立山 徳子

人間共生学部
共生デザイン学科
教授

基本情報

専門分野 都市社会学、家族社会学、パーソナル・ネットワーク論
研究テーマ 都市度別のパーソナル・ネットワークとライフスタイル
女子労働力と出生率の社会地図による検討
最終学歴 東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程 満期退学
学位 文学修士
研究キーワード パーソナル・ネットワーク、家族、都市度、社会学

フィリピンのスラムでの体験が、家族や地域を考えるきっかけに

大学時代にフィリピンに留学したことが、家族や都市というものに強く関心を持つきっかけでした。私のホストファミリーは、スラム街のあるお宅。毎日のように、入れ替わり立ち替わり人の出入りがあって、どこまでが家族で、どこからが近所の人なのかわからないような状況でした。核家族で育った私には、そのことが衝撃的でした。けれど、この人が右往左往する環境に居心地のよさも感じたんです。この体験が、都市社会学や家族社会学を通じて、人と人の関わりを深く学んでいこうと思うきっかけでした。

現在は、パーソナル・ネットワーク、つまり個人のお付き合いがどのように形成されているかを研究しています。ただ、どんなパーソナル・ネットワークを形成するのかは、居住する地域によって大きく変わってきます。そこで地域での暮らしと人々の生活との関係にも着目しています。

例えば、子育てをしている母親を対象としたアンケートとインタビューでの調査では、村落に住む母親は身近に自分の親や夫の親など、子育てを手助けしてくれる人的資源が、近場に暮らしていることがわかりました。しかし、都市の郊外に住んでいる母親は、夫以外に親族が身近にいない場合が多くあります。夫は仕事に忙しく、必ずしも多くの時間を子育てに共有できません。そこで郊外の母親の子育て戦略として、いわゆるママ友との関係を強化しようとする傾向が見えてきます。こんなふうにどこに住むかによって、子育てのスタイルも変わってくることがわかってきます。

この他にも、出生率や女性の労働力年齢層などの統計データをメッシュ状に地図に落とし込むことで、地域ごとのライフスタイルを可視化する試みなどにも取り組んでいます。こうした研究を通じて、エリアごとに人々のライフスタイルやニーズが違うことが見えてきます。

主要業績

    【著書】
  • (共著)『パーソナル・ネットワーク論('12)』日本放送振興会 2011年
  • (共著)『新編 東京圏の社会地図』東京大学出版会 2004年
    【学術論文】
  • (単著)「リタイア期の夫婦関係とパーソナル・ネットワーク-都市度による検討-」家計経済研究所『季刊家計経済研究』 2016年
  • (単著)「リタイア期夫婦のパーソナル・ネットワーク-主たる変数とパーソナル・ネットワークとの関連分析-」関東学院大学『人間環境学会紀要』第21号 2014年
  • (単著)「都市空間の中の子育てネットワーク『家族・コミュニティ問題』の視点から‐」 日本都市社会学会『日本都市社会学会年報』第29号 2011年

「変わらないもの」などないことに、気がついてほしい

若い学生たちの多くは、自分の周りの世界だけを見て、今いる状況が当たり前で変わらないものだと考えています。けれど、実社会はそうではありません。講義などを通じて学生が当たり前だと思っている「常識を壊す」ように心がけています。

例えば、日本人の寿命が飛躍的に伸びたことで、私たちは時間という資源をどのように活用するべきかという新たな課題に直面しています。この課題は、少し前の世代には存在しなかったものです。つまり、時代や状況の変化で、自分の身の周りの世界さえ、変化することがあるということです。

ここ数年取り組んでいるプログラムとして、希望する学生とともにカンボジアを訪問しています。アンコールワットで有名な町、シェムリアップ近郊の村で、伝統的なシルクの製作過程を見学・体験します。私たちが暮らす現代の日本社会では、多くの人々の働く場と生活の場は切り離されています。しかし、カンボジアのこの村では女性たちが子どもの面倒を見ながら、シルクづくりに励んでいるのです。働くことと生活することが、密接にかかわり合う場面を目の当たりにできます。こうした暮らし方があることを体験的に知ることで、自分自身の暮らしを見直すきっかけにしてほしいのです。

またこうした学習や体験を通じて、学生たちには自分の暮らしを自らデザインできる人になってほしいと思っています。自分の暮らしと言っても、ただ身の周りだけに目を向けるのではなく、社会のなかで自分自身を捉え、様々な人を生かし合うような力を総合的に考えられる人が期待されています。常識にとらわれることなく、社会との関係を通じて主体的に行動できる人に成長してほしいと願っています。

担当科目

  • 教養ゼミナール
  • 都市生活デザイン論
  • 共生デザイン入門
  • ゼミナール
  • 卒業研究
  • ライフデザイン論
  • 社会生活デザイン演習
  • 社会生活調査法
  • 社会生活学入門

人口減少が進む三浦半島で、何ができるか

先行研究を通じて、郊外では若年女性の都市への流出が目立って増えはじめていることがわかっています。関東学院大学に隣接する三浦半島でも、こうした状況が起こっているのではないかと推測しています。三浦半島は、神奈川県内でも特に人口流出が進行している地域です。これまでに試みてきた、統計データを地図上に落とし込む方法を利用しながら、三浦半島の状況を可視化できる方法を考えているところです。

そして、地域から出ていく人、又逆にそこに留まっている人の理由、そして流入してきた人たちが何を三浦半島地域にもとめているのか調査することで、この地域が活性化していくヒントが得られないかと考えています。

現代社会は都心に人口が集中していますが、都心が本当に生活圏として快適なのかという問いも重要です。高止まりする不動産価格や、慢性的な混雑や保育園不足など都心での生活にはネガティブな要素があることも事実です。また、都市と地方の不均衡は、社会全体の歪みとなって現れはじめています。三浦半島をモデルに研究を進めることで、地域活性化の新たな方法論や仕事と暮らしの程よいバランスという新しいライフスタイルを提案できないかと模索しているところです。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課