研究報
Research Expectations

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特集:SDGs(持続可能な開発目標)

1.地球規模で持続可能な社会を目指す

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みんなの未来が、 シアワセであるために。

2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択されたSDGs(SustainableDevelopmentGoals=持続可能な開発目標)が、世界的な広がりを見せています。ここで示された目標が、個人、企業、政府・自治体の行動に少しずつ変化を起こそうとしているのです。「地球上の誰一人として取り残さない」という高い理念は、人類全体で共有が可能な財産になろうとしています。

私たちの世界は、急激な人口増加にともなう食糧不足や、深刻な気候変動など多くの課題に直面しています。開発途上国と先進国との格差も、解消のメドすら見えない長年の懸念事項です。これらの課題は、決して遠くのどこかで発生しているものばかりではありません。私たちの身近な暮らしのなかにも、解決すべき課題は数多く存在しているのです。

関東学院大学が立地する神奈川では、神奈川県、横浜市、鎌倉市の3自治体が、先進的な取り組みを実施する「SDGs未来都市」に選ばれました。地域社会においてもSDGs活用に向けた機運が高まり、具体的な取り組みがはじまっています。

私たちの営みは、どこかで途切れるものではなく連綿とつづいてきた歴史であり、それを未来へと引き継いでいくことも、今を生きる私たちの責務でもあるはずです。そのための指標の一つが、この「SDGs」です。

ただ、この「SDGs」という言葉。まだ、その名称の認知率さえ全国平均で16%にとどまるのも事実です。※この目標を共有し、達成するために、まだまだ多くの人々が、汗をかかなければなりません。

私たちの営みを未来へとつないでいくために、関東学院大学でも多くの研究者たちが課題に向かい合っています。みんなの未来が、シアワセであるために。研究者たちの成果と、彼らが想像する未来の姿の一端を、ご紹介します。

※第2回電通SDGs生活者調査(2019年2月調査)

INTERVIEW 01 地球規模で持続可能な社会を目指す
小山先生1

小山 嚴也 YOSHINARI KOYAMA

経営学部経営学科 教授

学位:博士(商学)
専門分野:「企業と社会」論

「SDGs」とは

近頃、あちらこちらで「SDGs」という言葉を目や耳にする機会が増えてきています。“SustainableDevelopmentGoals(=持続可能な開発目標)”の頭文字であるSDGsですが、聞いたことはあったとしてもその内容は今一つピンとこないという人も多いのではないでしょうか。SDGsは、2015年に開催された国連持続可能な開発サミット内で採択された、いわば全人類の目標です。2030年までに世界中で達成されるべきことがらが、17の目標と169のターゲットとして示されています。

「前身の『MDGs(ミレニアム開発目標)』から今回の『SDGs』になって一番大きく変わったのが、抱える問題が途上国に限ったものではなくなったという点です。課題は途上国だけでなく先進国にもあるものです。“誰一人取り残さない”というコンセプトのもと、それぞれが目前にする課題を克服した先に、地球規模で持続可能な社会を目指すというところが、SDGsの最も大きな特徴です」と、経営学部の小山嚴也教授は話します。

なぜSDGsが今 、
注目されるのか

2015年に国連でSDGsが採択されてから、今年で4年が経ちます。最近になってSDGsに触れる機会が増えてきたように感じるのには、どうやら訳がありそうです。日本政府のSDGs推進本部は、2019年をフォローアップの年としています。これまで各省庁がどれくらい課題解決に向けて動いているのか確認されるということもあって、私たちの目にも徐々に具体的な動きが見えてくるようになったようです。小山教授によれば、実際にビジネスの現場でもSDGsの認知度は上がってきているといいます。

「先日(2019年春)ある企業で課長クラスの方を対象にした研修を行ったのですが、およそ1/3の方がSDGsについて認知されていました。2018年頃には、SDGsの認知度が1割程度と言われていたことから考えると、大幅な伸びですよね」。
ビジネスパーソンの間で、SDGsに対する認知度が上がりつつあることで、企業活動にも具体的な動きが見え始めています。「これまでは商品やサービスにどれだけ付加価値をつけられるかが、他社製品との差別化に大事なことでした。しかしコモディティ化(性能、品質、ブランド力などに大差がなくなり、顧客からみて同じようなものに映る状況となること)が進めば、その背後に透けて見える社会的背景や価値へどれほど共感してもらえるかが、そのまま他社製品との差となるわけです」。

企業にとっては社会貢献も大事な活動ですが、もちろん本業で利益を上げることが重要なことに変わりはありません。これからも企業として活動を続ける上で、社会の側も企業の側も両方がサステナブルであることは必要不可欠になります。持続可能な姿になるために何が必要か、未来のあるべき姿から逆算(バックキャスティング)的な思考で考えるときに、SDGsという仕組みの活用はとても相性が良いようです。

大学とSDGs

社会のいたるところにSDGsで示されている課題は存在しています。これまで知る由もなかった課題が、もしかすると自分たちの持つ技術で解決できるかもしれない…、SDGsの169のターゲットを紐解くと、将来の市場が見えてくるといっても過言ではないでしょう。そして、もちろん大学にとってもSDGsを意識することは重要だと小山教授は続けます。
「例えば本学の材料・表面工学研究所では、青森県警とタッグを組んでLED信号機の雪を落とす技術を開発しています。LED信号機は環境負荷が小さいので普及すればSDGsの7番の目標である『エネルギーをみんなにそしてクリーンに』の達成に貢献します。しかし、LEDはほとんど発熱しないため信号のレンズ面に付着した雪が解けず、視認性が悪くなるという問題がありました。この技術が活用されれば信号の視認性が高まり交通事故を減らすことにつながりますから、SDGsの3番の目標の中にあるターゲット3.6『2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる』の達成にも貢献することになります。大学では様々な研究が行われています。社会実装の面でも、研究の方向性を考える上でも、研究者がSDGsを意識することはますます大事になるでしょうね。経営学の視点を持つ者としては、大学が持つ研究シーズをSDGsの観点から事業化できればおもしろいと考えています」。

※本記事は2019年7月に作成したものです。