宇宙の高エネルギー現象を解き明かす
X線分光撮像衛星“XRISM”。
JAXAがNASAや国内外の大学など
世界中の研究機関とともに開発した
プロジェクトに、
理工学部 数理・物理コースの中嶋大教授は
X線CCDカメラ開発チームの責任者として
参加した。
- 1−1
- Project Story①
「約5年をかけて新たな衛星打ち上げる
プロジェクトに参加。」 - 1−2
- Project Story②
「地上実験データを学生ではなく、
仲間として解析を進めていく。」 - 1−3
- Project Story③
「2023年にXRISMは宇宙へ。
研究は新たなステージで続いていく。」 - 2−1
- Project Interview 学生
- 2−2
- Project Interview 担当教員
- 2−3
- Project Interview 企業担当者
約5年をかけて
新たな衛星打ち上げる
プロジェクトに参加。
JAXA XRISMプロジェクトは、JAXA特任准教授(当時)でもある中嶋教授が取り組んでいたプロジェクト。中でも中嶋教授が担当したのは天体のX線画像を広い視野で得ることができる軟X線撮像装置「Xtend」のCCDカメラの開発。中嶋研究室の学生たちも本プロジェクトに参加。搭載したときにカメラが正常に作動できているかを、自分たちが開発したプログラムを用いて確認。開発期間の約5年をかけて、先輩から後輩へと受け継がれながら長期の開発に携わっていった。
地上実験データを学生ではなく、
仲間として解析を進めていく。
学生たちが主に行ったのはCCDカメラの地上試験データの解析。JAXAから届けられるデータを、プログラムを使用して様々な観点から数値を視覚化。データが正しく取得できているか、異常は許容範囲のものか、プログラムを改良してよりデータ解析を高められないかを試行錯誤する日々だった。解析結果はJAXA、NASAをはじめ世界中の大学・研究機関で使用され、数理・物理コース4年生の福田将大さんは「OUTSTANDING CONTRIBUTION AWARD (特別活動賞)」を受彰した。
2023年にXRISMは宇宙へ。
研究は新たなステージで
続いていく。
2023年9月7日に、CCDカメラを搭載したX線分光撮像衛星「XRISM」はH-ⅡAロケット47号機に載せて打ち上げられた。学生は自分が携わった人工衛星が宇宙に行くという貴重な体験ができた。しかし、これで終わりではなく、研究は始まったばかり。XRISMから膨大なデータが毎日送信されてくる。CCDカメラの健康診断や天体画像の解析が始まった。「宇宙からのX線を観測することで、例えば太陽のような恒星がどのように誕生するのか、その現場を探ることができます。また、大質量の恒星が一生の最期に爆発するときに、私たちが住む地球やここで暮らす生命体を構成する元素がどこでどのようにつくられたのか、その手がかりが得られます」と中嶋教授は語る。宇宙を解き明かす研究はまだまだこれからも続く。
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自分の手で解析した
データ一つ一つが
宇宙につながることを実感。理工学部 数理・物理コース4年
福田 将大さん※学年は取材撮影時のものです。
大学入学時は物理分野を中心に学んできて、人工衛星に興味を持ち、中嶋研究室に入ったことがきっかけで本プロジェクトに携わることができました。データ解析は個人の作業も多く、自分との戦い。JAXAから届くデータを、プログラムを使って数値化。最初は何度もこれで大丈夫なのだろうかと先生に相談しながら進めていました。正直、心が折れそうな時が、何度もありましたが、それでも続けられたのは自分の携わった人工衛星が宇宙に実際に行くという期待があったから。2023年9月の打ち上げに立ち会いはできませんでしたが、無事衛星が宇宙に飛び立った時は、本当に貴重な経験ができたなと改めて感じました。
理工学部
数理・物理コース4年
福田 将大さん※学年は取材撮影時のものです。
理工学部
数理・物理コース
教授 中嶋 大-
自分の研究成果が
宇宙に飛び立つ感動を
学生に実感してほしい。理工学部 数理・物理コース
教授 中嶋 大私の研究室では一つルールがあって、それは「中嶋先生」というように先生と呼ばないでほしいといっています。それは「何でも教えてくれる人」ではなくて一緒にプロジェクトを進める仲間でありたいと思っているから。例えば今回のXRISM開発を例にとっても、もちろん全体も細部も私たちは理解していますが、学生には自分のパートのプロフェッショナルになってほしいと思っています。すると最初は手探りでも、どんどん学生たちから「ここはこの方が良いのではないか」という意見が出てきて、私自身も気づかされることが多かったです。衛星を打ち上げる場を経験できるというのは、私たち大学の教員でもなかなかない機会。自分が携わったXRISMが宇宙に飛び立つということは学生には貴重な経験になったと思いますし、これからも宇宙に興味がある学生に向けて、自分の携わったものが宇宙に飛び立つ経験をもっと提供してきたいと考えています。
JAXAメンバーも学生のみなさんも、
XRISM開発を成功させるための
誰も欠けてはいけない仲間でした。今回のプロジェクトは多岐にわたるチームで構成され、多くの大学の学生が参加しました。誰が欠けても成功できなかったと思っています。関東学院大学の学生を見ていて、本当にまじめで、逆にJAXAのメンバーの気が引き締まる感じでした。データ解析をあげていただくときも、学生としてではなく、本当に仲間として接していましたね。私自身も、学生時代に今回のような衛星やカメラを開発するという経験をして、面白いなと思い、今こうしてJAXAにいます。これからも、宇宙に興味を持つ学生のみなさんと、プロジェクトをご一緒できるのを楽しみにしています。
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
XRISMプロジェクトチーム
Xtend インスツルメントマネージャー
冨田 洋さん(写真右)「宇宙が好き」という気持ちから、
自分の興味を広げる良いきっかけに。今回、最先端のX線CCDカメラなどを搭載したXRISMを打ち上げたことで、例えばブラックホールや銀河団の構造など、宇宙に関する謎を解き明かしていく新たな一歩を踏み出すことができました。いま日本でも、小型の人工衛星やロケット開発など、宇宙に関するベンチャー企業が次々に出てきています。宇宙開発は、ビジネス面や技術面、その中にも細分化された様々な分野が総合して成立しています。宇宙が好きという気持ちを持っている学生のみなさんには、自分の興味のある分野から今回のようなプロジェクトに参加して、さらに興味を広げて成長することを期待します。
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
XRISMプロジェクトチーム
プロジェクトマネージャー
前島 弘則さん(写真左)※肩書は取材撮影時のものです。