ご存知の通り、本学の建学の精神はキリスト教の教えに根ざしています。「人になれ 奉仕せよ」という校訓が示すのは、生涯をかけて教養を培う人間形成に努め、人のため、社会のために尽くすことを通して己の人格を磨く姿勢。キリスト教人間学インスティテュート(ICH)は、その精神を体現すべく誕生しました。
ICHが目指すのは、キリスト教への「信仰」を促すことではありません。ICHは、キリスト教の「精神」の理解を深めることで、学生一人ひとりが専攻する領域に複眼的な視点を加え、総合的な知を修得することをめざします。
日本で生まれ育った人の多くにとって、キリスト教をはじめとする宗教について考える機会はそう多くはないでしょう。しかし、デジタル技術の発展によりグローバル化がますます進展するこれからの社会で、互いに尊重し合える平和な社会を作っていくためには、宗教、なかでも約20億人ー世界の3人に1人が信仰するキリスト教への理解は欠かせません。その理解に基づき、世界の異なる文化や価値を知り、多様なものの見方や考え方を身につけることによって、ひとまわり大きな「人間力」を身につけてほしい。その想いこそ、ICHが「キリスト教学インスティテュート」ではなく、「キリスト教人間学インスティテュート」と名付けられた所以です。
宗教は、歴史的に大きな紛争や対立ももたらしてきました。しかし、これからの時代は、人種や性差はもとより宗教の違いをも超えた多様な価値観が尊重される社会を作っていかなければなりません。そこで求められるのは、他者に共感できる力をベースに、人のため、社会のために尽くすことを通して己の人格を磨き続けることができる人。言い換えればそれは、「人になれ 奉仕せよ」という校訓を体現するサーバント・リーダーに他なりません。それこそが、ICHで身につけてほしい学びのエッセンスです。
ICHで学ぶことは、専門領域で学ぶ知見をさらに飛躍させて人間力を磨く大きな機会であり、その機会は全学生に開かれています。ICHは、あなたの「学びたい」という気持ちを全力で支えます。
キリスト教の歴史と思想を概観し、聖書の思想及びキリスト教に関する基本知識を身につけるとともに、特にプロテスタンティズムが近代市民社会の形成に果たしてきた社会的・政治的・文化的意義について学びます。
各学部に設置されている一般教養科目の中から、ICHが指定する科目を選択し、履修。より広い視野からキリスト教を捉える力を醸成することを目指します。
キリスト教的人間観・価値観をさらに広く学ぶために、各学部で開講されている既存の15科目に加え、ICH提供科目によって構成される以下の4科目から構成されます。ICH提供科目のうち、1科目は選択必修となります。
キリスト教死生学 | キリスト教と心のケア |
フィールドワーク1 (沖縄 平和研究) |
フィールドワーク2 (長崎・五島) |
人間とはいかなる存在であり、いかに生きるべき存在か。神学者やキリスト教思想家たちは、それらをどう説明しているか。知識の習得に留まらず、積極的に社会に貢献する心を培います。
聖書に基づくキリスト教の思想が提示する具体的な「生きる道」としての「倫理」について理解と思索を深めることを目指します。
平和と人権に関する現代の諸問題(紛争や対立、差別や貧困など)を取りあげ、キリスト教の観点から平和構築の思想と実践を探求します。
現代社会において、政治、社会の様々な領域、倫理的諸問題の中に溶け込むカタチで存在する世界の宗教文化を比較し、それらの営みを学的に理解することを目指します。
ICH提供の4科目のうち、2科目にフィールドワークを設定。希望者は、4回の事前授業(座学)を受講した上で、3泊4日の日程で、沖縄、あるいは長崎を訪れ、現地調査や取材を通して課題解決を探求することが可能です。
甚大な戦争被害とその後の占領、米軍基地問題など、多くの課題を抱える沖縄を訪れることによって、平和について総合的に考え、平和を実現するための課題と方法を探求します。
日本におけるキリスト教の伝来と迫害の歴史を学び、日本の近代市民社会形成に向かってキリスト教の果たした役割や貢献を知ると共に、現代日本社会のあり方や歩むべき道等について広く考察を深めます。
宗教文化士とはなにか
「宗教文化士」とは、宗教文化教育推進センター(Center for Education in Religious Culture: CERC)が、キリスト教やイスラームといった世界に広がる宗教、また仏教や神道といった日本社会に深く根付いている宗教の歴史と現在の状況について、大学のカリキュラムを通して学ぶことで、広い視野と深い理解を持つ人に対して認定する資格です。
観光業、公的機関、学校などで宗教知識を活かす場面は今後ますます増加すると思われ、宗教文化士資格は重要な意味を持つようになります。
受験資格を得るためには
到達目標を達成して認定試験の受験資格を得るためには、 下記の表に配置した科目のうち(1)(2)(3)から最低2単位(1科目)ずつを取得 し、かつ全体で16単位(8科目)を取得する必要がある。
但し12単位(6科目)を取得していれば、残りの科目を履修中でも受験できる。大学2年の秋学期から受験が可能になり、卒業後2年以内まで受験資格は有効。
なお、表にあるすべての科目は1科目2単位である。
到達目標 | (1)教えや儀礼、神話を含む宗教文化の意味について理解ができる。 | (2)キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教、神道などの宗教伝統の基本的な事実について、一定の知識を得ることができる。 | (3)現代人が直面する諸問題における宗教の役割について、公共の場で通用する見方ができる。 |
原則一年次に履修 | キリスト教学 | ||
一年次から履修可能 | 宗教文化論 音楽とキリスト教 比較宗教学 キリスト教と欧米文化 キリスト教と近代日本文化 |
聖書の思想 イスラム社会 キリスト教史(バプテスト史) 旧約聖書の思想 新約聖書の思想 キリスト教の成立 キリスト教の発展 |
キリスト教と現代 キリスト教と現代社会 キリスト教と現代思想 キリスト教と教育 キリスト教学(技術者としての倫理) |
二年次以降履修可能 | 宗教学 | 日本神話の世界 | キリスト教人間学1 キリスト教人間学2(倫理) キリスト教平和学 キリスト教死生学 キリスト教と心のケア |
試験対策講座を正課外で、チャプレンが担当するほか、受験のための相談に乗ります。