建築・環境学部の粕谷淳司准教授の研究室が、岩手県花巻市の社会福祉法人悠和会が計画していたワイナリーのプロジェクトに参加しました。
花巻市は2016年11月に、内閣府より構造改革特別区「花巻クラフトワイン・シードル特区」の認定を受け、小規模な事業者でも酒類製造免許の取得が可能になりました。粕谷研究室は悠和会からの相談を受けたのち、実際に現地へと足を運び、プレゼンテーションに向けた図面・模型やコンピューターグラフィックスによる内観外観のシミュレーションなどの作成を、約4か月間かけて行いました。そして2018年5月に、東北では初めてのモデル事業として「日本財団はたらく障害者サポートプロジェクト」に採択され、助成を受けることが決まり、実施設計と現場施工を経て2019年3月に完成しました。
ワイナリーのデザインコンセプトは「下屋(げや)付きの農家」。開放的な下屋を持つ建築物は、地方の人々の生活を支える作業の場として、時に農具や車を雨雪から守るためうまれた必要性と、最小限の部材で必要を満たす工夫・合理性が込められた原型です。地域の風景とともにあり、歴史と現代性をあわせ持つ原型的な姿をもったワイナリーが完成しました。
このワイナリーには、障がいの有無に関係なく誇りをもってワイン造りに取り組んで欲しい、醸造の勉強をしたい人や、観光客に足を運んで欲しい、そこで働く人々に支えられながら、ワイナリーが地域コミュニティーの中心となり、美しい風景の中でその姿を成長させて欲しいという願いが込められています。
このプロジェクトには、2019年春に大学院工学研究科博士前期課程を修了した金林桂子さんと湯田直哉さんが、学生たちの中心となり携わりました。
プレゼンテーション準備に取り掛かる前、現場に足を運んだ金林さんは、「不安もありましたが、模型や図面で検討していた物がどのように完成していくのか楽しみな気持ちでした」とプロジェクト参加当時のことを振り返ります。
「ワインやワイナリーの知識が全くないところからのスタートだったので、まずは赤ワインと白ワインの製法の違いを学びました。そしてどんな設備を導入するのか、予算はどのように折り合いをつけるのかを研究室の仲間と検討していった日々は今でも忘れられません。また、着工日が確定している中で、作業のテンポも早く、スケジュール管理に苦労しましたが、失敗を経て、責任感が身につきました」と話しました。
ともにプロジェクトに携わった湯田さんは「学生時代に、貴重なプロジェクトに携わることができる機会だったので、参加するからには素晴らしいものを考えたいと前向きな気持ちで臨みました。設計段階において、国内外の設計事例を参考にしながら搬入から搬出までの作業動線や予算などを現実的に考えていくことが難しく大変苦労しました。ですが、プロジェクトメンバーとしての責任感や自己管理能力の大切さを痛感しました。現在は、設計事務所に勤め、クライアントのヒアリングや設計プランの作成等を行っています。今回のプロジェクトの一連の流れは、現在の仕事の原点となっているので、プロジェクトに参加できたことに大変感謝しています」と話しました。
粕谷准教授は、「近年、特に地方では、人口減少により後継者がおらず放棄された畑の復興や、障がい者の就労問題があります。社会貢献につながることや、障がい者と健常者が一緒に働くことのできる環境を作ることを視野に入れた、社会的な意義のあるプロジェクトに大学の研究室として参加できたのは、学生にとっても、私自身にとっても大変良い経験だったと思います」などと語りました。
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