国際文化学部の富岡幸一郎教授が「“知を力にする”とは」をテーマにライブトークを開催しました。

#国際文化学部 #有隣堂 #Bacon Books&cafe

6/22(土)、横浜・関内キャンパスB1F Bacon Books&cafeにて国際文化学部 富岡幸一郎教授と有隣堂の芝 健太郎氏による『“知を力にする”とは』をテーマにしたライブトークイベントを開催しました。来場された方々は、料理とお酒を楽しみながら話に耳を傾けました。

インターネットの発明や、 AIを始めとした技術の急激な発展によって、現在わたしたち人間を巡る環境は凄まじい速度で変化しつつあります。その中で、人文諸科学の重要性は比較的顧みられることが少なくなっているのではないでしょうか。
2023年春、関東学院大学 横浜・関内キャンパスB1FにオープンしたBacon Books&cafeの店内には、このカフェの名前をそこからちなんだ英国の哲学者フランシス・ ベーコンの言葉「知は力なり(scientia est potentia)」が掲げられています。人間という種の営みを客観的に捉え、記述し、批評的に思考する人文的知の意義を、あらためてブックカフェという開かれた形で問い直していければという思いを私たちはこの言葉に込めています。今回はこの場所で、国際文化学部教授で文芸評論家の富岡教授とBacon Books& cafeを運営する有隣堂の芝 健太郎氏によるライブトークを開催しました。芝氏は有隣堂の公式YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』に出演する著名書籍バイヤーで、”年間3万冊の本を吟味する男” と呼ばれています。そんな芝氏とともに、この時代に“知を力にする” 方法について、また、読書という行為の意味と効用について考えました。

SNSが発達して、本の読まれ方も変化している今、人文諸科学の必要性と可能性について富岡教授と芝氏が語ってくれました。「言葉は、本来様々な機能、性質を持っています。1.伝達、2.表現、3.蓄積、4.社会的な価値や尺度。ところが現在のSNS時代では、そのバランスが崩れていると感じます。例えば、X等での発信の際の文字数制限などから伝達以外の言葉の機能が省かれ、重要な表現や言葉の蓄積などは乏しくなっていると感じます」と富岡教授は話します。芝氏は「書店にいると、本が読まれなくなっていることを実感します。その反面、表現したい側の人々はたくさんいて、文学フリマやSNSでの発信は非常に多くなっています。しかし、文芸書といった芥川賞にノミネートされるような作品は初版で2,000部から3,000部いかない程度でどんどん減っている。やはりそういった現状の中で、言葉の機能のバランスは崩れているように思います」といいます。

富岡教授は「幽玄」という言葉を紹介しながら、言葉の性質について説明しました。「幽玄」とは奥深くて、はかり知れないこと。趣が深く尽きないことを意味しており、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した歌人 藤原定家は詩の心をこの「幽玄」という言葉で表現しました。現代にいたるまで、小説家はこういった言葉、表現の使い方をしてきました。そこには言葉の歴史性と蓄積があります。文字数に制限があるSNSでの発信では、どう表現するのか。文字数や機能といった、伝達ではない表現の仕方がとても重要で、表現にはその言葉の歴史性も加わってきます。言葉の機能、性質のバランス、チームワークが大事で、それを保つ働きかけが人文諸科学にいま求められているものだといいます。富岡教授は「学問が細分化、専門化している中で、それぞれの分野を総合する“知”の連携が重要で、そのためにも本を読んで欲しい。発行される本の部数も少なくなっていることと、読者層のスマホ利用が定着したことで本が手に取られないという現状がある中で、ぜひ“本屋の醍醐味”を感じて欲しい」と話します。「書店は“知”の発信地で、多くの書籍が並んでいます。探している本の隣に並ぶ別の本との出会いはまさに“知”のアクシデントとなり、“知”の連携を生み出す可能性があります。そういった場面で、人文的知の基盤としての本の魅力に触れて欲しい」と語りました。
来場者から、「情報があふれる中で、私たちは何を基準に何を選べばよいのか」といったメディアリテラシ―について質問が及ぶと、富岡教授は「情報の洪水の中で生きていく上で重要な判断力を与えてくれるのは、主体となる自分が持つ“教養”です」と応えました。「“知の力”とは、言葉が自分の中に蓄積されていくことで、単にコミュニケーション、伝達の道具ではなく、物事を考えたり世界を豊かにするものです。自分の世界を豊穣なものとするのは“言葉の力”“知の力”です。本を読むということは、基礎体力を養うこと。物事を考える力、しなやかさ、判断力を読書を通して身につけて欲しい」とメッセージを伝えました。

最後に、富岡教授、芝氏それぞれから、今読んで欲しいお進めの本をご紹介いただきました。
梅雨の季節に雨音を聴きながら読書に耽ってみてはいかがでしょうか。

富岡教授おすすめ

・内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』
・小林秀雄『近代絵画』
・三島由紀夫『豊饒の海』(『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』全4巻)
新しい作品としておすすめ
・諏訪哲史『昏色の都』

芝氏おすすめ
・エッカーマン『ゲーテとの対話』
・ヴィクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』
・宮本常一『民俗学の旅』

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