2021年に生誕200周年を迎えるフランスの作家 ギュスターヴ・フローベールの研究者として国際的に活躍する法学部の大鐘敦子教授が、スイスのDroz社より科研費補助金プロジェクトの成果である『幻想的な小屋 『聖アントワーヌの誘惑』 (1856)第二版のディプロマティック校訂批評版』(Cabane fantastique. Édition diplomatique de la deuxième version (1856) de La Tentation de saint Antoine)【※注】 を出版しました。Droz社は海外では第一級の名門出版社としてアカデミーで知られており、大鐘教授がDroz社より出版するのは今回で2冊目となります。
レアリズムの父といわれるフローベールは、フランスのバカロレア(大学入学共通試験)やアグレガシオン(教員資格試験)の論述部門の試験に出題されるなど、フランスでは最も作品が読まれている小説家です。また、遺言とともに残した膨大な草稿群が保存されており、1960年代以降では近代小説の先駆者としてフランス国立科学研究所(CNRS-ITEM)を中心に草稿研究の特権的な対象作家でもあります。『聖アントワーヌの誘惑』はフローベールが「生涯の作品」とよび一生に三度も書き直した戯曲で、登場する宿命の女性像は19世紀のロマン主義や象徴主義の概念に多大な影響を与えたと言われています。
今回大鐘教授が出版した校訂批評版は、約150年にもわたり研究者の間で「初稿(1847)のダイジェスト版でしかない」とみなされてきた『聖アントワーヌの誘惑』第二版を草稿の画像とともにディプロマティック解読転記したもので、第二版に関するデジタル転記原稿とオリジナル草稿画像(または画像)による校訂批評版としては世界初となります。第二版での創意工夫があって初めて世界的な注目をあつめる進化論的な決定稿(1874)が可能になったことを証明した、非常に画期的な内容です。
大鐘教授は「第二版がなければ最後の決定稿は存在しなかったとして解読を決心致しました。解読後も、作家の手書き線の濃淡や指示をデジタルで正確に描くのは海外にもない技術のため至難の技でしたが、1冊目と同様、日本の印刷所や海外のDroz社の優れた編集者達との膨大な量の校正と分析を無事終え、安堵しました。関わって下さった全ての皆様のお蔭です。次世代にも活用して頂ける一次資料作りで社会に貢献できれば嬉しく思います」と語りました。
※本校訂批評版は日本学術振興会による科研費基盤研究JSPSKAKENHI(C)26370372および研究成果公開促進費20HP5054の助成を受けたものです。
※注:書名の「Cabane fantastique.」と「La Tentation de saint Antoine」はイタリック体
今回の出版に伴い、本学図書館で開催された展示
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