理工学部応用化学コース4年の片岡 颯馬さんは、工業排水に含まれる有害物質を選択的に除去する新たな吸着材料を開発し、そのメカニズムを解明しました。本研究成果は、国際学術誌『Chemical Engineering Research and Design』(Volume 228, April 2026, Pages 1-18)に掲載されています。
研究背景
工業排水処理に広く活用される活性炭などの吸着剤は、さまざまな有機物を一度に吸着できる反面、標的とする物質以外も吸着するという課題があります。持続可能な水処理の実現に向け、狙った有害物質を選択的に効率よく吸着できる新たな吸着材の材料開発が求められています。
研究概要
本研究では、水中に含まれるマイナスの電気を帯びた物質を選択的に除去できる、新しい吸着材料「イオン選択性層状吸着剤」を開発しました。この材料は、水溶液中からマイナスの電気をもつ物質を、高い選択性と速い吸着速度で取り込めるという特長をもっています。
今回、系統的な実験と解析を通して、この吸着材料がどのような仕組みで選択的な吸着を実現しているのか、その重要な初期過程の一端を明らかにしました。具体的には、材料の作製時に内部へ取り込まれたマイナスのイオンが外部へ放出されることが、吸着の初期駆動力として働き、その後、材料内部の電気的なバランスを保とうとする作用によって、水中のマイナスの電気を帯びた物質が選択的に取り込まれることを示しました。
この成果は、化学的にはイオン選択性をもちえない層状吸着剤において、これまで十分に理解されてこなかったイオン選択的吸着の仕組みに新たな知見をもたらすものです。特定の有害物質を効率よく除去できる吸着材料として、今後の水処理技術や環境浄化技術の高度化への貢献が期待されます。
片岡 颯馬さんのコメント
入学当初は授業で課される実験レポートですら苦手意識がありましたが、研究室に配属されてからは大きく変わりました。各自の実験結果について先輩たちとディスカッションする機会が増え、徐々にデータに基づいた考察ができるようになりました。今では、心から”研究が楽しい”と感じています。今後は対象とする色素を変え、選択性を維持したさらなる吸着材料の開発を目指したいと思います。
論文情報
掲載誌:Chemical Engineering Research and Design
タイトル:Ion-Selective Dye Adsorption Driven by Interlayer Ion Deintercalation in Alkylammonium-Intercalated Layered MnO₂ Films(アルキルアンモニウム層間挿入型 MnO₂薄膜における層間イオン脱挿入に駆動されるイオン選択性色素吸着)
著者:Soma Kataoka, Masami Matsui, Kotomi Tokiwa, Yume Kurokami, Takumi Sato, Ryo Sasaki, Kazuaki Tomono
DOI:https://doi.org/10.1016/j.cherd.2026.02.052
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