富岡 幸一郎

国際文化学部
比較文化学科
教授

基本情報

専門分野 近代・現代文学、哲学・思想
研究テーマ 内村鑑三、カール・バルト
最終学歴 中央大学文学部卒業
学位 文学士
研究キーワード 文学、文芸評論、キリスト教文学、三島由紀夫、川幡康成、鎌倉文士

優れた文学作品では、「感覚的なものを語る」という奇跡が起きている。

私が中学生の頃、三島由紀夫が自決しました。自決したその日の授業で先生が、三島由紀夫について授業をしてくれたんです。それで、家に帰るとニュースでも大きく扱っていて、「なんでこの人が自決なんてしたんだろう」と興味を持つようになったんですね。書店で、三島には珍しいSF的な「美しい星」という作品を手に取りました。ここから三島の作品を多く手にとるようになったんです。高校生くらいになると、文学や哲学などさまざまな本を読むようになっていました。その後、学生時代に発表した文芸評論で群像新人文学賞の評論部門で優秀作を受賞して、その頃から文芸評論の仕事をするようになりました。

文学作品のおもしろさというのは「言葉」にあると思うんですね。同じ出来事を説明しても、作家によって表現は異なってきます。言葉が喚起する力や、言葉そのものの力というものがあると思うんです。三島由紀夫の文章は華麗な文体を持っているし、対照的に川端康成は言葉を絞り込んで、読者の想像力を煽るような表現をしています。文体というのは作家の持っている天性のもの。評論家としては、その部分をきちんと見極め、読者に、素晴らしい作品を紹介する批評を大切にしていきたいと思っています。

優れた文学作品というのは、日常の生活で私たちがなんとなく感じているんだけど上手く表現できないことを上手く表現しています。「感覚的なものを語る」という奇跡が起こっているのです。感覚的なものとは、通常は言葉で表現しにくいものです。しかし、優れた文学作品はそれを表現している。宗教もそれに近いものがあると思います。文学と宗教というのは、私の中では「言葉をつかったもの」として共通しているんです。ですから、内村鑑三の文体の強さやカール・バルトの神学的文体の強さに凄みを感じました。こうした宗教家が残した文章にも言葉としての魅力を感じ、着目しています。

 

主要業積

    (著書)
  • (単著)『北の思想 一神教と日本人』書籍工房早山 2014年
  • (単著)『川端康成 魔界の文学』岩波書店 2014年
  • (編集)『川端康成 傑作短編再発見』講談社 2015年
    (学術論文)
  • (単著)「政治と宗教の狭間」『宗教問題』 2014年

「大学はサファリパーク」。いろいろな人と出会ってほしい。

教育にはマニュアルがありません。だから、学生と接するときは常にケース・バイ・ケースですね。ゼミだって毎年のように、学生たちの空気で様子は変わります。もちろん「この本を読んできなさい」とか「こういうレポートを書きなさい」ということは明確にしますが、学生一人ひとりの関心とか好奇心を伸ばしていくということが大切だと思います。ですから、この学生は何を感じているのか、何に関心があるのかというのを、しっかり見抜いていかないといけませんよね。それぞれの若い人のモチベーションに、こちらがどうやって関われるのかということを常に考えています。

学生一人ひとりがそれぞれ違いますから、どんな人にここで学んでほしいとか、どんな風に成長してほしいというのはあまり考えません。卒業したら、それぞれの生き方がありますから。ただ、その人の学生時代に関わった身としては、卒業した後にパワーを持ってがんばってくれればと思っています。卒業後に再会する学生もいますが、一所懸命にがんばっている学生に会えるとうれしいですね。

学生を型にはめるようなことはしたくないんです。大学教員は、いろいろなタイプの人がいます。私は「大学はサファリパークだ」と学生に言うことがあるんです。教員は動物で、ガーッと来るのもいれば、遠くから眺めているようなのもいます。時に、美しい孔雀もいるでしょう。けれど、サファリパークのバスの乗客である学生たちは、襲われることはないんです。いろいろな教員を見て、楽しんでほしい。卒業した後にも、いろいろな人に出会うはずですから。この学生時代に、楽しみながら多くの人と出会ってほしいですね。

 

担当科目

  • 総合講座(建学の精神を学ぶ)
  • 合同ゼミナール
  • 神奈川観光文化論
  • ゼミナール
  • 卒業研究
  • 日本文化研究
  • 比較日本文化特殊研究
  • 基礎ゼミナール
  • 日本と欧米(日本の欧米理解)

文学館などの取り組みを通じて、地域に文化を発信していきたい。

意識的に受けているわけではないのですが、多くの場所で講演をする機会があります。年間20件以上はあるでしょうか。また、CS放送に定期的に出演していたりもします。講演は、文学に関わることが多いですが、その他にも思想や政治に関わることなど様々な話をしています。そういう場面でいろいろな人と会いますから、講演を聞きにきてくれた方や主催者の方などとお話しすることを通じて、新しいことにたくさん出会います。こうした仕事をやっていくのは忙しいことではあるのですが、私にとっては楽しいことでもあるんですよ。

2012年春には、鎌倉文学館の館長に就任しました。その結果、いろいろな人と出会えて楽しいこともたくさんあります。また、文学館でのイベントなどを通して地域の方に文化を発信していく活動にも取り組んでいます。文学館では、鎌倉にゆかりのある文学者に関する企画を実施しているので、ぜひ訪ねてほしいですね。

また、逗子市の文化振興基本計画案を策定する作業に関わっています。そういう形で行政にも関わるようになりました。地域の文化活動が盛り上がっていくのは、大変おもしろいことだし、よいことだと思うんですね。大学は、図書館や生涯学習講座など、地域の文化に寄与できる機能や人脈があります。大学と地域や出版社などがコラボレーションしながら、歴史ある金沢や鎌倉の文化に寄与できる試みを、柔軟に企画できればと考えています。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課