渡部 洋

建築・環境学部
建築・環境学科
准教授

基本情報

専門分野 建築構造、鉄筋コンクリート構造
研究テーマ コンクリートを用いた建築物の耐震性向上
最終学歴 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程 修了
学位 博士(工学)
研究キーワード 建築構造、コンクリート、耐震、免震、防災

震災の現場を目の当たりし、建物の安全性向上に尽力しようと決意した。

 私は、中学校から大学院の博士前期課程まで関東学院で学んだ、卒業生です。高校時代は美術部で、建物の絵を好んで描いていました。そんな私に「大学では、建築を学んでみたらどうだ?」と顧問の先生が声をかけてくれたことが、進学先として建築学科を考えるようになったきっかけです。大学に進学し、建築について、本格的に学びはじめました。そんなときに起こったのが、1995年の阪神・淡路大震災。建築を学ぶ者として、現場を見ておかなければという思いもあり、大学1年次の春休みを利用してボランティアに参加したんです。そこで、被災者の人たちと寝食をともにし、地震による建物の倒壊で、大切な者やモノを失った人々の思いを耳にし、建築物の構造について学びを深めようと思いを新たにしたんです。

 建物の構造、特にコンクリート造の建築について研究を進めています。近年では、モニタリングと呼ばれる建物の安全性を判定する方法について、研究を深めている最中です。2016年の熊本地震では、短い期間に立て続けに震度7の揺れが発生しました。こうした際に、最初の揺れの後、建物にとどまっていていいのかどうかの判断は非常に難しいものがあります。モニタリングは、建物の傷みを見つける方法でもあります。建物に、複数の地震計を設置し余震で起こる地震の揺れのリズムを数学的に解析していくことで、傷んでいるかどうかを判断しようとするものです。リズムが小刻みであるほど、建物は健全であることを示しますし、リズムが伸びてくると損傷している可能性があることを示します。損傷しているかもしれない部分に注目することで、建物が健全であるかどうかの判定を速やかに行うことができるようになるはずです。人間の救急搬送の際に用いられる、トリアージという考え方のように、助かる人を少しでも増やしていこうという試みです。

 もちろん、建物の安全性を判断するのは専門家の大きな役割です。ただし、大きな地震を何度も経験してきたわが国においては、防災意識が高まっていますし、少しでも一般の方が建物の知識を持っていることも重要です。ですから、般の人でも理解しやすいようなシステムを作ったり、説明したりしていくことも研究者としての役割だと思っています。

主要業績

    【著書】
  • (共著)『改訂新版 建築を知る: はじめての建築学』鹿島出版会 2014年
  • (共著)『2011年東北地方太平洋沖地震災害調査速報』日本建築学会 2011年
  • (共著)『建築の耐震設計』丸善出版 2011年
    【学術論文】
  • (単著)「リブ付き分割鋼板及び連続繊維シート巻き立て鉄筋併用工法を用いた鉄筋コンクリート造部分架構の実験」『コンクリート工学年次論文集』2016年
  • (共著)「建築構造物の耐震設計と持続的な展開に関する国際シンポジウム<パネルディスカッション>我々が住んでいる地域の地震被害を小さくさせるには」関東学院大学理工学部/建築・環境学部研究報告 2014年

多くの人と関わりながら、建築を考えてほしい。

 学生たちには、大学の実験室で行われていることが、実社会とリンクしているんだということを理解するとともに、それを意識して学んでくれればと日頃から感じています。社会での課題に対して、教育や研究を通じて回答していくことが、大学の役割だと思うんです。ですから、学生たちにも、学ぶことへの目的を持っていてほしいですし、自分が大学でやっていることが、社会に提供できることなんだという思いを持っていてほしいのです。

 そのために、講義形式の授業でも、ただ説明するのではなく、実際のモノを見てもらったり、写真や動画を織り交ぜたりしながら、視覚的に学んでいることの意味を理解してもらえるように工夫しています。

 研究室の学生とは、ともに実験を繰り返すことで、新しい発見をしていければと思っています。指導する側と指導される側と立場の違いはもちろんありますが、学生の思いもよらない気づきにハッとさせられることもあります。例えば、国際会議のために一緒に資料を作っているときに、自分では考えもつかなかったような表現方法を学生が提案してくれることもあります。実験の結果を読み取ることや、それを表現しようとする時、学生の気づきが私にとっても気づきになっているのです。

 建築は、間口の広い分野です。というのも、この世界で暮らす人々は、必ず何らかの形で建物に関わります。住む場所、学ぶ場所、働く場所、訪れる場所。関わり合い方は様々ですが、建物に関わらない人はいないはずです。その分、携わる人も多いのがこの世界です。多くの人と関わりながら、建築を考えてほしいのです。関わる人によって、立場も考え方も違います。ただ、誰かの一言が学生自身のアイデアに結びつくこともあるはずです。

担当科目

  • 理工学概論(B1)
  • フレームの力学基礎(B1)
  • フレームの力学(B2)
  • 力とかたち(B2)
  • 建築構造計画(B2)
  • 建築耐震工学概論(B2)
  • 建築材料実験(B2)
  • 鉄筋コンクリート構造(B3)
  • 建築振動学(B3)
  • 建築構造実験(B3)
  • ゼミナール(B4)
  • 卒業研究(B4)
  • 建築構造力学特論(M)
  • インターンシップ(M)
  • 建築構造研究(M)
  • 文献研究(M)
  • 研究実験(M)
  • 建築構造学特殊講義(D)

防災について、一般の人々とのギャップを埋めていきたい。

 横浜市などで、学校建築の耐震診断改修の評定に、横浜建築設計協同組合の活動を通じて協力していました。これは、公立学校の校舎を耐震補強する際に、その補強が適切であるか判断するという役割です。公共建築は、地震などの災害に対する安全性を考慮することはもちろんですが、あわせてその補強が合理的であるかとか、経済的な点などにも考慮する必要があります。子どもたちが集まる学校の安全を担保するのも、私たち建築の構造に関わる専門家の役割だと思っています。

 また最近では、教員免許状更新講習で講義を担当する機会を得ました。学校の先生方向けの、防災啓発の試みでもありました。東日本大震災後、多くの公立学校で耐震補強が進められました。しかし、日頃校舎を利用している先生方が補強にどんな意味があるのかなどについて、知る機会がこれまでに少なかったようです。特に構造や防災については、専門家とそうでない人々との間に大きなギャップがあることも感じています。こうしたギャップを埋めつつ、防災に対する意識の向上を図っていくことも、役割のひとつではないでしょうか。社会を影で支えていくような役割ですから、やりがいも感じているところです。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課