研究報
Research Expectations

理工学部 研究ガイド2025
研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2025
平野 晃昭 HIRANO Teruaki
情報ネット・メディアコース 講師
工学院大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2013年より現職。専門は3DCGおよび画像処理を用いた仮想現実(VR)、顔画像に基づく表情認識。「メディア工学概論・演習」「ソフトウェア設計」などの授業を担当。
「VR(Virtual Reality/仮想現実)」や「メタバース」という言葉もずいぶん一般的になってきた。最近はVRゴーグルを使って、ゲームや動画を楽しむ人も増えている。情報ネット・メディアコースの平野晃昭講師は、このVR技術を「防災学習」に役立てる研究を行っている。
「横浜市との共同研究として、3DCGを用いて、土砂災害を体験できるVRシステムを開発しました。ユーザーは、VRゴーグルを装着して、自宅に土砂が迫る状況を仮想体験し、避難の判断とタイミングを学習することができます」
研究の背景には、全国各地で頻発している土砂災害がある。しかし、土砂災害は他の災害と比較して、当事者の危機意識が低い傾向が指摘されていた。そこで平野講師は、横浜市総務局地域防災課の監修協力のもと、防災学習を目的としたVRシステムの開発に至った。
システム開発の基盤には、3 Dゲーム制作プラットフォーム「Unity」を採用した。これで室内の3D空間のベースを作製し、次第に雨足が強くなる様子や室内に土砂が流れ込む場面を追加していった。さらに、没入感を高めるため、状況を説明するようなテロップ表示はせず、VR上のスマホ画面に注意を促す母親からのLINEメッセージを表示し、事態が深刻化していく流れを表現。同じくVR上に設置したテレビのニュース報道では、土砂災害の警戒レベルをアラート表示した。ユーザーはVR上で逃げ遅れ、被害をリアルに体験することで、危機意識の向上を図れるように設計されている。
「VR上で雨が降り出すタイミング、LINEの通知が来るタイミングなどをプログラミングで細かく制御し、臨場感を出しています。さらに、コントローラーの操作を不要とし、VRゴーグルを装着すれば、子供から高齢者まで誰でも体験できるように工夫しました」
VRゴーグルは、
米Meta社のMeta Quest 2を使用
平野講師は、もともと「画像処理」が専門で、大学院では顔画像に基づく「表情認識」の応用研究に取り組んでいた。その後、社会の技術革新に合わせて、VRやAR(Augmented Reality/拡張現実)にも研究の幅を広げていった。
「今後は表情認識・VR・ARの技術を組み合わせて、医療や防災、観光など幅広い分野で役立つサービスを開発するのが目標です。変化の激しい研究分野なので、常に知識をアップデートしながら、社会実装のチャンスを模索しています」