研究報
Research Expectations

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理工学部 研究ガイド2025

独自の「3DAモデル」を開発して、機械設計者の業務負担を軽減する!

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鈴木 伸哉 SUZUKI Shinya

先進機械コース 准教授

富山県立大学大学院博士課程修了。博士(工学)。オリンパス光学工業株式会社(現オリンパス株式会社)にてカメラの鏡筒開発に従事。2023年より現職。「サイズ公差・幾何公差」「機械設計製図」などの授業を担当。

部品の誤差を許容する「公差」が研究テーマ

機械工学の分野に、「機械設計」という研究テーマがある。例えば、私たちが日々使っているスマートフォンやノートパソコンの部品が寸分のズレもなく、ぴったり組み合わさっているのは、機械設計の技術によって成り立っている。先進機械コースの鈴木伸哉准教授は、機械設計者が用いる図面を3D図面に一元化し、現場の業務負担を軽減する研究に取り組んでいる。キーワードは「公差」だ。
「公差とは誤差の許容範囲のことです。例えば、ある機械部品を『寸法100mm』と設計しても製造工程では必ず100.01mmや99.99mmのものができてしまいます。ただ、ある程度の誤差を許容しないと製造が困難になります。そこで、各部品について、『ここまでの誤差ならOK』という範囲を計算します。これが公差と呼ばれるもので、機械設計の図面には、必ず公差の指示が記されます」
公差には大きく分けて「サイズ公差」と「幾何公差」がある。前者は部品の大きさの誤差の許容範囲を表すもの、後者は形状や位置関係によって許容される誤差を表しており、これにより曖昧さを除いた図面が描ける。日本では、サイズ公差が広く活用される一方で、国際標準規格に則った幾何公差は、図面記号が多く、難解なため、製造業で浸透していないのが現状だという。

自動車工業会に参画して
製作している3DAのサンプル

独自の3DAモデルで
製造業界のDXを推進する

「機械設計における設計図は、3次元画像を用いる3DCADで描かれています。しかし、現場では見やすさなどの理由から今もサイズ公差のみが記された2次元図面を使用するのが一般的です。そのため部品の検査工程では、紙の図面のデータをパソコンに手入力するなど設計者の手間が増えています。そこで私は幾何公差のデータを3D
CAD上で表示する見やすい3DAモデルを開発することで、業務効率化を目指しています」
3DAとは、3Dアノテーションの略。アノテーションとは「注釈」のことで、3D設計図上の注釈に記される幾何公差など製造上必要な情報を指す。現在、鈴木准教授は一般社団法人日本自動車工業会と共同で、自動車の部品設計における3DAモデルの実用化に向けた研究を進めている。
「欧米諸国のように日本国内でも多くの企業で導入が進むよう、2次元図面に代わる読みやすい3DAモデルを開発したいと思います」