山本 勝造

経済学部
経済学科
准教授

基本情報

専門分野 国際経済学
研究テーマ  国際貿易論、ゲーム理論、国際政治経済学
最終学歴 神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程 修了
学位 博士(経済学)
研究キーワード 貿易、国際経済、世界経済、国際政治、ゲーム理論

経済学的手法を用いて、国際政治を分析する。

 私が最近取り組んでいる研究は、経済学のメソッドを利用しながら、国際政治の状況を考察しようというものです。外交の場は、当事国による相容れることのない主義主張のぶつかり合いとなってしまい、議論が平行線を辿り、交渉の妥協点を見出せなくなる場面が多々あります。こうした状況を経済学的な発想を用いて定式化することで、我々が直面している様々な国際問題を解決するためのヒントが見つけられるのではないかと考えています。

 経済学的な発想とは、社会現象を数学的に表現しようというものです。経済も人間の営みで、予測が難しいことが多々ありますが、経済学では予測が難しい事象を数学的にモデル化することで、シンプルかつ明確に表現する努力をしてきました。経済学では、モデルを使って社会現象の背後にある論理をあぶり出し、適切な議論ができるように導いていきます。この方法は、経済だけではなく社会問題全般において利用可能なメソッドだといえます。

 例えをお話ししましょう。自由に貿易をしていた2国が、お互いに貿易の恩恵を受ける関係にあったとします。ここで、何らかの理由で一方の国が貿易に制限を加えたとすると、もう一方の国はどのような対応をとるでしょうか?この国は、自分だけが貿易の門戸を開き続けることで相手国のみを利するよりも、自らも貿易の障壁を高めることで自国の利益を守ろうと動くのではないでしょうか。このように、両者が協調的な行動をとることで互いに利益が得られるのも関わらず、相手の裏切りを恐れて互いに排他的な行動をとってしまうことを、経済学では「囚人のジレンマ」という用語で表現します。こうした状況は、経済に限らず国際政治の場でもしばしば発生します。非常に複雑な政治情勢のなかで、何が起こり、どのような選択肢があるのかを経済学的な発想を用いて、シンプルに説明していくことが、私の取り組んでいる研究です。人々の意思決定は複雑で、一見してとらえられるものではありません。ただ、何らかの解決策を提案しようとするとき、数学的にシンプルに表現することは、不毛な議論に陥らないための一つの手法だと考えられます。

 人間社会は、人々の自発的な行動によって過去に成功ばかりを得てきたわけではありません。例えば、日本は、国力に大差のあった米国に無謀にも挑み、破滅的な戦争を経験しました。経済でも、我々の社会は大恐慌を何度も経験してきました。こうした過ちを繰り返しながらも、過去の経験を真摯に省みることで、人間は様々な教訓を学習してきたのです。様々な社会現象を科学的に考察し社会的メカニズムや因果関係を見出すことで、未来に対する提言ができるはず。そんな可能性が、私の研究テーマには含まれています。

主要業績

    【著書】
  • (共著・翻訳)『政治学のためのゲーム理論』勁草書房 2016年
  • (共著)『大学生の教科書:初年次からのスタディ・スキル』関東学院大学出版会 2012年
    【学術論文】
  • (単著)「非民主政下における所得再分配政策と武力革命の同時手番ゲーム」『経済系』 2012年
  • (単著)「Tariff Setting under Incomplete Information and Lobbying as Signals」『経済系』2012年
  • (単著)「Lobbying for Trade Regime and Tariff Settings」『New and Enduring Themes in Development Economics』2009年

物事をシンプルに捉えることで、見えてくることがあります。

 日本では、文系に分類される経済学ですが、経済学を学ぶ上で数学的な議論を避けることはできません。ですから、授業でも単純なグラフや数式を利用して説明します。ここで、「なるほどね」と思える人は、経済学的な考え方に対してセンスがある人だと言えるかもしれません。

 例えば、国際経済。なぜ、貿易をするのか?企業が海外に拠点をつくるのか?為替はどう変化し、どんな影響があるのか?こういった問題を、グラフを用いて解説します。グラフにすることで、ひと目で理解しやすいように単純化するのです。こうした経済学の手法を披露することで、経済学がどんな学問なのかを学生たちに気づいてもらえればと思っています。様々な仮定をおきながら、物事をシンプルかつ明確に表現することは、問題の本質を的確につかみ取るための思考のトレーニングにぴったりなのです。

 経済学の学習は、一般社会の職業にすぐに直結するものではありません。何か高度な資格がとれたり、明確なスキルが身についたりするとは必ずしも言えないからです。その点、学生と接していてジレンマに感じる部分がないわけではありませんが、学生たちには経済学を学ぶことで社会を生きるためのエッセンスを吸収してほしいと期待しています。課題の要因を見極め、その対策を提言する経済学的な思考法は、どんな職業に就いたとしても必ず役に立つ場面が出てくるはずです。

 大学に入学する時に、明確な目的意識を持てないままで進学する人もいるでしょう。けれど、最低限何かを「学びたい」という思いを持っていてください。その思いを持っていれば、大学での学びや生活のなかで、何かを見つけることができるはずです。そして、その思いは、学びへの姿勢に表れてきます。前向きに学ぼうとする人が、何かを見出すことができるところが、大学という場ですから。

担当科目

  • 経済学入門
  • 国際経済学
  • 国際経済事情
  • ゼミナール
  • 基礎ゼミナール
  • プレゼミナール
  • 国際経済学特殊講義(大学院)
  • 国際政治経済の数理分析(大学院)
  • 演習(国際経済学)(大学院)

経済学的手法を利用して、身近な問題を考察したい。

 研究内容を学術論文や研究書にまとめて、経済学者としての業績を積み重ねていくことが、まずは自分の仕事だと思っています。ただ、学会のなかに引きこもってしまうと、学者同士でないと通じない言語の世界から抜け出せなくなってしまうのではないかという危機感も、同時に持っています。特に、経済学は抽象的な社会を対象とし、しかも数学を用いる学問ですから、経済になじみのない一般の人々からは、少し敬遠されがちであるという印象を受けます。

 ですから、研究内容をわかりやすく説明し、一般の方に知ってもらったり、活用してもらえたりするような仕組みを作っていくことも、経済学者の大事な仕事であると私は考えます。先に述べたように、経済学とは経済現象に限らず、社会問題全般に応用が効く学問です。この経済学の特性を利用して、我々の身近にある問題をできるだけ平易な言葉で解説した書籍などが発表できればおもしろいなと思っているところです。

取材・原稿作成 関東学院大学広報課