人間共生学部の日髙仁ゼミナールに所属する学生らが、関東学院大学横浜・金沢八景キャンパスのリノベーションプロジェクトと町工場を舞台にした空間デザインに取り組みました。
同ゼミナールに所属する4年生のうち、4名がキャンパスリノベーションプロジェクトに、1名が町工場の空間デザインに卒業制作としてチャレンジ。5名の学生にお話を聞きました。
キャンパスリノベーションプロジェクト/箱庭デスクの制作と学生ホールの空間デザイン
制作を担当したのは、岩永卓也さん(人間共生学部共生デザイン学科4年)と大谷啓介さん(同学科4年)。同キャンパスのE1号館1階の学生ホールに、一人用の木製デスクを制作しました。
研究室にあった既製品のアウトドアチェアの高さに合わせて作られたこのデスクには、視線に入る位置に箱庭を設置。利用者が自由に箱庭の植栽などを移動させたり四季を表すものを加えたり、一人で集中できる作業空間を保ちながらその空間を楽しむことができます。またコンセント2口とUSB1口が設置されており、デザインのみならず利便性の高さも担保されています。
大谷さんは「共生デザイン学科でありながら、学生ホールにはシルバーのテラス用の机と椅子しか設置されておらず、学科名と殺風景な空間との間にギャップを感じていました」と話します。昨年8月に開催されたオープンキャンパスで、来場者を対象に学生ホールに対する印象のヒアリング調査を実施。植栽や木製の家具が欲しいという意見をきっかけに制作をスタートしました。膝が天板に干渉してしまう事、机の幅が狭く椅子が収納できないなどの支障をモックアップ制作で段階的にクリアし、約1年かけて4台の箱庭デスクが完成しました。
「学生ホールがこのように改良されていき、さまざまな用途に合わせて学生たちが使いやすいスペースになりつつあることを実感しています。これからもこのプロジェクトが続いて、更にパワーアップした様子をぜひ見たいです」と岩永さんは、ゼミナールの後輩たちへの期待を寄せました。
キャンパスリノベーションプロジェクト/三角テーブルの制作
足利優月さん(同学科4年)と佐々木里菜さん(同学科4年)が制作したのは、ビンテージカラーの三角形のテーブル。「一人で学生ホールを利用する学生が多いのにもかかわらず、大きなテーブルがひとつしかなく、使い勝手が良くないと感じていました。そこで一人でも周りを気にせず使える机が欲しいと思いこのデザインにしました」と足利さんは制作のきっかけを話しました。
このテーブルの最大の特徴は、個人でも大人数でも楽しめる空間を生み出すことができる、移動可能なテーブルであること。70cmの正三角形にすることで個人作業はもちろん、隣り合わせて横並びにしたり、6つ向かい合わせて円形にすることができます。またシナランバーコアを材料に用いることで軽量化に成功。1台の重さは約3.5kgと小学校などで使用されている一般的な机よりも軽いものとなっています。
これまでに電動のこぎりをあまり使用したことがなかった二人は作業の進捗が不安だったと口を揃えます。本格的な制作に入ったのは昨年12月。日髙准教授の立ち会いのもと限られた時間で作業を進めていき、順調に進んでいたかと思われたところで、入れ替わりで体調を崩してしまい、一人での作業が多く苦労したそう。苦難を乗り越えて完成した6台の三角テーブルに愛着が湧いたという足利さんからは笑みがこぼれました。
佐々木さんは「台数を増やすことが出来れば更にレイアウトの幅も広がるのでもっと早くから始められていればよかったと少し後悔しています。ですが今回のプロジェクトを通して工具に触れる回数が増え、作業スピードが上がったことが大きな自信となりました。沢山の学生たちに使ってもらえたら嬉しいです」と話しました。
町工場空間を利用した新しい形/避難所で活用できるルーミングソファの制作
石川真凛さん(同学科4年)は実家の使わなくなった工場を舞台とした空間デザインにチャレンジ。町工場をリノベーションしたカフェと簡易宿泊所『café&stay』を構想し、ソファベッドを制作しました。
「私の地元である東京都大田区は高い技術力をもつ町工場で有名ですが、近年は廃業となる町工場が後を絶たず、町工場の衰退が進んでいます。また大田区について調べ進めると近くに多摩川が流れていることから、荒天候時などに大きな水害が発生する可能性があることが判明しました。そこで普段はカフェで、もしもの時には少人数制の簡易宿泊所として活用できる家具を制作することに決めました」と制作経緯を話す石川さん。
高さ約2mのソファベッドは、(株)キーテック協力のもと、通常はパルプにして紙にしたり、燃やして燃料となるヒノキ、スギ、カラマツの丸棒を無償で提供してもらい、制作費を抑えながら環境にも配慮したものに。2~3人ほどで移動可能で、簡易宿泊所として使用する場合には、工場内でユニットを動かし、飽きない空間づくりをすることができます。また背もたれの箱を移動させることによりソファからベッドに、またその箱を作業台として活用することもできます。そして遮光性の高いカーテンを取り付けることでプライベート空間が確保され、小さな部屋として自分の居心地の良い空間を作ることができることから”ルーミングソファ”と名付けられました。
「今までにDIYの経験がなかったため完成するか心配でしたが、初心者の私でも作れるのだという喜びを感じています。自分が手掛けたものを使ってもらえるという貴重な経験となりました」とプロジェクトを振り返りました。
またキャンパスリノベーションプロジェクトとして制作された2つの作品は、後援会の方々よりご支援頂いている奨学金をもとに卒業研究が進められました。大谷さんは「この奨学金のおかげで、デスク周りの植栽を購入することができて、デザインの幅も広がりました。ご寄付頂いている方々に感謝しています」と述べました。
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