法学部では、地方自治体が講師として担当する講義「地域創生特論」を開講しています。神奈川県をはじめ、横浜市や横須賀市など県内の11自治体のほか、岩手県や沖縄県がそれぞれ1科目ずつを担当し、各自治体の課題や政策など、首長や現場の職員が学生に講義を行っています。
昨年12月下旬、2週にわたって行われた講義は、沖縄県西原町の崎原盛秀町長、同町職員の玉那覇敦也氏、また与那原町の照屋勉町長を招いて行われました。関東学院大学は西原町と与那原町とそれぞれ「連携及び協力に関する協定」を8月に締結しています。
「文教のまち西原」 西原町 崎原盛秀町長
那覇市から約10キロ離れた人口約36,000人の西原町。「文教のまち 西原」をまちの将来像として掲げ、教育施設を活用した人材育成をモットーにまちづくりに取り組んでいます。また「文教のまち 西原」を実現すべく、2012年4月に『西原町まちづくり基本条例』を制定。”平和で人間性豊かなまちづくり(第4条)”、”安全で環境にやさしいまちづくり(第5条)”、”健康と福祉のまちづくり(第6条)”、”豊かで活力のあるまちづくり(第7条)”の4つの基本方向のもと町政運営を進めています。
崎原町長は講義冒頭で、まちづくり基本条例第7条「豊かで活力のあるまちづくり」に制定されている、サトウキビなどの生産者と連携して農家の所得向上に向けた継続的な支援や、さわふじマルシェを拠点とする地産地消や観光振興の推進などの重点施策について説明。また大型MICE施設の建設に伴う、交通整備やモノレールの延伸などの『西原町都市計画マスタープラン』について、「このマスタープランの中にある大型MICE施設事業は、周辺の都市開発や周辺の観光地へのアクセス向上、またホールなどを建てることで、各種イベント活用できることから、西原町と与那原町の双方が力を入れている取り組みです」など、事業に期待する効果を話しました。
講義終盤では、西原町のモットーである人材育成をもとに「初心を忘れないこと、感謝の気持ちを伝えること、仲間との絆を大事にすること、この3点を毎年新入職員へ伝えています。これらは社会に出てからとても大事なことですので、心の片隅に残してもらえたら」と学生たちにメッセージを贈りました。
西原町 崎原盛秀町長
「高校生と協働するまちづくり」 西原町職員 玉那覇敦也氏
玉那覇氏は、「高校生と協働するまちづくり」をテーマに、沖縄県西原町在住の高校生と企業や自治体などが連携し、地域に密着したソーシャルビジネスプロジェクト「NS²BP」について過去の事例とともに話しました。
「NS²BP」は2014年から活動している未来的対応型リーダー人材育成を目的としたプロジェクトのこと。地元の特産物をもとにした商品開発プロジェクトや地域ボランティア活動、琉球大学の学生寮で行われた外国人留学生との国際交流プログラムなど、地元の高校生たちが集まり、幅広い分野で西原町を盛り上げています。特にメンバー自らプロデュースする創作演劇「さわりんと運玉義留(うんたまぎるー)」では、笑いあり涙ありの展開で、講演後に観客から「私も西原町のために何かできることを」という感想が多く上がったそう。
「私たちは福祉分野からの支援をしていきますが、子どもたちが様々な活動を通してそこから先の自分の役割を自分の力で見つけられるようになると嬉しいです。”NS²BP”があらゆる事情を抱えている子どもたちの居場所のひとつになったら」と玉那覇氏は述べました。
西原町職員 玉那覇敦也氏
「いちゃりばちょーでー」 与那原町 照屋勉町長
那覇市から東に約9キロ離れたところに位置し、面積およそ5.18平方キロメートルで沖縄本島の中で最小面積の与那原町。1500年代から続く” 与那原大綱曳”は、那覇、糸満に並ぶ三大大綱引きの一つであり、沖縄で一番華やかで力強い綱として知られています。
同町の将来像は「みんなで創ろう 活気あふれる 美らまち与那原 ~平和と文化・伝統を未来へ綱げて~」。平和と伝統、歴史・文化を継承発展させ、未来へ繋げていくこと、町民が一丸となって活力と魅力ある美しいまちづくりを目指してさまざまな施策に取り組んでいます。
照屋町長は講義の冒頭で、約2年かけて策定された『第5次与那原町総合計画』について、総合計画の位置づけや、基本構想と基本計画など話しました。総合計画は、市町村においては必ず策定しなければいけないものと、地方自治法で定められていましたが、2011年の法改正のもと、個々の市町村では総合計画の策定について、各市町村に委ねられるように。「近年は量より質、構造物などのハード面よりも、心のゆとりや豊かさなどのソフト面が重視されるような時代に変遷してきました。そこで私は住民のより高い満足感を得るためには、総合計画のために落とし込むことが必要だと考えました」と与那原町総合計画策定の背景を話しました。
照屋町長は、このほか、全町(庁)で推進するべき重要施策である、”1.大型MICE施設”、”2.子どもの貧困対策”、”3.生涯健康づくりの推進”の3点を設定していること、具体的な施策ごとに目標指数を設定し評価することなど、同町があらゆる課題に対して各部署が横断的な運用をしていることを説明すると、学生たちからはメモを取る様子が伺えました。
講義が終わり学生たちに贈られた言葉は、一度出会えばみんなきょうだいという意味をもつ「いちゃりばちょーでー」。「今回皆さんと出会えたこともなにかの縁だと感じています。みんなで仲良くして平和を維持していけたら」と講義は締めくくられました。
与那原町 照屋勉町長
また両日ともに講義終了後には、玉那覇氏が「島人ぬ宝」を、照屋町長が「島唄」を、木村乃教授が奏でる三線にのせて歌唱しました。学生らも歌にのせてカチャーシーを踊りました。
関東学院大学は今後もさまざまな自治体の実態をリアルに学ぶ機会を提供していきます。
トピックスについての
お問い合わせ
関東学院大学 広報課
住所 〒236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1
TEL:045-786-7049
FAX:045-786-7862
E-mail:kouhou@kanto-gakuin.ac.jp