研究報
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理工学部 研究ガイド2023

ウルトラファインバブルを活用した環境配慮型のイノベーションに挑む!

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INTERVIEW 01 ウルトラファインバブルを活用した環境配慮型のイノベーションに挑む!
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田代雄彦 TASHIRO KATSUHIKO

理工学部 表面工学コース 教授

関東学院大学大学院工学研究科工業化学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。メルテックス(株)、関東化成工業(株)、(株)ブラザーの研究員を経て、2015年より着任。厚労省ものづくりマイスター・特級めっき技能士。

ウルトラファインバブルをめっき加工技術に応用する

「ウルトラファインバブル」という名前をテレビCM等で見たことがある人も多いだろう。手に塗ったマジックが瞬時に消えるシャワーヘッドでお馴染みのものだ。ウルトラファインバブルとは、直径1μm(マイクロメートル)未満の泡のことを指す。1μmは、1/1000mmのこと。かなり微細な泡であることがわかるだろう。表面工学コースの田代雄彦教
授は、このウルトラファインバブルを工業的に利用する研究に取り組んでいる。

「私の研究テーマは、環境配慮型めっき技術の開発です。なかでもプラスチックへのめっき加工に欠かせない工程であるエッチング(表面粗化)処理にウルトラファインバブルを利用する技術開発に取り組んでいます。エッチングとは、ツルツルのガラスを磨りガラスにするような処理で、これによってめっき膜の密着性が高まります」
自動車のバンパーなどに利用されるプラスチックへのめっき技術は、関東学院大学が世界で初めて成功したもの。この流れを汲み、プラスチックめっきの前処理にあたるエッチンの手法にウルトラファインバブルを用いたところに田代教授の研究の独自性がある。

オリジナルの実験装置でポリイミドのエッチングに成功

ウルトラファインバブルと低濃度オゾンを融合させるオリジナルの実験装置

「現状で使用されているエッチング処理では、有害物質の六価クロムを使用するため廃液処理にコストがかかります。もちろん環境負荷も高い。そこで、環境にやさしい処理として、ウルトラファインバブルとオゾンを融合した新規手法を開発しました。材料は水と低濃度オゾンだけなので、環境負荷はほぼゼロで、現行のエッチング処理と同等のめっき膜の密着性が得られます」
実験では、オリジナルの装置を用いて、ウルトラファインバブルと低濃度オゾンを融合させた水槽にプラスチックの一種であるポリイミドフィルムを浸し、エッチングの効果を検証。さらにABS樹脂など幅広いプラスチック材料への応用にも挑戦している。さらに、多様な分析装置を用いて、各種めっき技術の高速化・高安定化を実現するメカニズム解明にも取り組んでいる。
「ウルトラファインバブルは、すでに多くの分野で産業利用されています。工場の排水処理、トイレの洗浄、池や川の水質浄化などがその一例です。ウルトラファインバブルは、未だわからない部分が多く、無限の可能生を秘めています。今後もウルトラファインバブルの技術を応用した環境配慮型イノベーションに挑戦していくつもりです」