津久井 学

栄養学部
管理栄養学科
准教授

基本情報

専門分野 食品科学、食品加工(保蔵)学
研究テーマ 植物性粘性物質の性状解明に関する研究
食料資源の有効利用化に関する研究
最終学歴 東京農業大学大学院生物産業学研究科博士後期課程 修了
学位 博士(生物産業学)
研究キーワード 食品加工、粘り、ヤマイモ、モロヘイヤ、オクラ、沙蒿(サーホウ)

なぜ粘るのか?解明されれば、日本の食文化を守ることにつながる。

 大学は、農業大学に在籍していたので、入学当初から実験をする機会はたくさんありました。でも、決まった結果を導き出す学生実験にはあまり魅力を感じませんでした。大学3年生になって、研究室への配属が決まってから思いに変化がありました。研究室は、それまでの学生実験とは大きく異なり、単に教員や先輩から習う場ではなく、指導教員とともに新しい何かを見つけたり、社会の問題や要望に応える場だったからか、研究や実験がとてもおもしろく感じました。当初は、ジャガイモの細胞壁を研究していましたが、新しい何かを見つけようとする営みが、当時の私にはすごく新鮮で、刺激的だったんです。研究室で、学ぶことのおもしろさ、たのしさに気づけた私は、そのまま大学院に進み、研究者としての道を歩むようになりました。

 植物性の“粘り”について、研究を進めています。日本人には、ヤマイモやオクラ、生玉子や納豆といった粘り楽しむ食文化があります。ヤマイモなどは、アフリカなどを主食として食べられていますが、彼らは火を通して食べることからもわかるように、食品に“粘り”を求めていないのです。粘る食品が好きな日本ですが、実は食品がなぜ粘るのか、ほとんど研究が進められていませんでした。科学は進んでいますが、身近な事柄でわからないことがたくさんあります。食品が専門の私にとって、この日本独特の食文化を守ることに意味を感じたのです。

 食品の粘る要因を、さまざまな方法を利用して分析していきます。具体的に研究対象としている食品は、ヤマイモ、オクラ、モロヘイヤです。粘りの要因は、食品に応じてそれぞれ。ですから、まだまだわからないことだらけです。同じ成分でも、温度やpHが少し変わるだけで、まったく粘度が変わってしまいます。試行錯誤の連続ですが、少しずつそれぞれの食品が粘る要因がわかってきました。

 ヤマイモなどを扱う食品メーカーが加工をすることで、粘りが減って困っているというようなことを、大学院時代から耳にすることがありました。粘りの要因となる成分がほとんどわかっていなかった当時、そうしたメーカーの方たちは暗中模索な状況だったんです。では、何が粘る要因なのかを解明することで、そうした企業の人々に協力するとともに、実際に食品を口にする消費者にも研究成果を提供することにつながるのではないかと考えています。

主要業績

    【著書】
  • (共著)『基礎から学ぶ食品化学実験テキスト』建帛社 2014年
  • (共著)『食品加工学と実習・実験』光生館 2013年
  • (共著)『Nブックス改訂 食品加工学』建帛社 2014年
    【学術論文】
  • (単著)「三浦市における未利用食品資源の有効利用化に関する研究(Ⅰ)ダイコンの廃棄状況調査」『関東学院大学人間環境学会紀要第15号』2011年

食品に触れ、食べることで、楽しく学んでほしい。

 栄養学部に入学してくる学生たちは「管理栄養士資格を取得する」という明確な目的意識を持っていますから、まずはそれを達成できるように支援しています。私が担当している授業は、「食品学」や「食品加工学」などで国家試験にも直結する科目です。ですから、授業でやった内容を学生の知識として定着させる必要があります。そのためにも、私自身が毎年の国家試験の内容を分析して、半期で4~5回の小テストを用意しています。

 ただ、試験対策ばかりを重ねていても学生たちもおもしろくはないと思います。実際の食品に触れる機会を、きちんと設けるようにしています。加工食品を製造し食べることで、楽しみながら学んできた内容をきちんと確認してほしいですね。食品を、缶詰や瓶詰にする方法も体験してもらいます。食品加工というのは、食品の最終の形なんです。加工、調理、保存する過程で、衛生面についても理解していなければなりませんから。この栄養学部での学びを、フル活用できる場面でもありますから、学生たちには手を動かしながら楽しく学びを実感してほしいと思っています。

ここを卒業した学生たちには、何らかの形で大学での学びを生かした生活を送ってほしいと願っています。仕事はもちろんですが、普段の自分自身や家族のためにも、ここで得た知識や技術を活用することはできるはずです。また、仕事のことで困ったことがあれば、いつまでも教員と卒業生、あるいは卒業生同士、相談し合える関係でいてほしいですね。実際、卒業生から電話がかかってきて、「津久井先生、これを教えてもらえませんか?」ということもあります。目の前にいる学生だけではなく、卒業生たちもきちんとコミュニケーションをとれる関係を築いていくことも、大学の教員として大切なことだと考えているんです。

担当科目

  • 総合演習
  • 教養ゼミナール
  • ゼミナール
  • 卒業研究
  • 食環境論
  • 食品学
  • 食品の官能評価・鑑別
  • 食品加工学
  • 食品加工実習

研究成果を、いかに社会に還元するか?

 先にもお話しましたが、研究成果を実際の食品メーカーなどに提供することで、「粘り」という日本独特の食文化を継承していくことに繋がっていくだろうと思っているんです。毎年、年に数社は企業から協力依頼をいただきます。例えば、ヤマイモの加工を行う食品メーカーからは、成分の影響で痒みが発生することを避ける方法や粘度を保つ方法などについて、相談を受けることがあります。この他に、オクラの品種改良について助言することもあります。

 また、最近注目しているのが沙蒿(サーホウ)という植物です。これも、外部機関から相談を受けて、活用方法を検討しはじめました。この植物は、中国の西北部に広く分布しています。種子の周りに存在する粘りに強い保水性があることから、砂漠の緑化などに活用できないか検討しているところです。しかし、これまで有効な活用方法が見つかっていなかったため、ほとんど栽培されることもありませんでした。利用価値を出し、産業化することができれば、中国西部で急速に進む砂漠を防ぐ一助になるのではないかと思っているんです。

 この沙蒿を初めて手にした時は「こんなに粘りの強い植物があるのか」と、非常に驚きました。粘り成分の分析し、この植物の粘りの要因がだんだんとわかってきました。この粘りを利用して、増粘剤など開発に繋げられないか検討しています。また、種子から粘りを抽出後は種子中に脂質も豊富に含まれるので食用油脂として活用できれば、栽培が進み環境対策にも有効ではないかと、粘り強く思案を重ねているところです。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課