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理工学部 研究ガイド

宇宙の原理に迫るためにX線望遠鏡が見つめるもの

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INTERVIEW 02 宇宙の原理に迫るためにX線望遠鏡が見つめるもの
nakajima

中嶋 大 HIROSHI NAKAJIMA

理工学部 数理・物理コース 教授

京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士後期課程修了。大阪大学理学研究科助教を経て、現職。「理論電磁気学I・II」「物理学I・III」などの授業を担当。

「激動の宇宙」から解き明かす宇宙や天体の誕生と未来

「宇宙はいつだって私たちの予想を裏切ります。どれだけ予測を立てても、観測技術の進歩とともに毎回新たな発見があり、世界中の研究者が驚かされる。そしてその発見一つひとつが、宇宙を解き明かす道筋につながっているのです」
そう語るのは数理・物理コースの中嶋大教授。学術研究都市である茨城県つくば市近郊に育ち、夜な夜な頭上を眺めていた少年は、大学の研究室選びで宇宙物理学に出合いその興味が再燃。いまは観測的天文学の最前線に身を置いている。
そもそも宇宙を観測する際には、物質から出る「電磁波」を観測するのだが、その種類は可視光の他に電波、赤外線、X線、ガンマ線など幾多にわたる。中嶋教授が専門とするのはX線による観測。数百万度から数億度という高温度・高エネルギーの現象が観察対象だ。
例えば、中嶋教授が開発に携わった観測カメラで自ら観測した対象に、大質量の恒星が爆発して誕生する中性子星と太陽の数十倍以上の質量を持つ超巨星の連星がある。中性子星の強い引力に、ガスでできた超巨星が吸い込まれていく現象は、宇宙のダイナミズムを私たちに教えてくれるもの。中嶋教授はX線による観測を「激動の宇宙を観測するもの」だと表現する。

人工衛星に搭載される観測カメラ

世界的プロジェクトの一員として天文学の最前線に立つ

X線は大気に吸収されるため、観測カメラは主に人工衛星に搭載され、大気外から観測することになる。その構造はX線を集める“レンズ”とそれを感知して像をつくる“検出器”に分かれており、中嶋教授は長く検出器とそこで使用する集積回路の開発に携わってきた。
「真空で温度変化も激しく、宇宙放射線も飛び交うという特殊環境で間違いなく稼働すること。検出器の開発ではその機能性はもとより、宇宙環境を想定した実験によって耐性を確立すること、そして宇宙でどう機能するかを事前に把握しておくことが重要になります」
2023年9月、JAXA、NASA、欧州宇宙機関は共同で新たな観測衛星を打ち上げることに成功。中嶋教授はJAXAとの協力のもと、そこに搭載されるCCDカメラの集積回路の開発責任者として設計と試験に携わっていた。「自ら製作したカメラで、自ら観測をして、自ら新しい発見をする」ことが長年のテーマだと語る中嶋教授。その新たな発見が世界中の研究者たちを驚かせる日も、そう遠くないだろう。