研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2023
研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2023
宮永宜典 MIYANAGA NORIFUMI
理工学部 先進機械コース 教授
早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。Louisiana State University, VisitingScholar、早稲田大学理工学術院助教を経て、現職。「トライボロジー」などの授業を担当。
機械工学には、摩擦、摩耗、潤滑を科学する「トライボロジー」と呼ばれる学問分野がある。この3本柱を中心に、周辺にも対象が広がる学際的な研究領域だ。
「例えば、自動車のタイヤやブレーキパッドは、走行するうちにすり減って、いずれ交換になりますよね?このように機械には、動いている部分と止まっている部分があり、接触面では必ず摩擦が発生します。ここでの振動やエネルギーロスを小さくして、永続的に調子のいい状態にする方法を考えたりするのが、トライボロジーの役割だと考えていいでしょう」
そう語るのは、先進機械コースの宮永宜典教授だ。トライボロジーの中でも専門は「潤滑」。研究室では、機械の摺動面、つまり「動いている部分」に流体を介在させたときの現象を観察する実験や解析などに取り組んでいる。
「オイルメーカーと共同で、車軸のボールベアリングに使用する低摩擦グリースの研究・開発などを行っています。機械工学に興味があるなら、ラジコンカーやローラースケートの車輪のベアリングにグリースを差した経験がある人も多いでしょう。実は、ベアリングにグリースを差した際、どのように流れていくのか詳しくわかっていないことも多いのです。そこで、私の研究室では、特殊な実験装置を使って、摩擦面におけるグリースの流動状態を可視化する手法の開発に取り組んでいます」
目的はもちろん摩擦低減や振動抑制を実現するグリースを開発すること。そこで、摩擦面における潤滑剤の流動状態を評価する新たな方法を考案し、入手したデータから理論体系化していく̶それがトライボロジー研究における大学の役割だという。
「トライボロジーの研究対象は、自動車はもちろん、人工心臓から宇宙ロケットのエンジンまで実に多彩です。今後、主流になると言われるEV(電気自動車)の設計においてもトライボロジーの知見は欠かせません。エネルギーロスや資源ロスの低減を目指すトライボロジーの研究は、SDGsの達成にも貢献できるでしょう。トライボロジーの研究領域、つまり動いているものと止まっているものが接する界面には、まだまだ未解明の問題がたくさんあります。これらの謎を解明し、理論的に取り扱えるように学問体系化するのが私の使命だと考えています」