兼子 朋也

人間共生学部
共生デザイン学科
准教授

基本情報

専門分野 建築・都市環境デザイン
研究テーマ 気候・風土に対応した生活環境デザイン
温熱環境と人間生活
サステイナブルデザイン
アートとコミュニティ
最終学歴 名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程 修了
学位 博士(工学)
研究キーワード 環境、気候、風土、都市、地域、
コミュニティ、生活、アートプロジェクト

自然環境を取り入れた、サスティナブルな暮らしやまちをつくるために

 大学を卒業後、まずは建築設計事務所に勤務しました。実際の建築物の設計に関わる中で、「建築と環境の関わり合いについて、さらに学ばなければ」という思いが湧き起こってきました。そこで、あらためて大学院に進学。尊敬できる恩師や先輩との出会いの中で、自身の関心領域に没頭する研究者という仕事が選択肢に入るようになっていきました。

 私の研究は、建築や都市のあり方を通じて、サスティナブル(持続可能)な暮らしやまち、環境を考えていこうというものです。機械などの装置を使うのではなく、できるだけ自然環境や気候を活用しつつ、心地のよい環境をつくる方法を探っています。

 例えば、温熱環境。関東学院大学の近郊には海に面した鎌倉という都市があります。ここには、市街地の中央に相模湾から鶴岡八幡宮に向かって、若宮大路という大きな通りがあります。鎌倉幕府をつくった源頼朝によって計画されました。若宮大路が海岸から通じているため、海風の影響で鎌倉市街地はヒートアイランド現象を回避できているのではないかと仮説を立て、実際に学生たちとともに調査を行うと、若宮大路付近の市街地では周辺より気温が低いことがわかりました。私は、この現象がたまたまではなく、800年前に鎌倉で都市をつくろうとした人々は、風を効果的に取り入れることを考えていたのではないかと推測しています。

 日本の伝統的な家屋やコミュニティには、気候や風土を生活環境にうまく取り入れようとした知恵が数多く眠っています。現代社会の建築や都市においては、工業製品を利用しエネルギーを大量に使って環境を整えようとしてきました。それが、サスティナブルと言えるでしょうか?人も環境も共生していくために、日本の伝統的な知恵を再発見・再評価し、あらためて社会に提案していくことが研究者としての私の役割だと思っています。

主要業績

    【著書】
  • (共著)『建築環境工学 ―環境のとらえ方とつくり方を学ぶ―』学芸出版社 2009年
  • (共著)『心理と環境デザイン ―感覚・知覚の実践―』技報堂出版 2015年
  • (共著)『ヒートアイランドの事典 ―仕組みを知り、対策を図る―』朝倉書店 2015年
  • (共著)『日本建築学会環境基準(AIJES-H0004-2014) 温熱心理・生理測定法規準・同解説』日本建築学会 2014年
    【学術論文】
  • (単著)「山陰地方の気候風土に根ざした環境デザイン」日本生気象学会雑誌, 51巻2号 2014年
  • (共著)「隠岐島後の集落に隣接する松林の温熱環境とその利用実態」建築設備工学研究所報,No.37 2014年

私が楽しいと思うことは、きっと学生も楽しいと思ってくれるはずです。

 理論的な学修はもちろん重要ですが、体験的な学びの中でやってみて、感じて、気づくことで、物事の意義や楽しみを学生自身が感じることこそ大切だと思っています。環境や建築、コミュニティづくりといった現場を体験しながら、学生には主体的に学びを実現してもらえればと思っています。

 そうした学びを通じて実現したことが、関東学院大学のキャンパスに隣接する追浜地区での「空き家プロジェクト」。追浜地区が所在する横須賀市は、2013年に人口流出数が日本一を記録しました。「谷戸」と呼ばれる丘陵地帯を中心に、人口減少にともない空き家問題が表面化しています。2名の学生が中心になり、実際にどんな空き家がどれだけあるのかを追浜地区で調査しました。調査では、約130軒の空き家が確認されています。

 調査をする中で、学生が発案したのが「空き家を学生が暮らすシェアハウスに改修してみたい」というアイデアでした。実際の空き家の所有者の同意を得て、近隣の工務店の協力を得たり、行政の補助を受けたりしながら、有志の学生たちが空き家の改修に挑戦。実際に、学生の暮らしの場として利用されています。また、有志で集まった学生は、町内会に協力しながらお祭りなどにも参加しています。

 大学の授業で、住宅の改修案を立てて模型を制作することはありますが、実際の建物に手を加えられることは、まずありません。改修作業に関わることで、実際の住宅を利用して学生たちは多くを学ぶことができました。また、空き家改修に関連して、地域コミュニティに参加することで、近隣住民の皆さんからも多くを学んでいます。2名の学生のアイデアからはじまったこの企画も、第2段、第3段と学生が代替わりしながら継続されています。 こうした体験的な学びは、私自身も楽しんでいます。私が楽しいと思えることは、きっと学生たちも楽しいと実感できることだと思うんです。楽しみながら学ぶことで、学生たちもより多くを得ることができるはずです。

 私自身も、人生を楽しんでいます。学生にも、人生を楽しめる人になってほしいです。まずは、自分からで構いません。自分が楽しいと思えることに、周りも巻き込める人になれるとさらによいですね。周囲を巻き込みながら、地域コミュニティを元気にできる人。そんな人になってくれればと願っています。

担当科目

  • 教養ゼミナール
  • 居住環境の共生デザイン
  • インテリアの環境デザイン
  • サステイナブルデザイン
  • 共生デザイン入門
  • 共生とデザイン
  • 空間・インテリアデザイン演習
  • ゼミナール
  • 卒業研究

地域のアートプロジェクトの連携を通じて、もっと神奈川が元気になれば

 三浦半島の葉山町では、毎年春に「葉山芸術祭」というアートフェスティバルが開催されています。1993年からつづく、同様のアートフェスティバルのなかでは老舗のプロジェクトです。実行委員会の方と知り合う機会があり、どんな人が来場しているかや、アートフェスティバルが社会にどんな影響を与えているかを調査することになりました。

 調査するなかで気づいたのは、神奈川県内に地域が主体となるアートプロジェクトが複数存在するにも関わらず、あまり連携が取れていないことでした。連携することで、お互いに盛り上げていくことができるのではないかと考えたのです。

 そこで、同じ学科内で、アートマネジメントを研究する山﨑稔惠教授を代表として、「相模湾・三浦半島アートリンク」という事業を立ち上げました。この事業は、文化庁からの補助も得て進めています。

 いままで、連携が取れていなかった各プロジェクトの担当者が集まり、共通する課題を共有したり、あるいはその課題解決の方法をともに考えたりしています。この他にも、他地域で行われているアートプロジェクトの成功事例について共同で学ぶ機会を設けるなどしています。県内の他のプロジェクトや、他県の成功事例を知ることで、より自分たちのプロジェクトを俯瞰してみることができるはずです。

 皆、地域内の多様な資源を上手く活用しながら、魅力的なイベントを創造しようとしています。コミュニティの人的あるいは物的資源、自然環境を利用することでサスティナブルなイベントが実施できると思います。これらを通じて、元気のある地域づくりに貢献できればと思っています。大都市に豊かな自然環境が隣接する、ここ神奈川にまだまだ多くの魅力を見つけることができるはずです。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課