研究報
Research Expectations

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特集:SDGs(持続可能な開発目標)

2.時と場合に応じて最適な水の使い方があるはず

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INTERVIEW 02 時と場合に応じて最適な水の使い方があるはず
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大塚 雅之 MASAYUKI OTSUKA

建築・環境学部 建築・環境学科 教授

学位:工学博士
専門分野:建築・環境設備、水環境・給排水設備

人の生活に密着する「水環境」

喉が渇いたとき、用を足すとき、体を清潔に保つとき…。「湯水の如く」という言葉があるように、私たちは日々何気なく水やお湯を使っています。しかし清潔な水は、世界的に見ると貴重な資源の一つです。人にも環境にも優しい「水回り」に関する研究で、業界をリードするのが建築・環境学部の大塚雅之教授です。身の回りの水を考えるときには、大きく二つの切り口で捉える必要があると大塚教授は言います。

「まずは『使う』場面です。一番身近なところでいえばトイレや台所、洗面所にお風呂ですよね。水として使うこともあれば、エネルギーを加えてお湯にすることもあります。ここでは、水資源の使われ方とエネルギーの使われ方を考えなければなりません。そして使われた水は『流す』ことになります。排水や下水の設備が不十分だと、衛生面や環境面で問題を起こしかねません。より良い使い方、流し方を追い求めています」。また普段ありふれた水も、非常時になるとその貴重さが一気に増します。災害時などで水の供給が断たれてしまうと、途端に普段通りの使い方ができなくなります。このような状態での水の使われ方についても、大塚教授は研究を進めています。「国や地域によって水資源量には差がありますし、時代とともに水資源の使われ方は大いに変化しています。また、普段と非常時でも使われ方は変化しますし、人によっても異なります。あらゆる場面を想定しながら水の使われ方を考えています」。

すぐそこにある「イノベ ーション」

大塚教授の研究から生まれた技術は、すでに私たちの身の回りで使われているものも少なくありません。例えば台所や洗面所のシンクで使われるシングルレバー水栓には、新しいものだと水とお湯を切り替える際「カチッ」と音がなるものがあります。

「昔のシングルレバー水栓は音がなりませんでした。レバーを真ん中にして水だと思って使っていても、実は、給湯器にガスが着火され、お湯やガスのエネルギーの無駄使いをしていた…、なんてことも多かった。これはもったいないということで、様々な人の使い方をモニターしながら研究を進めた結果、生まれた音があの音なんです」。

この他に、研究の産物は、見えないところにも実装されています。その代表が建物の排水システムにあると大塚教授は続けます。

「トイレに溜まった水は『トラップ』といって、臭気が排水管側から上がってこないよう蓋の役割をしています。何も対策せずに高層住宅の上階から水を流すと、排水管を流れる水の勢いで管内の圧力が変化してトラップが破れてしまいます。海外ではこれが原因で感染症の集団感染を起こした事例もあります。私たちが考案した、管内の圧力を緩和させ、排水が管内をスムースに流す技術は、製品として今や多くの超高層ビルでも使われています」。

世界が直面する問題解決に向けて

水環境の改善とエネルギー対策は、17あるSDGsのターゲットにも大きく掲げられています。大塚教授の研究は世界的に解決すべき問題の真ん中にあると行っても過言ではありません。

「SDGsという大きなスローガンは、私たちの研究にとって大きな追い風になっています。例えば日本ではトイレが衛生的で安全なものになりつつありますが、海外だと決してそんなことはありません。SDGsは世界規模で取り組む課題ですので、衛生的な水環境を持つ日本が貢献できることは大きいはず。私たちは、ますますこの課題に寄与しなければなりません」。

節水も大事だけれど、節水しすぎると排水が詰まるなどの衛生的なリスクが高まる場合もあります。時と場合に応じて最適な水の使い方があるはずだと大塚教授は考えます。

「環境負荷を減らすため我慢するのではなく、できるだけいつも通りに近い形でどう持続可能な利用を可能にするか考えねばなりません。それは災害時などの非常時利用を考えることにもつながります。持続可能性をうたうのであれば、どんなときでもできるだけ快適に、無理なく使えなければいけませんよね」。

※本記事は2019年7月に作成したものです。