさまで、このイベントを楽しみにしてくれている方も増えてきたようです。こうした活動を続けることで、地域にこの遺産により関心を持っていただいて、訪れるようになってほしいです。多くの人が訪ねてくることで、きちんと保存していくべきものだという認識が生まれてくるはずだから。最初は伊藤邸でしたが、他のところでも同様な活動につなげていくこともできるのではないかと考えています。最近では横須賀市追浜地区の空き家対策にも学生たちと関わるようになってきています。これから、どんな方法で展開していけるか楽しみにしています。

また、横浜市をはじめとした神奈川県内の自治体で文化財や景観に関わる委員のお仕事をいただいてきました。私自身も神奈川の出身。自分が研究している内容で、地元社会のために働くことができる。こんな幸せなことはないのだと思っています。地域の歴史的建造物を次の世代につないでいく。それが、神奈川に暮らす研究者としての役割だと思っています。

取材・原稿作成 関東学院大学広報室