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理工学部 研究ガイド2022

ゲノム編集で植物の生育を促進 世界の食糧危機を解決する!

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INTERVIEW 02 ゲノム編集で植物の生育を促進 世界の食糧危機を解決する!
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近藤 陽一 YOUICHI KONDO

理工学部 生命科学コース 教授

横浜市立大学大学院総合理学研究科自然システム科学専攻(博士後期課程)修了。博士(理学)。理化学研究所特別研究員などを経て、現職。「分子生命科学」「植物分子細胞生物学」などの授業を担当。

新しいアプローチで第2の「緑の革命」を起こす

2050年までに世界人口は100億人に達するという。そのため、人類が生きていくための食糧の不足が懸念されている。この危機を脱する解決策のひとつが食糧増産の技術開発だ。
「1940~60年代にかけて、品種改良や化学肥料の開発によって、穀物の収量を飛躍的に伸ばす『緑の革命』が起きました。私は新しいアプローチで第2の緑の革命を起こしたいと考えています」
そう語るのは、生命科学コースの近藤陽一教授だ。専門は「植物分子生物学」。遺伝子組み換えやゲノム編集の手法を用いて、作物の単位面積あたりの収穫量を増やすための基礎研究を行っている。
「自然界の植物は常にストレスに晒されています。暑さ、寒さに加え、強い紫外線を浴び続けることもある。それでもじっと動かず耐えるしかありません。そのため植物は、環境からのストレスに応答し、耐えるためのしくみを持っています。問題はこのストレスに応答するしくみが、植物の生育抑制とリンクしていることです。つまり、植物は環境ストレスに晒されると自動的に生育が抑制されるのです。そこで私は、生育を抑制せずに、ストレス耐性のみを上げる働きを誘導する遺伝子を探索しています」
陸上植物であるシロイヌナズナには、2万6000の遺伝子があり、そのうち2000個程度が遺伝子を直接制御する機能に関与していると考えられている。そこで近藤教授は、これらの遺伝子の機能を抑制させる手法で、陸上植物全般に効果のある環境ストレス耐性を上げることができる遺伝子の特定を試みている。
「この成果をもとに食用植物のゲノム編集を行えば、ストレスによる生育抑制を受けずに収量を増加できる品種の開発も可能になるでしょう」

遺伝子組み換えを施した実験用のゼニゴケ。
ここに環境ストレスを与える

植物に特定の化合物を与えストレス耐性と生育促進を両立

一方で、近藤教授は、植物に特定の化合物を与えることで、前述のゲノム編集と同じように生育阻害を抑えながら、ストレス耐性を強化する方法の開発にも取り組んでいる。これは、生命科学コース内の有機化学系の研究室との共同研究で、近藤教授はこの環境に可能性を感じている。
「目標はもちろん、食糧増産に関する研究成果を社会実装することです。学部内、コース内の研究成果を共有することで、その可能性を飛躍的に伸ばすことができます。生命科学コース内のコラボレーションによって、世界の食糧問題の解決に貢献できればと思っています」