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理工学部 研究ガイド

ロボットの頭脳を拡張する技術で、未来の豊かなAI社会を実現する

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INTERVIEW 07 ロボットの頭脳を拡張する技術で、未来の豊かなAI社会を実現する
motoki

元木 誠 MAKOTO MOTOKI

理工学部 情報ネット・メディアコース 教授

千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(工学)。2006年に関東学院大学着任。専門は人工知能、知能ロボティクス、ソフトコンピューティング、ニューラルネットワーク。

生物の脳の神経回路の仕組みをロボットの制御に応用

 ロボットの頭脳を拡張し、社会インフラの発展に貢献する――。それが、「ニューラルネットワーク」の機械学習手法であるディープラーニングの研究に取り組む元木誠教授のテーマだ。
「ニューラルネットワークとは、生物の神経細胞(ニューロン)を数理モデル化したもの。人間の脳の中にはたくさんのネットワークがつながっていて、ニューロン間の信号の伝達によって情報処理を行っています。そうした生物の脳の神経回路の仕組みを、ロボットの制御に応用していく研究です」
 これは、ロボットの頭脳にあたるソフトウェア開発の分野。さらに、元木教授の研究室では開発したソフトウェアをロボットに実装し、実際にトライアンドエラーを繰り返しながらより高度な動きを学習するためのデータを収集している。
「例えば、前を歩く人との距離をセンサーで検知してロボットに追走させる実験では、過去のセンサーで取得した位置情報や車輪の回転速度などのビッグデータをロボットに学習させることで、次のテストではよりスムーズな運動が可能になります。つまり、私たち人間の学習プロセスと同じことをロボットに応用する試みなのです」
 元木教授のこうした研究は、防犯カメラの画像処理などにも役立つのだという。
「防犯カメラの映像は不鮮明なものが多く、個人を特定するのが困難なケースもあります。そこで、人間の顔の大量のデータを機械に学習させることで、低画質の画像から実際の顔を予測して再現する『超解像技術』の実現を目指しています」

低解像度の画像から人物の顔を予測するAI技術

群集の移動方向の予測技術で災害時の避難誘導を自動化

 また、元木教授のニューラルネットワークの研究にはもうひとつ重要な応用事例がある。それは「群集の移動方向の推定」だ。
「人間の眼では、群衆の複雑な動きを認識して、行動を予測することはできません。しかし、カメラで複数の対象を検出し、機械学習によって群集の動きを解析すれば、移動方向を予測することができるのです。こうした技術を持ったAIをドローンに搭載すれば災害時の避難誘導を自動化できるかもしれません」
 ディープラーニングのような機械学習技術は、今後の社会インフラのあり方を大きく変えていく可能性を秘めている。「AIの技術で未来の生活を豊かにする」という元木教授の理念が実現する日も近いのかもしれない。