8月6日(土)、人間共生学部の二宮咲子准教授が担当するプロジェクト科目、「農園と食卓をつなぐデザイン・プロジェクト」の集大成として、共生デザイン学科7名、コミュニケーション学科2名、合計9名の人間共生学部3年生の学生たちが収穫体験イベント開催しました。
湘南地域・茅ヶ崎を対象として、都市近郊農業を取り巻く社会や担い手の課題と、先進的な取り組みを学習し、自然と共に生きる暮らしを実現することが、このプロジェクトの目的です。学生たちは4月から7月まで4回のフィールドワークを行い、都市農業の価値を学び、自然と共に生きる暮らしを実践的に学んできました。6月に入ってからは、収穫体験イベントのプログラムを開発するために、収穫体験・冊子班、調理体験班、クラフト班に分かれながら準備や制作を進め、8月のイベント本番を迎えました。
収穫体験イベント本番の様子
人間共生学部3年生の廣本碧さんは、収穫体験イベントの告知用チラシの作成と参加者に配布する「チガファムおやさいBook」の編集長を担当。チラシの初期案ではイラストやロゴマークを大きく配置し、文字フォントも可愛らしいものを使用することで楽しい雰囲気を重視したそうです。しかし、農園主や二宮先生とのミーティングでは、文字の読みにくさや、収穫体験イベントということが伝わりづらいこと、デザインの方向性が農園の目指しているブランドイメージと異なる、という指摘があり、デザインを一新することに。試行錯誤の末にチラシの制作を終えた廣本さんは、「自分の感覚だけに頼ってデザインするのではなく、農園主が何を伝えたいのかや、チラシを読む人の目線を考えてデザインすることが大事だと身をもって学びました。完成した時の達成感はこれまでの苦労が吹き飛ぶくらい嬉しかったです」と喜びを露わにしました。
初期案の告知用チラシ
デザインを一新した最終案の告知用チラシ
人間共生学部3年生の川野寛司さんは、このプロジェクトの全体統括を行いました。「当日の参加人数やイベント日程の変更など計画通りにいかないことが多くありましたが、そのたびに実施体制の見直しや、チームや農園主、二宮先生との情報共有と相談を密に行うことで、何とか対応することができ、自分自身の調整スキルも上がったと実感しています。また有機農業をめぐる社会や担い手の課題を深く知ることができ、とても良い勉強になりました」と、プロジェクトを通して成長することができた実感を語りました。
参加者のサポートにつく学生
人間共生学部3年生の西村友理亜さんは、収穫体験イベントのなかで行う「押し野菜・押し草花でランチョンマット作り」の企画・準備や当日のインストラクターを担当しました。農薬を使わない農業では、虫食いのため売ることができない野菜や雑草が多いことを知り、それらを有効活用できる“押し野菜”と“押し草花”を思いついた学生たち。当初は小さな栞サイズを検討していたのですが、二宮先生から「“農園と食卓をつなぐ”というテーマに沿っていない」と指摘され、ディスカッションと試作を繰り返すなかで、A3サイズの台紙に押し野菜を貼って、クレヨンで農園の絵を描きラミネート加工をする“ランチョンマット作り”へとプログラムが進化していきました。農園でのクラフト体験を終えて西村さんは、「屋外で作業するための風対策やポータブル電源の確保など、入念に事前準備を行ったおかげで、イベント当日はトラブルもなく参加者が楽しんでいる様子が見ることができ、達成感がありました。お子さんの自由な発想から生まれた個性のあるレイアウトやデザインのランチョンマットを間近に見て、共生デザイン学科の学生として勉強になる点もありました」と、イベントを通じて貴重な経験が得られたと語りました。
押し野菜のランチョンマットづくりを説明する学生(右側)と参加者
人間共生学部3年生の田中真優さんは、農園で7種類もの茄子を育てていることに気づき、インターネットで茄子の種類について調べてみるなど、興味をもつようになりました。自分のように参加者にも野菜に対する興味を深めてほしい、という目的で、農園で収穫できる長茄子、トルコ茄子、水茄子の調理、食べ比べ体験を企画しました。また当日収穫できるそれぞれの野菜、品種の特徴に合わせたレシピを作成し、材料・手順・ポイント・学生スタッフからの一言を添えて、参加者へ配布しました。イベント実施後に、参加者の方から「子どもたちが『これって何茄子?』と聞いてくるようになりました」というメッセージが届き、茄子の食べ比べ体験は大成功といえそうです。
茄子の食べ比べを企画した学生が実際に調理した茄子
プロジェクト科目の教育的意義について、担当教員の二宮咲子准教授は、「参加者の皆さんだけでなく、学生自身も、農園と食卓がつながっていることを実感できたと思います。このプロジェクト科目の実習地は農薬や化学肥料を使用しない、自然共生型の有機農園なのですが、それは日本の耕作地全体の1パーセントにも満たないほど貴重な存在です。農林水産省は2050年までに全体の25パーセントにまで有機農業の耕作地を広げていくという目標を掲げていますが、そのためには、生産者や消費者個人の努力だけでなく、地域のコミュニティや自治体、さらには食品業界の企業関係者を含めた社会構造の改革が必要です。このような大きな社会課題に対して、就職活動が始まる直前の3年生の春学期に4か月90時間かけて“デザイン”というクリエイティブな発想とアプローチでじっくりと取り組むことができるのは“農園と食卓をつなぐデザイン・プロジェクト”の大きな教育的意義です」と語ります。
これからも、関東学院大学は学生たちがキャンパスを飛び出して社会課題に実践的に取り組む社会連携教育を推進していきます。
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