黒田 篤志

教育学部
こども発達学科
教授

基本情報

専門分野 理科教育学
研究テーマ 科学概念構築過程における教授行動に関する研究
最終学歴 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程 修了
学位 博士(教育学)
研究キーワード 理科教育、科学概念、教授行動、教室談話、授業分析

より効果的な授業のために、教師はどんな言葉を語りかければいいのか

私が小学3、4年生だった時の担任の先生を非常によく覚えています。感性豊かな言葉で、思ったことをはっきりと口にする先生でした。この先生に巡り合ったことで、学校が楽しく何でも言える安心できる場所だと思えたのです。この先生との出会いが、教育を専門とする大きなきっかけとなりました。

大学院修了後は、横浜市内の公立小学校に勤務しました。実践の場で、特に理科の授業に力を入れていました。そして、私が教諭として在籍した最後の小学校が、理科の先進的な研究を創ってきた学校だったこともあり、そこで出会った大学の先生のもとで再び研究をすることになりました。主に教師の教授行動に興味を持ち、現在、ここ関東学院大学で研究をするきっかけとなりました。

よりよい理科の教え方を探るために多くの先生方の授業を分析しています。授業の様子をビデオに撮影し、教師がどんな言葉を子どもに投げ掛けているかとか、子どもたちの発言やどんな描画を書いているのかを調査しています。定量的に、どんな言葉が授業の中で多く使われているかなどを探ることもありますが、繰り返し使われている言葉が、必ずしも子どもたちに伝わっているとは言い切れません。教師が発した言葉に、子どもたちがどう反応しているのかを注意深く観察し、その状況において最善のアプローチは何かという仮説をつくっていきます。従来の研究手法では、仮説を立てた上で、それを検証するための実験を行ったり、データを集めたりする場合が多いのですが、私が取り組む方法では、授業での観察を通じて新たな仮説を生成していきます。この仮説に基づいて、さらに授業を実施し、その効果を見ていくことで、よりよい授業の方法を提案していけると考えています。

研究で得た成果を、多くの先生に伝えることで、小学校での理科授業をさらによいものにしていければと思っています。小学校では、理科が得意という先生は、必ずしも多くないというのが実情です。子どもたちが理科に関心をもって、能動的に物事を考えられる人になってほしいと願っています。そのためには、教える側がどんな言葉を子どもたちに語りかけるのかが重要な鍵になると考えています。

主要業績

    【学術論文】
  • (共著)「対話的な理科授業における教授行動の変容に関する教室談話分析」日本教科教育学会 日本教科教育学会誌Vol.39 NO.1 2016年
  • (共著)「対話的な理科授業における足場づくりの機能の分析-教室談話からの分析-」日本教科教育学会 日本教科教育学会誌Vol.37 NO.4 2015年
  • 【著書】
  • (共著)『みんなと学ぶ小学校 理科 教師用指導書研究編 第一部 理科教育キーワード集 2015』学校図書 2015年
  • (共著)『小学校教員志望学生のための理科教育入門書』東洋館出版社 2013年

子どもたちと謙虚に向き合える先生になってほしい

授業は、子どもたちが「おもしろかった」「楽しかった」とただ思うだけで終わってしまってはいけません。もちろん、楽しい授業は重要ですが、その授業を通じて、「難しいと感じたことも、調べてみたくなった」とか「知らなかったものを、探してみたくなった」と、子どもたちが感じて行動するようになることこそ重要なのです。その為に、具体的な授業をイメージできるように学生たちには教えています。

教える側が単元や授業ごとに、明確な目標をもつことが重要です。実際の授業をイメージしながら、目標を達成するために子どもに何を語りかけたらいいかを学生たちが感じてくれればと思っています。例えば、AさんとBさんが発言したとします。授業を成立させ、教室の子どもたちの関心をより高めるには、どちらの発言をより引き出すべきかを考えてもらうようにします。こうした試みは、もちろん経験でカバーできることも多いのですが、若いうちから意図的に取り組めることが望ましいと思っています。実際の小学校での授業を見ていて若い先生は子どもを褒める場面が少ないと感じる時があります。授業を進めるのに手一杯で、子どもたちの発言をしっかりフォローできていないんですね。そうではなくて、教員を目指す人には、学生のころから授業で子どもたちがどう反応し、どんな言葉を発しているかをよく観察し、その言葉や態度を褒めるなどしながら、効果的に授業を進めることを考えてほしいと思っています。

小学校の教壇に立つことになれば、10年で約1万時間の授業を経験することになります。1万時間の授業を経験すれば、その教師は、すでにエキスパートと呼ばれる立場です。学生たちには、この授業の時間を漫然と過ごすのではなく、子どもたちと謙虚に向き合い、日々の営みから多くの気付きを得られる教師になってほしいと思っています。現場の先生たちは、授業以外にも多くの仕事を抱えていますが、子どもたちと関わる時間を大切にできる先生に成長してほしいですね。

担当科目

  • 理科
  • 初等教科教育法(理科)
  • 理科実験
  • 保育内容指導法・環境
  • 教育実習Ⅰ、教育実習指導Ⅰ
  • 教職実践演習(幼・小)
  • 教養ゼミナール
  • ゼミナール
  • 卒業研究

授業研究会を通じて、よりよい授業を提案

研究を進める上で、かつての先輩、同僚、後輩たちに様々な協力をしてもらっています。実際の授業見学をさせてもらったり、あるいはデータを提供してもらったりと。こうして協力してもらっているからこそ、自分が研究した内容を広く現場の先生たちに提供していかなければという気持ちが強くなるのです。

私の研究は、理科においてよりよい授業方法を提案していくものです。ですから、小学校の先生方による授業研究会などを通じて、教授方法について提言させてもらっています。ある小学校では、5年間にわたって授業研究会での指導をさせてもらっています。その小学校では、目に見えて授業の質が向上しています。私が伝えた内容を子どもたちのために生かしてもらっている様子を目のあたりにすることは、やはりうれしい気持ちになります。私も現場で仕事をしていたときには、先輩教師のアドバイスを受け授業を工夫していきました。誰かにアドバイスを受けることで、先生方も自分自身の授業に対してリフレクションできるようになっていくと思っています。日々の気付き、少しの工夫、とっさの一言で、子どもたちにとって授業はより魅力的なものにできるはずです。それができる先生が少しでも増えていけばと思っていますし、その先生たちの授業を通じて、子どもたちが理科への関心を強くもって、能動的に考えられる人に成長していってくれればと願っています。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課