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「バイオメカニクス」の先端研究でアスリートの技術向上をアシスト

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INTERVIEW 04 「バイオメカニクス」の先端研究でアスリートの技術向上をアシスト
takahashi

高橋 健太郎 KENTARO TAKAHASHI

理工学部 健康科学・テクノロジーコース 教授

横浜国立大学大学院博士前期課程、日本体育大学大学院博士後期課程修了。群馬工業高等専門学校准教授を経て、現職に。日本オリンピック委員会選手強化委員も務めている。

脳波と筋電位の連関を探り、効果的な指導に役立てる

 スポーツの技術を効果的に向上させるにはどうすればいいのか?これは、多くのアスリートや指導者が取り組んできた永遠の命題だ。「バイオメカニクス」を専門とする高橋健太郎教授は、その問いに新たなアプローチで挑んでいる。キーワードは、「生体信号」。スポーツの動きを、脳波や筋電位、脈波といった電気信号から解析するのが高橋教授の研究だ。
「人間の動作は脳から筋肉へ神経を伝達する電気信号によって制御されています。そのメカニズムを脳波や筋電位といった電気信号から解析することで、効果的なコーチングや指導法の確立に役立てようというのがこの研究です。例えば、優れたアスリートと一般的な人との違いはどこにあるのか。それを電気信号に基づいた解析によって明らかにできれば、具体的かつ客観的なアドバイスができるようになるはずです」
 高橋教授が取り組んでいる日本剣道形の動作解析のアプローチは、世界でも唯一の手法だという。「まずは人間の運動プロセスの中で、筋肉に指令を出す脳波と、末端で筋肉を動かす筋電位のデータを計測する。そして、そのふたつのデータがどれくらい同調しているのかを示す『コヒーレンス値』を算出します。脳がイメージしている動きと実際の動きが近ければ近いほど、アスリートとしては優秀ですよね。つまり、実際の動作だけではなく『選手がどんなイメージに基づいて動いているのか』というところまで測ることができるのです」

特殊なヘッドギアを装着し、脳波と動作の連動を測定する。

科学に基づいた客観的なデータでアスリートの動作を分析

 高橋教授のこうした研究は、剣道のみならず様々なスポーツで応用できるという。
「スポーツの技術的な評価は、指導者や審査員の経験則によって判断基準が設けられる傾向がありました。そこに『生体信号』という科学に基づいたデータを活用することで、より客観的に技術力を評価できるようになります。選手が動作だけを覚えているのか、それとも頭で考えて合理的に動いているのかも、コヒーレンス値のデータでわかるようになるのです」
 人間の動作を科学的に分析し、アスリートの技術向上に貢献する――。東京オリンピックを経て、高橋教授の研究にはますます注目が集まっている。これまでブラックボックスの中にあった脳と筋肉の連動の仕組みが解明できれば、世界を驚かせるようなアスリートが次々と生まれるかもしれない。