12月17日、横浜・関内キャンパスにて、「Christmas Academy」が開催されました。今回は、ソプラノ歌手の長田 有加里氏、ピアニストの中村 優花氏を迎え、小山 嚴也学長と大学宗教主事の髙井 啓介教授が横浜とクリスマス、そしてキリスト教にまつわる歴史や文化を紐解くトークセッションを音楽を交えながら行いました。
冒頭、小山学長は「クリスマスアカデミーは今年で3回目。音楽とトークを楽しみながら、横浜のキリスト教の歴史や文化を深く知る機会としてほしい」と挨拶。続いて壇上に上がった長田氏と中村氏による『アヴェ・マリア』の演奏が行われました。演奏後に長田氏は「同じ『アヴェ・マリア』でも作曲家や時代によって表現は異なる。今日を通じて、音楽による祈りの多様性を感じていただければ」と語りました。
続いて、小山学長と髙井宗教主事によるトークセッションが行われました。最初のテーマは「キリスト教とビールの関係性」と「『アヴェ・マリア』の意味と表現の多様性」です。髙井宗教主事は、古代メソポタミアのシュメール文明で誕生したビールの歴史に触れ、旧約聖書に登場するアブラハムもその文化圏でビールを飲んでいた可能性があると解説。さらに、中世の修道院では断食中の栄養源としてビールが用いられ、宗教改革者マルティン・ルターの妻も醸造に携わっていたことを紹介しました。あわせて、教職員や学生、クラフトビール会社と連携して進めている「KGU乾杯プロジェクト」に言及し、シュメール人が飲んでいたとされるビールを現代に蘇らせた「KGUシュメール」を紹介。「ビールが麦から液体へと変容し、人々に喜びをもたらすように、クリスマスもまた、神の子の降誕によって喜びがもたらされる」と語り、両者に共通する「変容と喜び」のテーマを強調しました。また『アヴェ・マリア』については、天使ガブリエルの「おめでとう、マリア」という言葉に由来する祈りであり、冒頭で長田氏が口にしたようにシューベルトやグノー、カッチーニなど、様々な作曲家が『アヴェ・マリア』を楽曲として遺しており、作曲家や時代によって音楽表現が大きく異なることを紹介。「祈りは一つの形に固定されるものではなく、その時代の人々の心を映し出してきた」と述べ、音楽を通じた多様な祈りの在り方を示しました。
後半のトークセッションでは、「横浜と女子学校」というテーマ。小山学長が「なぜ横浜、とりわけ山手周辺に女子学校が多く存在するのか」と問いを投げかけると、髙井宗教主事は、明治初期には近代教育が男子中心で進められ、女子教育が後回しにされていたことを背景に説明しました。「1873年のキリスト教黙許以降、来日したアメリカ女性宣教師たちが女子教育の担い手となり、外国人居留地を有する横浜はその活動拠点となった」と髙井宗教主事は口にします。横浜共立学園の源流である「アメリカン・ミッション・ホーム」は、当初は学校ではなく寝食を共にする「家」として始まり、そこでは英語やキリスト教に加え科学なども教えられ、日本政府が掲げた「良妻賢母」教育とは異なる、女性の自立を重視した教育が実践されていたといいます。また、学校創立当初から続くイエス・キリストの降誕劇「クリスマスページェント」では、どの役割も喜んで引き受ける姿勢が大切にされ、他者への奉仕というキリスト教精神が教育の中に根付いていることも紹介されました。
永田氏と中村氏による演奏では、バッハ/グノー、シューベルト、カッチーニ、マスカーニが作曲した『アヴェ・マリア』4曲の他に『O Holy Night』、『アレルヤ/モーツァルト』などを披露。クリスマス音楽の持つ祈りの意味やキリスト教の歴史的背景を演奏という形で参加者に伝えました。最後にアンコールとして『きよしこの夜』が披露され、参加者と一体になって合唱し、クリスマスの喜びと祈りのひとときが締めくくられました。
今回のイベントを通じ、参加者は音楽を交えながらキリスト教の精神が教育や文化の中でどのように根付いているかを体感するとともに、横浜の歴史や学校教育とのつながりを深く理解する機会となりました。
今後も関東学院大学は横浜の「知の拠点」として、教育と研究の両面から社会へ貢献していきます。
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