研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド
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Research Expectations
理工学部 研究ガイド
小松 督 TADASHI KOMATSU
理工学部 先進機械コース 教授
大阪大学基礎工学研究科物理系博士前期課程修了。株式会社東芝総合研究所研究員を経て、現職。「ロボット工学」「宇宙工学」などの授業を担当。博士(工学)。
現在では社会的な注目の高いロボット分野。先進機械コースの小松督教授は、1980年代からロボット工学に携わり、その成長発展とともに研究を進めてきた一人だ。その研究のうち、20代の頃から長く取り組んできたことのひとつに宇宙ロボットの開発がある。
宇宙ステーション船外に設置されたロボットアームは、無重力下で使用することや打ち上げ時の軽量化の必要性から薄い骨組みなどを活用した「機械的に柔らかい構造」となる。その分、たわみや振動が発生しやすく、速く動かすことが難しい。小松教授はそこに対して、力センサーやたわみセンサーを新たに活用した計測技術による、次世代の制御システムの開発を目指している。また新たな宇宙ロボットとして、惑星上の有人基地等で使用する人型ロボットの研究も進めている。
「人と協働するならば、人間の精神面を考慮すると人型が望ましいという研究結果も出ています。ただし地球より小さい重力下では、小さい力で駆動しなければ、ふわふわとロボットも浮き上がってしまいます。力学的な観点から微重力下での歩行ロボットの制御について調査を進めています」
さらに小松教授が取り組んでいるテーマとして挙げられるのが、社会におけるロボットの活用とそのシステム化。具体的にはサービス産業における協働ロボットの活用を想定し、近年では人間とロボットに共通して使用できる能力評価の手法を模索している。
「産業ロボット等を除くと、ロボットの社会進出はなかなか進んでいないのが現実。そのためには、ロボットと人の役割分担を設計し、人間と同様にマネジメントする必要があります。そして今、ロボットを含む社会システムをつくるために手掛けているのが、ロボットを人間と同じスケールで計るための作業能力評価方法の開発です」
長らくロボット工学の研究者は鉄腕アトムを目標に「なんでもできるロボット」の開発を目指してきたが、一方で「今あるロボットに社会で何をさせるか」を並行して考え、その社会の在り方を考えていく段階にきていると小松教授は語る。
「人々がロボットをうまく活用するためには、ただ高機能のロボットをつくるだけでは足りません。ロボットと人が協働する社会システムを構築することも、これからのロボット研究者に課せられた使命のひとつであるはずです」