10月30日(水)、国際文化学部は、創立10周年を記念して「21世紀・SNS時代の国際文化と教育」をテーマに横浜・関内キャンパスでシンポジウムを開催しました。SNSやAI、ビッグデータの発展がもたらす新たな課題や可能性について、国際文化学部の教員たちと著名な作家が意見交換を行い、現代の教育と国際文化の在り方を見つめ直す場となりました。
冒頭の挨拶には、小山 嚴也学長が登壇しました。「異なる文化的背景を持つ人々との共生はとても重要になってきており、SNSは異なる文化背景を理解するメリットがある一方で、文化的な違いによる摩擦を助長する側面もあります。今回のシンポジウムは、そうしたSNSがもたらすグローバルな課題に立ち向かう教育の役割について、有識者たちの講演や座談会を通して考えを深めていく時間になればと思っております」と述べました。
第一部の基調講演には、英国政治外交史の専門家である国際文化学部比較文化学科の君塚直隆教授が登壇しました。君塚教授は、英国王室がSNSを通じて国民とつながり、伝統と現代の架け橋を構築してきたことを解説。1997年に起きたダイアナ妃の死をきっかけに、英国王室は積極的にデジタルメディアを活用し始め、21世紀に入ってからはSNSを新しい広報戦略の柱として取り入れたと言います。エリザベス女王の在任70周年を祝うプラチナ・ジュビリーなどの際に、SNSを用いた情報発信が国民とのつながりを一層強化したと説明がありました。一方日本の皇室では、デジタルメディアを使い始めた時期はイギリスと大きく変わらないが、情報発信の頻度の低さやスピード感、SNSなどの発信ツールの少なさに問題があると言います。「皇室が取り組んでいる日々の公務などを、日本だけでなく世界にも積極的に発信していく必要があります。また若い世代にも認知してもらえる、親しみを持ってもらえるように、SNSをはじめとした時代の変化に合わせた広報戦略を考えるべきです」と指摘しました。
第二部には芥川賞作家の楊 逸(ヤン・イー)氏が登壇し、SNS時代の新しい文学表現「ライブ小説」について語りました。ライブ小説は、従来の小説創作とは異なり、執筆過程をリアルタイムでSNS上に公開し、読者がコメントやアイディアを通じて作品に関わることができる実験的な手法です。この手法では、作者がリアルタイムで執筆した内容がSNSにアップロードされ、読者が反応や意見を直接作家に届けることで作品に影響を与えます。楊氏は「若者の読書離れが進む中、SNSを通じて創作活動が共有されることで、小説は作家だけのものではなく、読者と共に生まれ変わる」と語り、ライブ小説が読者参加型の文学としてのポテンシャルを秘めていることを強調しました。
最後の座談会には、国際文化学部英語文化学科の大橋一人教授、同学部長の鄧 捷教授が登壇し、君塚教授、楊氏と共にSNS時代における教育と文化の役割について議論が交わされました。座談会では、SNSを通じた教育のアプローチの可能性や、学生たちの主体性や批判的思考を育むための方法が検討されました。
鄧学部長は、SNSなどの発達が教育現場にもたらす新たな課題を契機に捉えて、学生の知的好奇心を喚起し、リアルな現場に触れる「実践」を通じた課題理解の往復、国際化する社会の中で自ら考え、動くことを促す教育の重要性を強調しました。
大橋教授は、本学の国際文化学部が元々文学部から改組した学部であるという成り立ちに触れ、「文学は言葉を通して人を理解する学問です。SNSやテクノロジーの進化によって教育の方法は形を変えていくかもしれませんが、その意味を繋ぎ止めていって欲しいと思っています」と、語りました。
今回のシンポジウムは、SNSやAIといったテクノロジーが教育や多文化共生にどのように貢献できるかを議論する場として、国際文化学部のこれまでの歴史を振り返りその未来を展望する契機となりました。最後に鄧学部長は、時代の変化を積極的に引き受け、学部の伝統を大切にしつつ、2026年度から国際文化学部が再編を行うことを紹介し、グローバル化と多文化共生が進む時代において、多様な文化的・言語的背景を持つ人々と相互理解を図り、国際社会・地域社会の諸課題の解決に向けて主体的に行動する人材を育てるよう、国際文化学部が国際都市横浜に相応しい学びを提供することをアピールしました。
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