工学研究科総合工学専攻博士後期課程1年 林 会安さんの論文が、6月28日(日)~7月1日(水)に北海道札幌市で行われた国際会議「International Symposium on Reliability Engineering and Risk Management(信頼性工学とリスク管理に関する国際シンポジウム:以下、ISRERM2026)」にて学生表彰を受けました。
題目:Neural Network with Variational Monte Carlo for Bayesian Inference and Response Estimation of Nonlinear Systems(非線形システムのベイズ推論と応答推定のための変分モンテカルロ法を用いたニューラルネットワーク)
著者:Huian Lin, and Takeshi Kitahara
林さんは論文掲載を目指し、ブラッシュアップのためさらに研究を深める予定です。
研究背景
昨今、地震や風など不規則で予測不能な自然現象による挙動を評価する高精度な手法の確立が求められています。その背景には、世界中の橋梁などの社会基盤施設(インフラ構造物)の多くが老朽化の危険にさらされていることが挙げられ、実存する構造物の性能を確認する健全性診断、地震や風による揺れ方を予測する応答評価予測、また、その揺れをどう抑えるかを考える制御設計等の実装が喫緊の課題とされています。
研究概要
構造物の観測データ(変位、速度、加速度など)から、その構造物の性能を数値化(パラメータ)して推定することで、地震発生時に構造物がどのように揺れ、その揺れによりどの程度の損傷を受けるかを予測することが可能となります。林さんは、そうした数値を導き出すための研究として、新たにニューラルネットワーク変分モンテカルロ法(NN-VMC)という手法を用いて、免震ゴムを有する橋脚の構造パラメータを推定するための計算方法を確立し、解析時間の短縮につなげました。従来の手法(例えば、遷移マルコフ連鎖モンテカルロ法(TMCMC)など)における課題に対処するため、ニューラルネットワークというAI技術と変分モンテカルロ法(VMC)という不確定性も考慮した確率論的な手法を組み合わせ、現在の構造パラメータの分布を導き出すのがNN-VMC法です。本研究では、地震発生時の構造物の揺れを観測データとし、橋がどのような影響を受けるかを推定した数値例を用いて、NN-VMC法の精度と計算効率を検証しました。その結果、現実的な解析時間で現在の構造パラメータを評価できるようになり、地震発生中の応答推定を行うことが可能となりました。これにより、橋以外の様々な構造物への応用も期待されます。
林 会安さんのコメント
自然災害が発生した際、大抵の場合はその力に抗うことはできません。その代表的な例が、地震です。大地震が発生した際には、避難するための十分な時間を確保することが極めて重要ですが、本研究はその時間を確保するための一助となります。NN-VMC法が実現すると、構造物の安全状態をリアルタイムで監視することができ、これまで以上に瞬時に避難指示の判断を促すことに繋がります。将来的には、そのモデルを様々な構造物に応用することを目指し、さらに研究を進めていきたいです。
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