工学研究科総合工学専攻に所属する学生が設計工学会より論文賞を受賞しました。

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工学研究科総合工学専攻に所属する三和怜央さん(博士後期課程3年)が設計工学会より論文賞を受賞しました。

論文タイトルは「油膜厚さ一定下および荷重一定下での実験によるディンプルを有するシール型スラスト軸受の潤滑特性の検討」。この研究は三和さんのほか、宮永宜典教授(理工学部 先進機械コース)、辻森淳教授(同コース)、および早稲田大学の富岡淳教授による研究グループで取り組まれたものです。

機械工学には、摩擦、摩耗、潤滑を科学する「トライボロジー」と呼ばれる学問分野があり、私たちの生活の至るところに活用されています。例えば、ハードディスクドライブや自動車の車軸、発電所のタービン。これらの回転機械には回転する軸を支え回転をなめらかにするために、ベアリング(軸受)が組み込まれています。回転機器をなめらかにするためには、このベアリングに潤滑剤を注ぎこんで油膜を形成して摩擦を防いだり、ベアリングの表面にディンプル(小さなくぼみ)をつけることによって、そのくぼみに油が入り込み、さらに低摩擦のベアリングを作ることができます。このディンプル一つひとつの形状や配置によってベアリングの特性が異なるため、実験やコンピューターを用いて、どのような違いがあるか理論的、計算的に調べる必要があります。そこで、三和さんは実験にフォーカスしたあらたな実験装置を提案しました。

通常、実験を行う際には、油の入った容器にベアリングを入れて、どのくらい回転軸が浮上するのかを測定しますが、三和さんは、あらかじめ軸が浮上した状態を再現し、ディンプルに入りこんでくる油によって、どのくらいの重さの軸が持ち上げられるのかを測定する実験装置を確立。従来の実験装置と三和さんが確立した実験装置の双方の結果を比較したところ、数値が近しいことが判明し、この実験装置の妥当性が確認できたことを論文にまとめました。新たな実験装置が確立されることによって、一つの実験手法に依存しないことや再現性を高められること、またベアリングの特性を大きく左右するキャビテーション(気泡が発生する現象)の影響を抽出することができる利点があると言います。

「キャビテーションをどのように取り扱うか、今後、理論を確立するためにキャビテーションがベアリングに与える影響について、実験を重ねて抑えておく必要があります。そのためにもこの研究に取り組んできました。キャビテーションが発生する様子を可視化できるのもこの実験装置のポイントの一つです。この研究成果が賞を頂けるほどインパクトのあるものだったのだと思うと、この研究にかけてきた約5年間は無駄ではなかったのだと感じています」と三和さんは話します。

辻森 淳教授は「機械工学分野においてキャビテーションは、悪影響を及ぼすものだと思われていますが、今回の実験装置を用いる事で、好影響を与えるものに変わり新たなものを生み出す可能性があります。三和さんの研究成果は大変すばらしいものです」、宮永宜典教授は、「全く新しい手法を確立したことが学会から評価されたのだと思います。引き続き愚直に取り組んでもらえたら」と三和さんの研究成果を称えました。

三和さんは今後の研究について「現在は、キャビテーション圧力について研究を進めつつ、ベアリングの性能を高めるディンプルの最適設計手法を確立して、世界的な問題となっているエネルギーロスへの貢献を目指しています。キャビテーション圧力もディンプルの最適設計手法も、いまだ解明されていません。そこに着手できるのは研究の醍醐味ですね」と意欲を語りました。

左から辻森教授、三和さん、宮永教授

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