9月7日(木)、H-ⅡAロケット47号機の打ち上げが成功し、同機体に搭載されている観測衛星「XRISM」(X線分光撮像衛星:X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)が正常な軌道に投入されました。理工学部 数理・物理コースの中嶋大准教授は、XRISMに搭載されているXtend (軟X線撮像検出器)と呼ばれるCCDカメラのセンサー及び集積回路の開発に携わっています。
H-IIAロケット47号機の打ち上げ(提供:三菱重工業株式会社)
打ち上げ後の様子(中嶋先生撮影)
Xtendとは、宇宙の様々な天体からのX線放射を広い視野で検知し画像を撮影するためのカメラであり、中嶋先生はそのカメラのセンサーおよび集積回路を主に担当しています。XRISMは、3階建ての建物ほどの大きさで、質量は2.3トン。その中でもXtendに搭載されているCCDカメラのセンサーは約60㎜四方で、私達が普段の生活で使うカメラにはない大きなものです。今回初めてロケットの打ち上げに立ち会った中嶋先生は、「打ちあがった瞬間は、走馬灯のようにそれまでの研究と携わった方々のことが思い出され、感無量でした」と当日の様子を振り返ります。
中嶋先生が今回の研究に携わるきかっけとなったのは、宇宙科学研究所のX線観測衛星を使って天体観測しようという大学4年生の卒業研究。その当時、新しい観測衛星を作ろうという活動が始まっていた頃だったようで、その卒業研究から、『宇宙X線の観測をするために搭載カメラを作り、天体で起きている物理現象を知る』という、中嶋先生のライフワークとしての研究が始まりました。新しいことを知るためには、より性能のいいカメラで撮影を行い、解像度や色彩の優れたデータを得る必要がある、という想いからCCDカメラの開発に携わるようになり、今回のプロジェクトの開発を担当することへ繋がります。
H-ⅡAロケットの模型を持つ中嶋大准教授
XRISMに搭載されている観測カメラ
前回のX線天文衛星「ひとみ」で撮影したペルセウス座銀河団のX線画像。(注1)
前回のX線天文衛星「ひとみ」は予想外の事象によってごく短い活動となり、リベンジとしてそこから7年かけて中嶋先生を含む開発チームが総力をかけて制作した今回の「XRISM」。
これからの展望として、打ち上げからおよそ1か月後にXtendのスイッチを入れ、撮影された画像をもとにより良い画像を撮影できるよう微調整を行うほか、送られてきた画像からわかったことを社会に発信していくことでようやく成功と言えます。「センサーは軌道上に長期間滞在するとダメージを受けていくので、打ち上がりたての一番性能のいい時期の衛星で様々な天体を観測し、それにより得られた発見を論文にして公開することが次の目標です。そして、今の学生が自分と同じくらいの年齢になったときに、次の衛星が打ちあがっているという状況にするためにも、このXRISMを成功させる必要があります」と中嶋先生。今後はJAXA相模原キャンパスにて衛星を運用していくことが主な活動となります。
さらに、打ち上げの少し前にXtendの開発・研究に携わった中嶋研究室の学生1名が特別賞を受賞したことを踏まえ、「学生にとって、自分の携わった研究でこのような結果が残ったことはとても大きな経験となります。今後、大学院に進学し研究を深めたい、宇宙関連の仕事に就きたいという学生が出てくると教員冥利に尽きます」と語りました。中嶋先生の研究はまだまだ途中。これから始まる「XRISM」の観測活動に目が離せません。
関東学院大学は、今後も最先端の研究に触れる教員をサポートしていきます。
注1:「ひとみ」に関する論文はこちら
中嶋先生の研究内容については以下をご覧ください。
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