研究報
Research Expectations

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理工学部 研究ガイド2025

発電&蓄電可能なキャパシタ材料でエネルギーの未来を変える!

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友野 和哲 TOMONO Kazuaki

応用化学コース 准教授

東京理科大学大学院博士課程修了。博士(理学)。東京理科大学理学部第一部化学科助教、山口大学工学部応用化学科助教、宇部工業高等専門学校物質工学科准教授を経て、現職。「物理化学」「電気化学」などの授業を担当

キャパシタ材料の実用化によって
電子機器の充電操作が不要に!?

化石燃料からのエネルギー転換が叫ばれる昨今、CO2排出を伴わない太陽光発電は、次世代エネルギーの最有力候補として注目されている。しかし、日中に発電量のピークを迎える太陽光発電は、電気エネルギーを24時間効率よく利用するために併用する蓄電デバイスが不可欠となる。応用化学コースの友野和哲准教授が開発しているのは蓄電デバイスとして注目されるキャパシタ材料だ。キャパシタとは、電気エネルギーを蓄えたり放出したりできる電子部品の一種だ。
「私は、機能性物質を層間にもつマンガン酸化物(MnO2)によるキャパシタ材料の実用化を目指しています。層状マンガン酸化物の層間にさまざまな金属錯体を挟み、機能性薄膜を創ることで、これまでにないキャパシタ材料が作製でき、従来の蓄電デバイスよりもスピーディーに蓄電や放電が可能になります。ハンバーガーもバンズの間に何を挟むかで、味やカロリーが変わりますよね。これと同様に、層状マンガン酸化物に金属錯体を挿入し、薄膜を創ることで理想とする電気化学的特性を付与することができるのです」
金属錯体とは、金属イオンを中心として有機分子が結合した化合物のこと。かつては、層状マンガン酸化物に金属錯体を挿入してもすぐに脱離してしまい、特性を持たせることは難しいと考えられてきた。しかし、友野准教授は、2017年に層間物質の脱離を制御する仕組みを世界で初めて発見し、キャパシタ材料の新たな地平を切り拓いた。
「金属錯体には可視光を吸収する特性があり、これを電気エネルギーに変換することも可能です。つまり、1つの材料で発電と蓄電が同時にできるのです。太陽光発電と蓄電が一体化すれば、スマートフォンの充電操作は不要となり、本体はさらに薄くなるでしょう。小さな電力で動く機器はすべて、このような発電と充電が一体型になった材料に置き換わる可能性があります」

色がある金属錯体は、
さまざまな光エネルギーを吸収できる

エネルギー問題に影響されない
世界をつくりたい

友野准教授にとって、層状マンガン酸化物を使った機能性薄膜研究の面白さは、何を挟むかというアイデアだけで、誰でも世界を驚かすような機能性材料を開発できる可能性があること。この研究室から充電操作不要の薄くて軽い電池が生まれる可能性もあるのだ。
「研究者としての夢は、エネルギー問題に影響されない世界をつくることです。発電や蓄電を効率よく行える新たなエネルギーデバイスを応用化学の分野からつくり出したいと思っています」