心配された昨夜の雨も上がり、今朝は、打って変わって、素晴らしいお天気となりました。桜の花びらも枝に留まってくれて、皆さんの入学に、まさに花を添えてくれました。 関東学院大学の11の学部、大学院博士前期課程、修士課程、博士後期課程の5つの研究科に入学される、合計2686名の皆さん。皆さんを心から歓迎します。ご入学おめでとうございます。
また、本日ご臨席くださいましたご父兄の皆様、ご関係の皆様、このたびはご子息様、ご息女様のご入学、誠におめでとうございます。関東学院大学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。私ども関東学院の教職員も、新しい学生を迎えて、まさに身が引き締まる思いです。皆様のお子様方が、本学で学び、立派な青年へと成長していく過程を、どうぞ温かく見守ってあげてください。そして、時に背中を押し、時に叱咤激励してくだいますよう、お願い申し上げます。
はじめに、大学院博士前期課程ならびに修士課程に入学される皆さん。皆さんの多くは、関東学院大学で学士の課程を終え本学の大学院に進学されとことと思います。学部4年間での学び、とりわけ研究室やゼミに所属されて以降の、学生生活や研究活動に大いに満足されたからこそ、より一層「学びの質を高めたい」「より実践的な知識や技術を身につけたい」「自分自身を高めたい」そう希望され進学を決意されたことと思います。4年間で、誰かに出会い、何かを知り、何かを見つけて、進学を決意してくれたのであれば、私たちはこんなにうれしいことはありません。本学以外の大学を卒業された皆さんにおかれても、関東学院の研究者、研究成果、そして教育・研究の場に魅力を感じ、幾多の大学院のなかから本学の大学院を選ばれたことと思います。大いに歓迎したいと思います。研究者、技術者、実務家の卵として、最も実力と地力がつくのが、この2年間です。指導教員のもとで、学部生ではできなかった経験を重ね、大いに研鑽を積んでください。そして常に大学に刺激を与える存在であってください。皆さんの活躍が大学を活性化させ、それが本学の研究ポテンシャルやアクティビティを高めることは言うまでもありません。そして、学部学生が皆さん大学院生の背中を見て成長していくことに、喜びを感じてください。私たちもまた、皆さんが今、抱いている希望や期待、描いている将来の実現に十分に応えられるよう、指導教授としてだけでなく、研究者として、一人の社会人として、時には厳しく、そしてともに研究し、協力し合っていきたいと思っています。大学院の課程は、ただ講義科目を修得し、修士論文を完成させ、学位を受け取ればよいものではありません。大学院での経験を経て、皆さんが研究者、技術者としてだけでなく、人間的にも大きく成長し、皆さんの人生が大きく展開していくことを期待しています。
次に、大学院博士後期課程に進学された皆さん。皆さんは、ご自身の研究生活の集大成として、あるいは、若き研究者として自立するためのスタートラインとして、それぞれの研究テーマをより深く突きつめるために、人生の貴重な期間、あるいは、青春時代の最も大切で楽しい時間のすべてを託しても悔やむことのない、生涯の師と仰げる指導者を見つけたからこそ、後期課程に入学されたのだと思っています。何の迷いもなく、思う存分、研究に没頭する生活を送ってください。苦しい研究を、どうぞ楽しんでください。後期課程はカリキュラムに沿った学びをするような場所ではありません。まさに指導教授と、研究者としての1対1の切磋琢磨の場です。でも、そこには愛情に基づく人間的な繋がりがあるからこそ、課程博士の意味があると思っています。私たちもかつて大学院生時代に、そうした生活を送ってきました。研究者の仲間として大いに皆さんを歓迎し、応援していきたいと思います。
さて、あらためて関東学院大学の11の学部に入学された新入生の皆さん。今日は、皆さんが、新しい一歩を踏み出す記念すべき日です。「大学」という新しい学びの場所に、「大学生」という言葉の響きに、そして何より、関東学院大学で過ごす「これからの4年間」に、皆さんはどんな希望と期待を抱いているでしょうか。「何のために大学に入学するのか」という問いは案外難しいものです。ですから、「大学に入って何をするのか」を、この記念すべき日だからこそ、自分自身に問いかけてみてください。
皆さんが今、「夢」を持っているとしたら、その夢を実現するための「学び」を真剣に考えてください。今、「夢」と言われてもすぐに思い浮かばないならば、この4年間で、それを言葉にできるようになるためにも、「学ぶこと」が重要です。ここで皆さんにくれぐれも申し上げたいのは、この「夢」とは決して「将来の職業」や、ましてや「就職先」などといった、皆さんの近未来のことを指しているのではありません。高等学校では「なりたい職業」「就きたい仕事」を思い浮かべて、進路選択を迫られた方も多いかもしれません。もちろん、それも現実的な一つの方法ではあるし、そこに「社会貢献」といったキーワードが含まれていれば、皆さんにとって十分な志望動機になったことだと思います。でも、大学生になったからこそ考えるべき「夢」とは「人としてどのように生きるのか」「どのような社会の一員になりたいのか」「どのように人や社会に貢献するのか」ということであり、それ以前に「自分はどのように成長するのか」ということです。
それを求める過程で、自ずと職業や仕事も決まってくるでしょうし、そもそも、職業や仕事に関わらない「生き方」を求めることだとも言えるでしょう。少し抽象的になってしまいましたが、今ここにおられる、ほとんどの新入生の皆さんは、明確な夢を語れなくて当然ですし、そのことを気に病む必要はありません。しかし、大いに「期待と希望」を語ってほしいし「夢」を見つけるための努力を惜しまないでほしいと思っています。大学に入ったらこんなことがしてみたい。大学でこんな勉強がしてみたかった。そう思えることは何でも挑戦してください。とにかく、前に向かって一歩進んでみる。皆さんの目の前の世界が必ず開けてくるし、一歩、進んだことによって視界が広がり、次に進みたい方向が少し変わってくるかも知れません。それでいいのです。可能性は無限にあるのです。
皆さんはこれから、今、想像されているよりも遥かに沢山の経験をすることになります。将来、その経験が「素晴らしいできごと」だと実感できるかどうかは、まぎれもなく、これからの、皆さんの気持ちや心がけ次第なのです。どうぞ、思う存分「大学生としての生活」を謳歌し、大いに学び、教養を身につけ、見識を深め、知識や技術を修得していただきたいと心から願っています。
先日3月24日に、今日と同じ、この国立大ホールにて、2018年度の卒業式・学位授与式が挙行されました。私は、その式辞のなかで「学び」を通して充実した学生生活を送った卒業生に対して敬意を表しました。その一方で「もし、在学中の学びを『少し疎かにした』と感じている人がいるとして、その人が、『社会に出るのを機に、心機一転、挽回しよう』と決意しているのであれば、それはちょっと都合がよすぎる。今を疎かにする者にとって、挽回のチャンスはそうそう来るものではない。チャンスの到来が平等なら、それまでに努力を重ねた意味がない」卒業生を送る式辞としては少しばかり厳しい言葉でしたが、そのように申し上げました。
高等教育機関である大学の場合、その先に見えているのは「社会」です。そこでは否応なしに、皆さんがこれから身につけるべき力、本当の意味での「実力」で自身の将来を切り開いていかなければなりません。これは現実なのです。どんなに少子化が進んでも、どんなに就職状況が好調でも、そのことは変わりません。ですから、この4年間は、その実力をつける大切な期間だということを決して忘れないでください。ただし、この大切な期間を「準備期間」と捉えてしまうと、まるで条件反射のように、次のステップである「就職」のための「準備」と誤解してしまい、ともすれば就職に有利な資格や検定を探してみたり、どんな科目の勉強が社会で役立つのか、そんなことばかりを考えてしまう、とてもつまらない学生生活になってしまいます。
「本学は1年生からキャリア教育を推進しています」などといった宣伝文句に踊らされたり、騙されてはいけません。それは「準備」であって、「学び」ではありません。仮に特定の資格と直結している学部であったとしても、大学生活を就職という出口だけを意識した準備の4年間にしてよいはずがないのです。
実力とは決して、少しばかり計算技術に長けているとか、プレゼンテーション能力が優れているとか、そうしたテクニックを指しているのではありません。もちろん、それらは社会に出てから、皆さんの助けになるかもしれません。しかし、それよりも、大学生としての教養、見識、知性を一歩ずつ、着実に身につけ、磨いていくこと、これに勝るものはないのです。それは「この本を読んだから」とか「この講義を受けたから」といったように、一朝一夕に身につくというものではなく、むしろ、物事に対して真剣に向き合い、知識や技術を修得しようとする継続的な行動を通して、初めて得られるものです。具体的に「どの知識」などと指し示せるものではありません。
ただ言えることは「『学ぶ』という行動の意義」「学ぶことの楽しさ」を味わえることができた時に初めて大学生として、その年齢に見合った見識や知性が備わり、それが皆さんの「顔」に現れてくるものだと思っています。知性は間違いなく、皆さんの態度や表情に現れるものです。皆さんは大学生として大いに知的でなければならないのです。
先ほど「学ぶ」という行動の意義という少し回りくどい言い方をして、あえて「学ぶ意義」とは言いませんでした。「この学問を学ぶ意義は何ですか」「この講義は何の役に立つのですか」などといった愚問の解決のために、時間を費やしてはいけません。納得できる答えを得ることができれば「学ぶ価値があり」と判断するけれど、納得できなければ学ばない。大学生になったのだから、自らの学びを切り開いて行く、いや切り開いていけるのだという、誤解と過信。そして、自己決定とか、自己責任というある種、心地よい言葉に惑わされて、簡単に自分の未来を捨ててはいけません。その学問が役に立つのか、役に立たないのか、これから学ぶことがどんな価値を持つか、そこからどんな将来が開けるのか、それが分らないからこそ、学ぶ必要性があるはずです。
学ぶことによって、皆さんにどのような変化がもたらされるのかは、一定程度学んでからでなければ、推し量ることはできないはずです。18歳の皆さんでは計ることができない価値があるからこそ、学ぶ意味がある。だから学びを疎かにしてほしくないのです。学ぶという行動の意義を理解して欲しいと思っています。
もちろん、大学生活の重要な要素として、新しい友人との出会いやクラブやサークルといった課外活動なども、大いに大切にしてほしいと思います。大学生になって、やりたいこと、挑戦したいことは、皆が様々ですし、今、例に出したような、誰もが思いつくものだけだとも限りません。学生としての見識の範囲内であれば、何にでもチャレンジできる。それが皆さんの特権ですし、それによって皆さんの大学生活は大いに充実すると思っています。
ただし、そうであったとしても、仮に、学業以外の明確な目的があって入学したのだとしても、それでも「学ぶ」ということを抜きにした大学生活などあり得ないし「学ぶ」ことを無視した、「学ぶ」ことから顔を背けた大学生活からは、本当の満足感は決して得られません。真剣に「学びたい。知識を得たい」と望んでいる学生にとって、その目的が叶うところ、真剣に「学びたい」と思う学生の目標を第一に優先するところ、それが大学なのです。学びに対する欲求の前では、高校までの学習歴の違いや経験値の差すら、大きな問題ではありません。
だからこそ、過激な意見に聞こえるかも知れませんが「大学で何かを得たい」「大学で真剣に学びたい」という学生や、それを応援しようとする大学の雰囲気に対して、もし「ばかばかしい」「くだらない」と嘲り笑うような学生がいるとしたなら、その者は、今すぐこの大学から去るべきだと考えています。
私たちは最高のスタッフを揃えて、この「学ぶ環境」を最大限に大切にすることをお約束したいと思います。物質的な満足度は人それぞれですが、「知的欲求が満たせない」もし皆さんがそう感じたなら、遠慮なく私や、ここに並ぶ教員に申し出てください。
最後に、本学はキリスト教に基づく教育と、建学の理念を大切にする私立大学です。皆さんはこれから,関東学院の初代院長、坂田祐先生が掲げた校訓「人になれ 奉仕せよ」という言葉に、さまざまな場面で触れることになると思います。
校訓である「人になれ 奉仕せよ」。キリスト者としての坂田先生の言葉の意味とは別にして、高等教育機関として、この校訓にどのような意味を込めるのか、我々はいつも考えています。「人になれ」の「人」の定義とは、人に「なる」とは、どういうことを指すのか、そもそも何をもって「人」になれたと言えるのか、「奉仕せよ」の「奉仕」が意味することは何か。この答えは関東学院大学の教育のなかにあります。皆さんもこの意味を、ゆっくりと時間をかけて考え、皆さんなりの答えを導いてほしいと思います。
人になるとは単に人間として成長するという意味には留まりません。奉仕とは、単に社会奉仕を意味しているわけではありません。私たちは、いつの日か、人や社会に貢献し得る人材にならなくてはならない。それは、決して大学4年間の努力だけで叶うものではないかもしれない。それでも、真剣に学び、身に付けた教養や知識・技術を社会に生かすべき機会は必ず訪れます。その日が来るまで、社会に貢献できる人材になる日まで、謙虚に学び続けてほしい。あるいは、学びは永遠に続くのだと認識するときまで、真摯に学び続ける人であってほしい。私自身は「人になれ 奉仕せよ」を、そのように理解しています。
大学で過ごす4年間は、案外と短いものです。誰に出会うか、何に出会うかで、皆さんの人生は大きく変わります。本当に変わってしまうのです。この期間にあなた自身がどれだけ密度の濃い学生生活を送ることができるのか、そのことによって、また一つ、また一つ、皆さんの未来の扉が開いていくものだと信じています。私たちは、皆さんが素晴らしい未来を切り開くことのお手伝いをするつもりです。
今日がその第一歩です。今日のこの日を祝して、あらためて皆さんにお祝いの言葉を申し上げたいと思います。皆さん、ご入学おめでとう。これから一緒にがんばりましょう。
関東学院大学 学長
規矩大義(きく・ひろよし)
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