研究報
Research Expectations

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理工学部 研究ガイド2023

AI・ビッグデータを活用して都市防災を進化させる新たな手法を模索する

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INTERVIEW 01 AI・ビッグデータを活用して都市防災を進化させる新たな手法を模索する
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鳥澤 一晃 TORISAWA KAZUAKI

土木・都市防災コース 教授

横浜国立大学大学院工学研究科人工環境システム学専攻修了後、鹿島建設株式会社技術研究所で20年間、地震工学や災害リスクの研究開発に従事。2018年に関東学院大学着任。博士(工学)。「都市防災学」、「計画数理」、「土木情報処理演習」などの授業を担当。

ディープラーニングを用いた画像認識技術などを活用

AI(人工知能)やビッグデータを活用したビジネスモデルが注目されている。その応用先は多岐に渡り、いまや建設や防災の分野でも活用が期待されている。「最先端の情報解析技術・ツールを用いた都市の防災・減災に関する研究に取り組んでいます。なかでも最近、力を入れているのが、AI・ビッグデータを活用した地震災害の分析・予測です。話題のディープラーニング(深層学習)による画像認識技術などを駆使し、新たな都市防災の手法を模索しています」

そう語るのは、土木・都市防災コースの鳥澤一晃教授だ。ディープラーニングとは、AIにおける機械学習のひとつ。大量のデータからその特徴をコンピュータが自動で学習し、課題を解決する仕組みと考えればいいだろう。

鳥澤教授が研究対象に選んだのは、2016年に発生した熊本地震の避難所だ。余震が続くなか、避難所に大量の避難者が集まると同時に、その周辺で車中泊をしながら避難生活を送る人々も発生した。車内はプライバシーを確保できるメリットがある一方、その狭い空間での生活にはエコノミークラス症候群を発症するリスクもある。ここに新たな防災の課題を見つけた。

最先端技術を用いた手法を自治体の防災計画に役立てたい

AIの画像認識技術を駆使し、区画単位で車両台数を推定

「今までの避難所対策は、避難所に避難する人を中心に考えられてきました。今後は周辺で車中泊をする人々も想定して、食料備蓄や医療サポート、駐車スペースなどの計画を立てる必要があります。しかし、現状では、車中泊を含めた避難者数のデータがなく、実態がほとんど把握されていません。そこで、携帯電話の位置情報をエリア内で集計した人口統計や被災地の航空写真からAIで計測した車両台数を活用し、避難者数を分析・予測する研究を行っています」

携帯電話の位置情報データでは、一定範囲のエリアに滞在した人の数を1時間単位で把握できる。ここから地震前後で、避難所周辺にどれだけの人口変化があったかがわかる。まさにビッグデータの活用だ。また、AIによる航空写真の画像認識では、あらかじめディープラーニングで大量の自動車画像を学習させた後、避難所周辺に何台の自動車があったかを航空写真から自動で計測するシステムを構築。これらの分析により、車中泊を含めた避難者の総数を推定できるようになる。「データの活用によって、正確で高度な災害予測が可能になります。こうした研究成果を実装し、自治体の防災計画などに役立てるのが目標です。また、AIやビッグデータを使いこなすスキルを身につけた学生たちを建設・防災分野へ送り出すのが私の使命だと考えています」